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株式市場の”天気予報” 「騰落レシオ」と「信用評価損益率」

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株式市場の”天気予報” 「騰落レシオ」と「信用評価損益率」
 普段、何気なく見てる天気予報ですが、株式市場にも天気予報があるのをご存知ですか? それが『騰落レシオ』と『信用評価損益率』です。果たして、どのような使い方をすれば株式市場のお天気がわかるのか?
会話形式で今回も考えてみましょう。

【会話の登場人物】
お金に詳しい先生
勉強嫌いだけど“お得”に敏感な女子生徒さん


生徒さん 「先生、傘貸してください!! 傘っ!!」

先生 「どうしたんだい、そんなズブ濡れで? まさか台風が来ているというのに、傘を忘れてきたのかい?」

生徒さん 「え? 台風来てたんですか? どおりで雨風が強い筈だわ…」

先生 「あれだけテレビで注意していたというのに、見てなかったのかい?」

生徒さん 「先生、知らないんですか? 春眠暁を覚えずと言って…」

先生 「今、秋だし」

生徒さん 「…最近、先生って冷たいですよね? 外の方がなんぼかマシだわ」

先生 「まあ、傘は貸してあげるから、少し温まっていきなさい」

生徒さん 「それじゃ、遠慮なく。それにしても…ハア~。台風が来てるとは誤算だったわ」

先生 「やはり常日頃から、天気予報はしっかりと見なくちゃね」

生徒さん 「天気予報か~…。アテにならないとは言え、確かに参考にはなりますよね。投資にもそんな天気予報があればいいのに。今は買い時ですよ~みたいな。まあ、そんな上手い話…」

先生 「あるよ」

生徒さん 「そうですよね。あるわけない…って、あるんですか!?」

先生 「ああ。日本株式市場だと、それが騰落レシオと信用評価損益率だよ」

生徒さん 「なんですか、その復活の呪文のようなものは?」

先生 「それじゃ、服が乾くのを待つ間、株式市場の天気予報の話をしようか」

株式市場の”天気予報”

先生 「東京証券取引所の一部に上場している企業数ってどれくらいあるか知っているかな?」

生徒さん 「え? そうですね…2,000社くらいですか?」

先生 「なかなかいいところを突いてくるね。現在、東証一部には1,760社(10/22現在)が上場しているんだけど、その中で株価が値上がりする企業もあれば、値下がりする企業も当然あるよね?」

生徒さん 「はい。株価って、日々値段が変わりますもんね」

先生 「今日は何社上昇して、何社下落した。昨日は何社上昇して、何社下落した。そうした情報を過去25日間分集めたものが、『騰落レシオ』なんだ」

生徒さん 「どんな風にして計算されるんですか?」

先生 「過去25日間の値上がり企業数の累計を、過去25日間の値下がり企業数の累計で割ることで算出できるよ。


 騰落レシオはパーセントで表示される。この式で100%を超えているというのは、どういう状態を表しているかわかるかな?」

生徒さん 「全体的に株価が値上がりしてるのがわかります」

先生 「そうだね。じゃあ、100%を下回っていたら?」

生徒さん 「全体的に下げているわけですね」

先生 「その通り。この指標は市場全体の動き、体温といってもいいだろう、それを表しているわけだ。体温だと平熱は幾らだい?」

生徒さん 「36度くらいですね」

先生 「そうだね。じゃあ、この騰落レシオの平熱は幾らかと言えば、100%前後。じゃあ、熱が出たなと思うのは何度からだろう?」

生徒さん 「体温だったら、37度で微熱、38度以上は高熱の部類ですよね?」

先生 「それをこの騰落レシオに当て嵌めた場合、120%以上が微熱、130%以上は高熱という感じになる。熱が出れば体調が悪くなるように、この騰落レシオが上がれば市場の体調もだんだん悪くなってしまう。相場が崩れる可能性が高まるわけだ」

生徒さん 「すごい!! そんなのわかるんですね」

先生 「天気予報と同じで、絶対ではないけどね。ちなみに、この熱は出てから1~2週間後に体調(市場)が悪くなる傾向にある。だから、この指標が上がってきたら、「利益を確定させる」、新規投資は「なるべく控える」方が良いと言えるね」

生徒さん 「へ~。そうなんだ。ちなみに熱が下がった場合はどうなるんですか?」

先生 「騰落レシオが下がって、70%よりも下がればそれは『売られ過ぎ』を意味する。そうなると底値圏だし、そろそろ買いを入れてもいい頃合だと判断することができるね」

生徒さん 「凄い!! 本当に将来の相場を占う天気予報ですね」

先生 「ただ、この騰落レシオだけでは天気予報の的中率が低い。そこでその的中率を上げるために一緒に使われるのが『信用評価損益率』なんだ

「信用評価損益率」ってなに?

