住宅ローン控除の間は繰り上げ返済をしない方が良い?»マネーの達人

住宅ローン控除の間は繰り上げ返済をしない方が良い?

 平成26年4月から住宅ローン控除が拡大されました。消費税8%、10%での購入に限られますが、適用されるローン残高の上限は一般住宅で2,000万円から4,000万円、長期優良住宅・低炭素住宅で3,000万円から5,000万円へと、大幅に引き上げられました。

 それぞれ毎年ローン残高の1%を10年間、最大で400万円または500万円の控除を受けられるので、所得によっては増税前に5%で買った場合に比べて有利な場合があり、広く理解されているようです。

 また購入後は、繰上返済が総返済額の縮小、返済期間の短縮に効果があることも知られています。その一方で、購入後の繰上返済が受けられる住宅ローン控除額を小さくしてしまわないか? という疑問があります。そこで、拡大後の住宅ローン控除を適用された場合の繰上返済についてシミュレーションしてみたいと思います。


繰上返済のシミュレーション(拡大住宅ローン控除適用)


 繰上返済には期間短縮型と返済額軽減型の2種類ありますが、利息軽減効果の高い期間短縮型を使うことを前提とします。期間短縮型の繰上返済は、ローン残高が多いうちにする方が効果があります。

 つまり早ければ早い程、利息軽減効果が大きくなりますが、教育費や老後資金など将来支出を想定しない無理な返済は禁物です。無理のない程度で実行した場合の効果を比較してみます。
●家族構成と前提条件
購入時の年齢: 夫37歳、妻32歳、子ども1人(2歳)
年収: 夫500万円、妻200万円、10年間で世帯年収120万円アップ
貯蓄: 900万円
教育: 私立幼稚園、小学校から高校まで公立、大学私立文系
住宅: 物件価格4,300万円(頭金600万円、借入額3,700万円)+諸費用200万円
住宅ローン: 全期間固定金利2.25%、35年返済(ボーナス返済なし)
※現行の住宅ローン減税は平成29年12月までですが、以降も同額が続く前提とします。

●繰上返済がない場合
住宅ローン減税効果(10年間):303万円
●3年目に200万円繰上返済した場合
住宅ローン減税効果(10年間):292万円
利息軽減効果-207.2万円
●住宅ローン減税終了後の11年目に200万円繰上返済した場合
住宅ローン減税効果(10年間):303万円
利息軽減効果-134.3万円

住宅ローン控除の減税効果の減少:303万円-292万円=+11万円(税金支払の増加)
利息軽減効果-207.2万円-(-134.3万円)=-72.9万円(利息の支払減少)
差額:11万円-72.9万円=-61.9万円
 借りてから3年目という早期の実施も効いていますが、繰上返済によってローン残高が200万円減少し減税額が縮小することよりも、繰上返済による利息軽減効果の方が大きいという結果となりました。無理をしない程度で繰上返済ができるなら、ローン減税を気にせずに実行を視野に入れた方が良さそうです。

 もちろん世帯収入や働き方、2人目の子どもが産まれた場合、借入額や金利が異なる場合など、条件を変更すれば当然結果は変わりますので、この限りではありません。


繰上返済に使用した200万円を32年間運用した場合


 次に少し視点を変え、3年目に繰上返済に使用した200万円を32年間運用した場合を見てみます。繰上返済による利息軽減額は、返済原資を残りの期間運用した場合に得られる運用益と同じことだからです。つまり32年間で200万円が458.9万円(繰上返済分200万円+利息軽減分207.2万円÷0.8(税引後))を超えれば良いわけですが、計算結果は年率2.63%での運用ということになりました。

 現在の低金利でこれだけの利回りを得ようとすると、当然定期預金では難しいため相応のリスクをとることが必要になります。変動金利や固定金利期間選択型で借りた場合は元々金利上昇リスクがあるので事情が異なりますが、早い時期の繰上返済は、残りの長い期間運用できるチャンスと引き換えであるということに変わりはありません。(執筆者:平澤 朋樹)

この記事を書いた人

平澤 朋樹 平澤 朋樹»筆者の記事一覧 http://fphirasawa.com/

金融商品や保険、不動産などの販売を行わない、独立系のファイナンシャルプランナー事務所を運営。30代・40代の子育て世代に向けた住宅購入相談を中心に、購入後の生活設計や資産形成の相談も行っている。また、企業でのライフプラン、資産運用、DC(確定拠出年金)など各種セミナーや相談も行っている。
<保有資格>:ファイナンシャルプランナー(CFP®)、住宅ローンアドバイザー

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