バブル崩壊後の低迷期、リーマンショックによる更なるダメージを経て、アベノミクスが打ち出された2012年の後半より日本株は上昇の一途をたどっています。何回かの調整が入り、現在日経平均株価は15,000円前後を推移しています。
直近では消費税の増税など心理的なマイナス要因もありますが、ここ数年間政府と日銀は経済政策としてあらゆる手をつくし、景気回復のためにつとめてきています。
日本株を考えるとき、本来は個別に考えるべきですが「全体」で考えてもあてはまると思われることを以下書いていきます。
目次
日々の変動は予測不能
株価の変動は、長期的には企業が活動する国の経済成長とリンクするものと考えられますが、短期的な動きはそうではありません。
例えば企業の決算発表の際、市場の予想と大きくかけ離れた場合にたくさん買われたりあるいは売られたりして、株価は大きく変動します。また、株価は為替相場との連動が密接で、特にドル円の相場に大きく影響を受けます。
株価の動きというものは、大きな方向性を示すベクトルがあって、日々の動きというのはそれを中心に上や下に触れ動き、長期的にはその大きなベクトルの方向に収束していくといったイメージでしょうか。
人の心理が株価を左右する
たくさん買われれば上昇し、売られれば下落するのですが、売買行動を決定づける大きな要因は「人の心理」です。
個人投資家だけではなく機関投資家であっても、多かれ少なかれ心理に左右されます。(どんな冷静沈着な人間であっても心理状態が一定ということはなく、相場の空気などの外的要因だけでなく、自身の神経伝達物質の分泌状態などの影響も受けているのです。)
ちなみに、市場への参加の主体者が人間でなくロボットになったとしたら、また違う動きになっていくのでしょう。しかも人間が主体の場合よりも、理論に近く予測しやすくなるものと思われます。
みんながどう考えるか
さて、本題の日本株は今、「買い」でしょうか?
2012年後半、日経平均株価は9,000円前後でしたが、現在は15,000円付近をウロウロしています。率にして7割近くの上昇です。もともと高い水準から7割上昇したのならそれ以上の上昇は難しいと考える人が多いでしょうが、バブル崩壊前には4万円近くまで上がっていたという過去もあります。
急上昇したので目下調整が入るのは自然なことであり、時間はかかるかもしれないが、(仮に根拠はなくても)まだ一層の上昇が見込めるというのが、多くの人の考えではないでしょうか。
それが正しいか正しくないかは別として、その考えが株価を動かすわけです。テクニカル分析、ファンダメンタルズ分析などに使われるさまざまな指標から、「売られすぎ」、「買われすぎ」などを判断することができます。でもこれらの指標の妥当性を凌駕するのが「人の心理」なのです。
気持ちは連鎖する
日経平均の心理的な節目として20,000円という水準があり、年内に到達するかどうかという議論の対象になっています。また最近ではNISAの制度が始まって株式市場に少しずつでも、より多くの個人のお金がつぎ込まれることが期待されてます。
NISA導入の効果は不明ではありますが季節はこれから暖かくなるため積極的な行動を取りやすくなり、「今年度はひとつ投資でもはじめてみようかな」という気にもなるものです。
また、東京でのオリンピック開催が決定いたしました。実際に会場の建設が進み、目に見えるようになって人々の実感がわいてくると東京の人々の気持ちはさらに高まっていくことでしょう。この気持ちは周りに連鎖するものです。そしてそういったお祭り的要素を期待している人はたくさんいます。1963年の東京を含め、高度成長期の日本を知っている人は、なおさらかと思います。
経済回復を願っている人がこれほど多くいる現状において、連鎖反応的に「大衆心理に引っ張られる」形で株価が上昇する地合ではないかと思います。実際に、オリンピック開催国では開催決定から2年後までに、平均的に20%程度株式価値が上昇したというデータもあります(1990年以降のオリンピックで調査)。
最近で日本株が一番「買い」だった時期は2012年後半ということになりますが、20,000円という節目があるので「まだ間に合う」可能性は十分にあると思います。
一歩踏み出し、鳴くまで待とう
さらに、このオリンピック効果が過ぎた後でも、これまでに政府日銀が施してきたさまざまな施策がじわじわときいてくる可能性があります。相当な量のお金が世の中に供給されています。経済状態は「波」でもあるので、「下がりっぱなし」あるいは「あがり続ける」ことは相当考えにくいことです。バブルのような状態の再来は十分にありうると思います。
時期はわかりませんが、株で資産を増やしたいならマスコミが騒ぎみんなが同じ行動をとる前に動く勇気が必要です。(執筆者:日比野 岳)