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同じカテゴリーの投資信託(ファンド)を選ぶ上で大事なこと(1)

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同じカテゴリーの投資信託(ファンド)を選ぶ上で大事なこと(1)

 最近、ある投資家の方とお話しした時に、こんなことを言われました。

 「現在、いろいろな証券会社や銀行と取引し、日本の中小型株に投資する投資信託や中国株に投資する投資信託を複数持っていますが、同じカテゴリーの中でもファンドによって成績・ランキングがまったく異なります。

 また、一方のファンドは基準価額が10,000円を超え、買った時から資産はプラスとなっているのですが、もう一方のファンドは基準価額が10,000円を下回り、買った時から損を出しています。これは運用しているファンドマネージャーの能力・資質によるものが大きいのでしょうか? このファンドは継続して保有した方がいいのでしょうか?もしよろしければ、簡単に教えていただけませんか?」

 その質問に対する答えは以下のとおりです。

 「日本の中小型株に投資するファンドといっても、さまざまです。例えば、東証マザーズ上場の中小型株に投資するのか、JASDAQ(ジャスダック証券取引所)の中小型株に投資するのか、TOPIX(東証株価指数)の中小型株に投資するのかで、まったく異なります。」

 仮に、東証マザーズ市場が活況になり、大きく上昇する一方、JASDAQやTOPIXの中小型株が大きく下落した場合、どうなるのでしょうか?

 もし、保有しているファンドが「東証マザーズの中小型株に主に投資します。もしくは、中小型株の中でも、東証マザーズ中心に投資します」と商品設計上で示されていた場合、極端に言ってしまえば、ファンドマネージャーの能力・資質が劣っていたとしても、東証マザーズ市場の株価が大きく上昇し、JASDAQやTOPIXの中小型株は下落しているわけですから、JASDAQやTOPIXの中小型株に主に投資しているファンドに対して、運用成績は大きく上回ることになります。また、基準価額の推移も相対的に良くなるでしょう。

 逆に、保有ファンドが例えば、「JASDAQの中小型株に投資します。もしくは、中小型株の中でも、JASDAQやTOPIXの中小型株中心に投資します」と商品設計上で示されていた場合、仮にファンドマネージャーの能力・資質が優れていたとしても、ほとんどの場合、東証マザーズの中小型株に主に投資しているファンドに対して、運用成績で勝つことは難しいと思われます。また、基準価額の推移も相対的に悪くなることでしょう。

 「中国株ファンド」でも状況は同じです。仮に中国株に投資するファンドを保有していたとします。同じ「中国株ファンド」というカテゴリーの中でも、例えば、主に香港上場の中国関連株に投資するのか、本土市場の上海A株、深センA株に投資するのか、本土市場の上海B株、深センB株に投資するのか、深センの新興市場である創業板に投資するのかで、運用成績は異なります。

 ちなみに、香港市場は、外国人投資家の売買比率が高く、外部環境に左右されやすい特徴があります。中国本土市場は、外国人投資家の一定の投資制限があることから、中国国内の投資家比率が高いことが特徴です。B株は外国人投資家には開かれている市場ですが、流動性が低いのが特徴です。比較的時価総額の大きい企業が多いA株に比べ、深センの創業板は、ITや医薬など中小型の時価総額の小さいベンチャー企業が多いのが特徴です。

 仮に、深センの創業板が活況となり、大きく株価が上昇する一方、香港上場の中国関連株や中国本土のA株、B株が大きく下落した場合、どうなるのでしょうか?