生徒さん 「なんですか? その信用なんちゃら率って」

先生 「評価損益率ね。じゃあ、その説明の前に証券会社からお金を借りて、投資ができることは知っているかな?」

生徒さん 「え? そんなことできるんですか?」

先生 「うん。これを信用取引と言うんだ。信用評価損益率というのは、この信用取引をしている人達が儲かっているかどうかを表す指標なんだよ」

生徒さん 「これにも平熱はあるんですか?」

先生 「なかなか鋭いね。この評価損益率、普段はマイナス圏内で推移しているのだけれど、これが0に近付けば近付くほど、体調(市場)が悪化していく。具体的にはマイナス一ケタ台前半は微熱~高熱、プラスになろうものなら40度以上の超高熱だ」

生徒さん 「うわ、マジ辛そうですね。でも、なんでマイナス推移してるんですか? それだと、信用取引をしている人達はいつも儲かっていないことになりませんか?」

先生 「そこは少しわかりにくいかも知れないね。少し想像してみよう。もし、借金して投資をしていた場合、儲かったらどうするだろう?」

生徒さん 「そうですね……私なら、借金が嫌いなんですぐ売りますね。それで、その利益で借りたお金と金利分をお返しします」

先生 「じゃあ、お金を借りて投資して仮に損してしまった場合ならどうする?」

生徒さん 「う~ん……大きな損ならさっさと売っちゃうんだろうけど、少しくらいの損ならもう少し持っててもいいかな。また、値上がりするかもしれないし」

先生 「正解だ。実は、今思ったとおりのことが現実に起こっているんだよ。つまり利益が出れば早めに決済をして利益を手にする反面、含み損が生じた場合はすぐに損切りはせずに、我慢して持ち続けてしまう傾向が投資家にはあるわけだ」

生徒さん 「それでマイナス圏で普段は推移しているんですね?」

先生 「そういうこと。ちなみにさっきの騰落レシオと違い、この信用評価損益率は直近の天気予報を表している。つまり騰落レシオが週間天気予報なら、信用評価損益率は明日の天気予報というわけだ。そして、この2つの天気予報が共に『過熱感』を示したときこそ、最も的中率が上がるんだ」

生徒さん 「そうなんですね。…でも、本当かな~??」

先生 「じゃあ、最後に具体例を挙げようか。昨年の11月から始まったアベノミクス相場が始めて大きく崩れた今年の5/23前後の2つの指標の動きだよ」

「騰落レシオ」ってどう見ればいいの?

先生 「先ずはこれが騰落レシオの動きだよ」


生徒さん 「騰落レシオは5/7以降に熱が出始めたようですね。5/10にはもの凄い事になっていますね。高熱で意識朦朧な状態じゃないですか!!」

先生 「そうだね。そして、これが信用評価損益率だよ」


生徒さん 「4/12以降はプラス台で推移だなんて…かなり熱にうなされていますね。ピークは……あ、これも5/10だ」

先生 「そう。そしてこの2つの指標が交錯した約2週間後の5/23。日経平均は年初来高値15942.60を付けてから、一気に約1500円安の14483.98の底まで下落した」

生徒さん 「すごい…当たってる!!」

先生 「まあ、必ず当たるというわけじゃないけど、参考にしてもいいんじゃないかな。ちなみに騰落レシオが70%割れ、信用評価損益率がマイナス20%台ともなれば、そこが株式市場の底打ちの目安にもなる。ただし、これも絶対じゃないから、あくまで『そろそろ買い頃かな』という程度の認識でいいだろうね」

生徒さん 「先生!! 私、明日から天気予報や朝のラッキー占い見るのを忘れても、株式市場の天気予報は毎日必ず見るようにしますね!!」

先生 「残念ながら毎日は見れないんだ。信用評価損益率は前週末の数字が毎週木曜の日経新聞に掲載されるからね。週一のチェックになるかな」

生徒さん 「そっか、残念。でも毎週の数字を追ってみるのも面白そうですね」

先生 「うん。投資をしていると感情が過熱して、つい盲目的になってしまうこともある。そんなときこそ冷静さを取り戻すべく、こうした指標を見てみるといいだろうね」

生徒さん 「なるほど。恋愛とかでも相手の良いところしか見えなくなって、失敗しちゃうことありますもんね。惚れ込むという意味では投資も同じなのかも。
 ところで、先生? 先生はこんな“水も滴るいい女”を前にしても冷静ですよね。何か冷静になれる指標とかご覧になってるんですか?」

先生 「ああ。頭が冷え過ぎて痛くなるような君のこの前のテスト結果とかね…」

(執筆者:石川 肇)

《石川 肇》
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石川 肇

「銀行・保険会社・証券会社」で培った実務経験を活かし、金融商品の多角的な分析・説明を得意としております。金融商品といえば何か難しいイメージがあるかも知れませんが、そんなに身構えることはありません。ただ押さえておくべきポイント、ルールがあるのも事実です。「金融商品はよく判らないのでつい情報を鵜呑みにしてしまう…」そんな方には、そこで一歩立ち止まり思考を広げる、そのためのお手伝いができればと考えております。また、日頃から講演活動にも積極的に取り組み、「正しいことを面白く、そしてわかりやすく伝えること」を目標に研鑽を積んでおります。 <保有資格>:CFP、1級FP技能士、証券アナリスト検定会員補、証券外務員一種 寄稿者にメッセージを送る

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