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「子どもが生まれたら、学資保険に加入!」はもう時代遅れ?

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「子どもが生まれたら、学資保険に加入!」はもう時代遅れ?

 学資保険は、教育費のための貯蓄方法として本当に有利なのか? 「学資保険は、払い込んだ保険料総額より、受け取る満期金が少なくなる、すなわち元本割れだから損だ…」といったコメントを、近年、ネット上やマネー雑誌等で見かけることが少なくない。

 すでに、当サイトでも、学資保険について指摘をされているFPの方もいらっしゃるが、保険会社とて、予定利率(加入者が支払った保険料から、販売や事業に係る経費を差し引いた純保険料が、実際に運用される際の利回り)が非常に低い現状では、元本割れもしくは、返戻率の非常に低い学資保険となることもやむを得ないということなのか…。

 筆者は、これまでに数多くのライフプランや資産運用相談を受けているが、その中でも子供の教育資金準備についての相談は、20歳代後半から40歳前後までの比較的若い現役層の相談者から多く受けている。本コラムでは、学資保険を教育費準備として活用する場合、それが本当に有利なのかを冷静に検証・分析をしてみたい

学資保険の昔と今

 そもそも学資保険(民間生保では、”こども保険”等といった商品名を使うケースもある)は、かんぽ生命(全国の約2万か所の郵便局にて取扱販売)の提供する商品が有力で、かつては圧倒的な市場シェア(およそ70%)を持っていた。しかしながら、近年は、市場シェアが30%程度まで大幅に落ちこんでいる様である。

 背景として、比較的高利回りの商品を民間生保が次々と投入していることが影響しているのだろう。分かり易くいうと、郵便局の学資保険は、払い込んだ保険料の総額を、学資として受け取る満期金が下回るという、実質的な元本割れをしているが、一方で民間生保が販売する商品の方は、満期金が保険料総額より多く、返戻率は総じて100%を上回っているのである。

 参考までに、主な民間生保の学資保険の返戻率の例をあげてみる。

第1位 フコク生命 未来のつばさ 111.4%
第2位 アフラック 夢見る子どもの学資保険 105.3%
第3位 ソニー生命 学資保険 105.0%

 いずれも、契約者である親の年齢は30歳で、被保険者である子の年齢はゼロ歳時に加入し、高校入学時もしくは大学入学時に満期金を学資として受け取ることを想定している。ちなみに、各社で満期時の設定や満期金の受け取り方・頻度は様々で、全くの同一プランではない。

 尚、学資保険は教育費準備の貯蓄商品であるとともに、保険商品であるため、保障(死亡保障)が付加されている。つまり、万一、契約者である親が死亡した場合は、その後の契約期間における保険料支払いが免除されることや、子どもが死亡した際は、一定の死亡給付金(払込済みの保険料相当額の場合が多い)が支給される。よって、運用利回りを元本保証である定期預金等と直接比べて優劣を単純に判断することはできない

 一方、かんぽ生命の学資保険は、返戻率が99%程とやや元本割れをするのだが、その理由は本来の保障機能に加えて、子どもの医療保障が特約で付加されているためだ。

 長引く低金利の時代であるが、少しでも有利な貯蓄方法を見つけたい子育て世代にとっては、元本割れは受け入れがたいことであり、子どもの医療保障は本当に必要かどうかを合わせて考えれば、おのずと、かんぽ生命の学資保険は選択肢から外れるのが自然なのかもしれない。

資金準備する上で大切なこと

 さて、ここからが筆者の強調したいポイントである。お子さんのいる家計にとって、教育費準備がライフプランの中の欠かせないライフイベントであるのならば、資金準備をする上で何が重要なことなのか…。

 「それは、子どもが生まれた時点で、入学金や授業料といった教育資金が必要な時期は通常は確定していることである。」

 教育資金が必要な時期になって、もし準備していた資金が想定より貯まっていない、あるいは運用が失敗して、資金が大きく目減りしてしまうことは許されない。不足する資金埋め合わせのため、運用期間を延長し、子どもの入学時期を1年や2年遅らすことは、現実的にはできないからだ。

 要は、教育費が必要な時期が定まっているのであれば、それまでの15年もしくは18年といった長期の準備期間があるとはいえ、運用の失敗つまり、大きな元本割れは避けなければならないということである。その点で、教育費準備は、住宅取得資金や老後資準備と性質が異なるのである。

 よって、原則として、リスクのある資金運用手段は、教育費準備としてはふさわしくないのである。無論、株式投資で、教育費を準備するという人は少ないであろうが。

「個人向け国債」がお勧め

 安全性を確保しながら、効果的に教育費を準備するにはどうしたら良いか…。現時点で、筆者が相談者へアドバイスするとしたら、個人向け国債で学資を準備することをお勧めしたい。その理由は以下の通りだ。

低金利とはいえ、銀行の定期預金金利よりも十分有利で、利回りは0.48%(変動金利型10年物で、第46回分・平成26年2月17日の発行条件)

●変動金利であるため、今後インフレが進行し実勢金利が上昇しても、適用利率は金利もそれにつれて上昇する(半年毎に金利は見直される)

●購入後1年経てば、いつでも元本にて換金できる(直近2回の利子相当分は差し引かれるが)

●額面1万円から、1万円単位で購入でき、募集・発行も毎月実施されていて、継続的な少額積立購入に適している

●当初は、期間10年で運用し、満期時に、期間3年や期間5年の固定金利型へ柔軟に預け替えすることができる

 大切な教育資金の原資を減らさないためには、単に元本確保ということだけでなく、インフレ対応ができるという点で、個人向け国債の有効性を筆者は訴えたい

 仮に、現状の変動金利型10年物の年率0.48%の利率が、18年継続した場合、単利計算で税込みであれば、返戻率は108~109%となり、民間生保の学資保険と比べ、条件で遜色はない利回り水準でもある。

 日本銀行が現在推し進めているインフレ目標2%が安定的に実現できた場合は、長期金利の水準(個人向け国債の利回りの基準金利)は、現在の0.6~0.7%より大きく上昇するはずなので、学資準備を念頭にした変動金利型の10年物個人向け国債の返戻率は、実際もっと高くなることが想定される。

 最後に申し上げておきますが、筆者は決して学資保険の商品性を全否定はしておりません。あくまで保障機能が付加されていることが、保険商品の本質であることから、返戻率の高さだけで、商品の有利・不利は断言できないということだ。

 ちなみに、かんぽ生命が、金融庁と総務省の認可を受けて、今年4月に新型の学資保険を発売する予定であることが、先日報道された。保障内容を見直して、返戻率を高める見込みで、民間生保との競争はますます激しくなるかもしれない。

 教育費準備の手段として、学資保険はこれからも、子育て世代にとって有力な選択肢であるかもしれないが、より経済・金融情勢を踏まえ、長期的な視点で、運用方法を吟味・選択する必要が高まっていることは確かであろう。(執筆者:完山 芳男)

《完山 芳男》
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完山 芳男

完山 芳男

独立系FP事務所 FPオフィスK 代表 米国公認会計士(ハワイ州)、日本FP協認定CFP(国際上級資格)、1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格) 慶応義塾大学商学部卒業。大手自動車メーカーや外資系企業等の経理財務部勤務を経て、カリフォルニア大学バークレーへ1年間留学し、ファイナンスを履修。帰国後、米系・欧州系企業において経理責任者を務める。2004年愛知県名古屋市にて、独立系FPとして事務所を開所し現在に至る。 寄稿者にメッセージを送る

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