 もし、保有しているファンドが「深センの創業板に主に投資します。もしくは、中国株の中でも、深センの創業板中心に投資します」と商品設計上で示されていた場合、極端に言ってしまえば、ファンドマネージャーの能力・資質が劣っていたとしても、深センの創業板の株価が大きく上昇する一方、香港上場の中国関連株や中国本土のA株、B株は大きく下落しているわけですから、香港上場の中国関連株や中国本土のA株、B株に主に投資しているファンドに対して、運用成績は大きく上回ることになります。基準価額の推移も相対的に良くなります。

 逆に、保有ファンドが例えば、「中国本土のA株、B株に主に投資します。もしくは、中国株の中でも、香港上場の中国関連株や中国本土のA株、B株中心に投資します」と商品設計上で示されていた場合、仮にファンドマネージャーの能力・資質が優れていたとしても、ほとんどの場合、深センの創業板に主に投資しているファンドに対して、運用成績で勝つことは難しいのが現状です。また、基準価額の推移も相対的に悪くなることでしょう。

 つまり、同じカテゴリーの中でもファンドによって成績・ランキング、基準価額の推移が違う一つの理由として、商品上における投資対象の違いがあげられると思います。運用を担当しているファンドマネージャーは、その商品設計上で定められた投資対象の中で、個別銘柄の選別やウェイト付けに加え、業種別の比率や全体の株式組入比率の調整を通じて、少しでも成績をあげようと日々、努力を続けています。

 ファンドマネージャーの能力・資質を図る一つの方法として、同じカテゴリー(例えば、日本の中小型株ファンド)の中で、商品設計上の投資対象が同じファンド(例えば、東証マザーズに主に投資)で、個別の銘柄や業種配分、組入比率などいかに自分の裁量を駆使して上位のランキング・成績をあげているかを調べることが大事だと考えます。

 逆に、同じカテゴリーで上位の成績・ランキングであっても、商品設計上の投資対象が同じファンド内での成績・ランキングが下位になっていた場合には、その要因が一過性なものなのか、それともファンドマネージャーの能力・資質の構造的な問題なのかは注意深く見ていく必要があると考えます。

 また、逆に同じカテゴリー(例えば、中国株ファンド)の中で、ランキング・成績が下位にあったとしても、商品設計上の投資対象(例えば、中国本土の上海A株に主に投資)が同じファンド内でランキング・成績が上位であった場合は、相場が逆風の中、ファンドマネージャーが、株式の組入比率を引き下げることで現金比率を高め、基準価額の下落を抑えることができたことや、個別の銘柄や業種の選別を強化し、下落する中でも、少しでも上昇する、または下がらない銘柄・業種を選択し、投資することができたことによるものであれば、ファンドマネージャーの能力・資質は高いと評価していいのではないかと考えます。

 よって、表面的な同じカテゴリーのファンドのランキング・成績の良しあしや、表面的な基準価額の推移だけを見るのではなく、商品設計上の投資対象やその投資対象の市場・相場はどうなっているのか、また、投資対象が同じファンド内でのランキング・成績はどうなっているのか、それらをもたらした要因は一過性なものなのか、それともファンドマネージャーの裁量による構造的な能力・資質なのかを見ることが、そのファンドに投資する、もしくは継続して保有する点において、大事だと考えます。(執筆者:中村 貴司)

*上記のコメントは筆者の個人的な見解であり、筆者が所属する会社または組織の見解ではございません。また個別銘柄の推奨、商品の投資勧誘を目的としたものではありませんのでご理解賜りますようよろしくお願い申し上げます。

《中村 貴司》
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国内・外資系証券会社、損保系運用会社等を経て、現在、証券系運用会社でファンドマネージャーに従事。15年以上の金融・証券業界経験、運用会社では年金、投資信託などを通じて、アクティブ及びクオンツ手法を用いた外国株式への投資経験を持つ。また、現場の証券営業のキャリアもあり、そうした経験を活かし、現在では投資家心理も重視した運用を心掛けている。 <保有資格> 英国国立ウェールズ大学大学院MBA、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、CFP(日本FP協会認定)、FP技能士1級、国際テクニカルアナリスト連盟 検定テクニカルアナリスト®(MFTA)、英国王立勅許鑑定士(MRICS)、不動産証券化協会認定マスター、中小企業診断士 寄稿者にメッセージを送る

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