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「保険の約款」を読んでみよう 書かれている大切な内容

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「保険の約款」を読んでみよう 書かれている大切な内容

 皆さん、加入している生命保険や損害保険の「ご契約のしおり・約款」を読んだことがありますでしょうか。

 私が外資系生保で直販営業をしていたとき、トレーナーから、「顧客に渡す約款は一冊で良いから、通して読んでおくこと。薄いものでも構わないよ」と言われたことがあります。オフィスのマネージャーからも「質問する前に約款をまず読め。それで分からないとき初めて質問しろ」と言われました。なぜならば、保険商品の約款は、ある意味「商品そのもの」であり、そこに商品の全てが記載されているというのです。

約款を読まないのは商品のマニュアルを読まないのと一緒

 しかし、この約款、私の経験上、実際に読まれているお客様に会ったことは非常に稀です。また、保険募集しているプロの募集人ですら読んでいるかというと、失礼ながら疑問に思うことがあります。

 家電商品や自動車を買った時に付いてくるマニュアルをまったく読まないということはあまりないと思います。「目に見える商品」ですら多少は読むのに、「目に見えない商品」である保険の約款をまったく読まないというのはどうも逆のような気がします。

 保険とは契約です。他のビジネス・シーンでは、いろいろな契約が交わされています。例えば、「売買契約」、「賃貸借契約」、「雇用契約」、「代理店契約」、等々。「目に見えない」点では保険とまったく一緒ですが、この契約を交わす前もしくは後にこの契約書をまったく読まないということがあるでしょうか。

 保険の約款は、その保険の「契約条項」が全て記載されている一番重要な商品説明書なりマニュアルだと考えるべきです。

保険に関するクエスチョン あなたは正解できますか?

 それでは、いきなり唐突ですが、問題を出します。YESかNOで答えてください。

1.日本で発売されているがん保険や医療保険の「がん診断給付金特約」における、がん診断確定は日本の医師または歯科医師の資格を持つ者によってなされる必要がある。

2.がん診断給付金を複数回支払うがん保険や医療保険の「がん診断給付金特約」の保険金支払条件は全社同一である。

3.死亡保険は、死亡(死亡保険金)と高度障害(高度障害保険金)の保障がセットとなっており、一社も例外はない。

4.三大疾病で入院した場合に限り、主契約の入院給付金日型や通算限度日数に制約されず、入院給付金を一回の入院や通算とも支払限度日数無制限で受け取れる、医療保険で、「三大疾病」の定義は全社同一で、それは「がん、脳血管疾患、心疾患」の三つである。

 答えは全て「NO」です。

 1は、日本の医師資格を持たなくとも、医師の資格を持つ者ならOKな保険会社も数社あります。将来的に海外長期駐在の可能性ある人や移住を夢見ている人はこちらのほうが良いかもしれませんが、その数社以外は全社、設問の通り日本の医師の資格ある人にがん診断をしてもらうことが要件となっています。このことはカタログで説明している会社はあまりなく、約款で規定しているところが殆どです。

 ちなみに海外でがん入院し手術した場合、日本に戻ってから「がん診断給付金」請求をしても、日本の国内医師規定にひっかかって、支払われない可能性もあり得ます。なぜなら、がん診断は手術で切除したがん細胞を病理検査して、がんの種類や進行度等を診断しているからです。それを日本の医師資格ある人間が診断しないといけないと約款に定められている保険会社が大半だからです。

 海外の病院でがんを取ってしまえば、帰国後、国内の医師にがん診断ができるでしょうか。現実的に難しいと思います。

 尚、特定疾病保険でも、保険会社によっては日本の医師資格を持つ者による診断を要求している商品もありますので、要注意です。

 2は、各社微妙に保険金支払条件が異なります。特に注意したいのは、2度目以降の診断給付金です。条件によってはある会社では支払れるが、別の会社では支払われないケースがあります。

 保険会社一社専属の募集人(生保レディ等)ならいいのですが、乗合代理店で複数社扱っている保険募集人は今後、質の高い比較推奨販売が法律上要求されますので(今回の改正保険業法で規定された)、この微妙な支払条件の違いをちゃんと理解して、お客様に説明しないといけないでしょう。

 3は、すべての死亡保険種類で高度障害保障が数年前に完全に無くなった会社が一社あります。この会社は業界最大手の保険会社ですが、このことはニュースにすらなっていませんでした。また、別の会社ですが、終身死亡保障付医療保険で高度障害保障が無い商品があります。カタログを見てもしっかりと注記されてないようなので、やはりこれも約款で確認しないといけない内容となります。尚、上記はあくまで例外ケースです。それ以外のどこの保険会社でも、終身、定期問わず、全ての死亡保険で、高度障害保障は普通死亡保障と主契約上セットになっています。

