6月30日、総務省が発表した6月の完全失業率は、前月比0.2ポイント低下の3.9%となった。また、3%台となったのはリーマンショック直後の2008年10月以来、4年8か月ぶりとのこと。
この完全失業率、景気動向指数の内、「景気動向に遅れて動き、景気動向を確認できる」遅行系列のグループに属する指標である。景気動向を先取りして動く「先行指数」や、景気の現状を表す「一致指数」ではないため、先を読んで行動する、株式などの投資に関してはあまり重宝されてない。
ただしこの、完全失業率という指標、金利に対しては非常に重要です。特に住宅ローンを借りようとしている方、変動金利で借りている方は特に注視していただきたい指標です。
金利を決定するフィッシャー方程式という計算式があります。
名目金利(実効金利)=実質金利(実質成長率)+期待インフレ率(予想インフレ率)
この方程式、「期待インフレ率が上がると、名目金利も上がる」という式で、「物価を2%上げればその分、実際の金利も上がってしまいます」という事です。しかしこの方程式が成立するには条件があります。それは完全雇用の状態という事です。
つまり完全雇用の状態になるまでは、どんなに期待インフレ率が上がろうと名目金利は上がらないという事です。
完全雇用とは、現行の賃金・価格で働きたいが職がないという、非自発的失業者がいない状態です。ですから完全雇用とは完全失業率がゼロの状態という訳ではありません。働く気はあっても条件が合わなかったり、スキルが無かったりといった理由で職に就かない失業者は残るのです。
この残った失業者の割合を自然失業率、均衡失業率、構造的失業率などと言います。ですから完全失業率がこれらの失業率に近付いた時に、完全雇用となります。ちなみに平成24年度の経済財政白書によると、構造的失業率はおよそ3%とのことです。
この割合、呼び名だけでなく、計算式や計算に必要な数値のとらえ方も、推計した機関によって違います。また、割合自体が絶対値ではなく、その国の経済状況によって変動します。ちなみに平成21年度では事前失業率は3.5%となっています。ですから完全失業率のように、はっきりと、大々的には発表されません。平成25年度の経済財政白書には、自然失業率・構造的失業率の記述は見当たりませんでした。
現状としては、およそ3%の失業率で完全雇用となり、雇用不安が解消され、実際に期待インフレ率の分、金利が上がり始めるという事です。そして、完全失業率が下がったという事は、完全雇用状態に近づいたという事で、金利上昇リスクが高まったという事なのです。
変動金利で住宅ローンを組まれている方・組もうとしている方は、完全失業率の数値にご注意を。