 4は、三大疾病の定義が各社で異なります。約款別表に対象となる三大疾病の範囲が載ってますので確認しておきましょう(ICD-10準拠)。ちなみに覚せい剤で逮捕された歌手のASKAさんですが、一時期、一過性脳虚血症の疑いで歌手活動を一時休止してましたが、この病気を「三大疾病」の対象とする会社とそうでない会社があります。脳梗塞の一歩手前の病気なんですけどね。

 以上、上記の内容は、全て約款本体で確認できる内容です。不正解な設問は是非ご自分でも調べてみましょう。もちろん保管している約款でです。

 えっ、捨てちゃった!?

 実は約款は細かい文言訂正や商品改定の度に保険会社や代理店は旧版を廃棄しています。ですので、捨てちゃったようであれば、保険会社に約款の再交付をお願いしましょう。冊子ではなく全頁コピー版が届くところが多いと思います。

 それとご注意頂きたいのは同じ商品名(またはペットネーム)であったとしたても、加入時期によって商品の中身(つまり保障内容や保険料)は異なっていることが殆どですので、例えば、ある保険会社の医療保険に加入していたとして、自分が加入した時期の商品内容と今加入する場合の商品内容は異なっている - つまり約款も異なっているということです。

 また、保険設計書、契約時に交付された約款、保険証券ですが、あとあとまで保管する上での優先順位としては、後で再発行が困難なものを優先するとしたら、保険設計書と約款ということになります。

 特に設計書は料率改定後や販売終了後は再発行がほぼ不可能になりますので、大切にとっておいてください。(執筆者:伊藤 克己)

追記)

 「読んでストレートに理解できるものではない」、「特にぴっちりと小さな文字で書かれると読まないですよ」といったご意見も頂きました。

 まず、読み方があります。契約のしおりに目次がありますので、その目次から気になる箇所をチェックして頂き、その契約のしおりに書いてある内容を最初に読んでください。そうすると、詳細は約款の何ページを見てくださいと指定してきますので、約款(最近は契約のしおりのあとに合本されている)の指定されたページを開いて読んでください。次に具体的には別表を見てくださいと指定してくる場合あります。別表は巻末にまとめられているケースが多いので、そこまでチェックできればOKだと思います。このように、目次からたどり、辞書引きのように読むと良いと思います。

 また、約款の文章は誰が読んでも誤解がないように書かれているので、会社の法務部や弁護士がつくるような「契約書」を読むのに慣れている人は、逆に分かり易い書き方だと思います。

 それと、これは私の職業的感触なのですが、実際、プロの募集人でも読んでいる人は、昨今は少数だと思います。CD-ROM化されてからは尚更です。というのも、同業者でも約款に書いてあることを知らず、私のほうへ聞いてくる方が今だに数多くいるので、販売するほうも読まない、買ったほうも読まないでは、いずれ保険金請求の際にトラブルが起きるのも当たり前だろうなと思ってます。ということで、今回は敢えてこんな記事を書いてみた次第です。

 それと昔は約款というと、薄っぺらな小さい紙面にびっしり細かい字で書かれた冊子というのが、約款のイメージでしたが、昨今はそういう不満を解消するために、紙約款は大型本(A4サイズ等)で大きな文字で書かれるようになってきました。

 但し、生保の場合、現在、紙約款⇒CD-ROM約款へ移行しており、現状は契約者がどちらかを選べるようにしているところが大半です。この場合、私は紙約款をお勧めします。CD-ROM約款は、文字検索により、必要な情報への検索力は上がりましたが、パソコンの対応環境(例えばOSやブラウザ等)に条件があり、長期的観点から使用できるのかというと、個人的には疑問に思えます。

 保険に関して、「罠」だの「騙される」だの書かれている記事や書籍を見かけますが、これも保険約款をほとんど読まない当事者間(募集人と契約者間)で発生している問題ではないかと思います。約款内容を理解している募集人は契約者が誤解し易い箇所や重要事項をきちんと加入前に説明できる訳であり、約款を読む習慣が多少でもある契約者は募集人に対して加入前に気になる点をいろいろ質問できる訳ですからね。そういう習慣があれば、自分に相応しくない保険に加入することもまずないでしょうし、結果騙されるなんてこともない訳でしょうからね。

《伊藤 克己》
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伊藤 克己

伊藤 克己

ゆうゆうFP事務所 代表FP(現在閉鎖) 電機・半導体メーカー退社後、外資系生保と乗合代理店で実務を学び、独立系FP事務所を開業。リスク・ファイナンシングを現場実践している「実践派FP」として顧客利益優先に活動。 寄稿者にメッセージを送る

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