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「教育資金一括贈与制度」の落とし穴と意外に使える学資保険代替案

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「教育資金一括贈与制度」の落とし穴と意外に使える学資保険代替案

 平成27年1月から開始される相続税改正を受けて、今、世間では相続対策の記事や話題で相続問題花盛りの様相です。そうした中でも、時限的ではあるが、被相続人が孫に教育資金を一括で1500万円まで贈与できる! 「教育資金一括贈与制度」の人気がすこぶる高い。

 確かに、大きな相続財産をお持ちである家庭にとって、生前贈与策として贈与税の非課税枠110万円までを年々計画的に贈与するという方法を選択するよりも、受付期間が時限的ではあるが、一括で1500万円までの大きな資金を贈与できることで、課税対象となる相続財産を一気に縮小できることに大きな魅力を感じているようだ。

 しかしながら、一見、効率的に見えるこの制度にも契約前にキチンと確認し合たうえで手続きをしないと、大きな痛手に会う可能性も介在しているということも理解しておきたい。では、「教育資金の一括贈与」制度を活用するに当たっての注意点を挙げてみよう。

「教育資金一括贈与制度」活用、5つの注意点

1. 一度贈与された資金は贈与者に戻すことができない

 金融機関等で教育資金口座を開設し、教育資金口座にいったん入金してしまうと、贈与者は教育資金口座からお金を取り戻すことはできません。さらに、非課税措置は受贈者が30歳までに使い切った分だけに適用され、残金があればその年の贈与とされます

2. 受贈者である孫などの了解なしに贈与すると非課税措置は利用できない

 贈与契約は贈与者と受贈者との間で結ぶ諾成契約であり、金融機関等は利用者に対し、教育資金口座の開設に当たり、書面による贈与契約の提出を求めていま す。したがって、孫などの了解なしに勝手に祖父母などが教育資金口座を開設し非課税措置を受けることはできません。

3. 教育資金口座は1金融機関1店舗のみ

 教育資金口座を開設できるのは、一つの金融機関の一つの店舗(支店、営業店など)のみです。いったん教育資金口座を開設すると、他の金融機関や同一金融 機関でも他の店舗では開設できません。いったん教育資金口座を解約して、別の金融機関や他の店舗で新たに開設することもできません。

4. 教育資金口座の資金使途は教育費のみ

 いったん教育資金口座に預けられた金額は、受贈者が教育資金以外の使途を含めて自由に使用することはできず、教育資金のみの支払いに限定されます。教育 資金以外の使用を目的とする贈与を行いたい場合には、暦年課税の非課税枠(110万円)の利用の検討をアドバイスすることが必要です。

5. 一括贈与が非課税とならないケースに注意

 教育資金の一括贈与に係る非課税措置は、受贈者が30歳に達したとき、受贈者が死亡したとき、教育資金口座の残高がゼロになりかつ口座に係る契約を終了させる合意があったときの3つのケースで非課税措置が終了します。

 教育資金口座に残高がある場合は、その金額が贈与税の課税価格に算入されます。その金額 が贈与税の基礎控除額(110万円)を超える場合は、贈与税の申告期限までに申告する必要があります。

意外に使える学資保険代替案

 そこで、筆者が注目したいのは「制度活用に当たっての注意点」での注意項目4の説明文にもあるように、「教育 資金以外の使用を目的とする贈与を行いたい場合には、暦年課税の非課税枠(110万円)の利用の検討をアドバイスすることが必要です」との表現があることから、同じ教育資金目的である生命保険の学資保険を活用する方法はないのだろうか? と思いめぐらせていた。

 そうしたところ、被相続人である祖父母から受贈与者となる子と、被保険者になる孫との年齢による条件差異はあるものの、基本的には年間110万円程度までの年払い保険料をして生前贈与を実施すれば、孫が0歳で、払い込期間が17年と想定した場合、110万×17年)=1870万までの生前贈与が可能となることに気付いた。(贈与契約書と申告は必要ですが)

 当然、目的は教育資金の準備や活用の為という面では教育資金一括贈与制度と比しても大きな遜色はない。しかも、戻り率が高い学資であれば108%~110%程度の戻り率を誇り、中途解約や貸付制度利用等をせず満期まで継続できれば払込保険料よりも多い額を得ることができるし、契約者:親の保障も付いている。

 そして、途中で払い出される祝い金に関しては、入学時前準備費用として払い出される名目ではあるものの、教育資金一括贈与制度とは異なり、使用目的の厳守等は無い為、比較的自由に祝い金を使うことができる。(教育費以外のものの購入や生活費への補充など…)

 つまり、教育資金一括贈与制度よりも、生前贈与での学資保険活用の方が、制度上の制約等(1000万までが学校内費用で、500万が学校外費用、払出しの都度信託銀行等への申請や報告の義務付け、対象外だと払出しなし等々)を受けないので、利便性がかなり高いともいえるのである。

 更に、その他の効果としても祖父母から子への学資保険料贈与(年:110万)によって、若年齢時期の所得が薄い期間の生活も楽になり、孫の教育費はTOTALで1870万程度という生涯教育費レベルの保障額が確保できる。

 そして、若年齢夫婦の必要保障額も子(祖父母からは孫ですが)の生涯教育費用が今後予定されるべき必要保障額から外して考えることも出来るので、一般的な必要保障額と比較してもかなり低い必要保障額で保険設計が可能となるので生活費内における保険料負担割合も軽くて済むというわけだ。…そして、究極目的である、祖父母の相続財産も守られることは言うまでもない。

 これから教育資金一括贈与制度も政府の予定案では申込期限延長及び上限額を1500万から3000万まで上げようという見込みもあるが、一定期限までに使い切れずに残額を残してしまうと税率が高い贈与税率が掛かるということにもなってもしまうので、よほどの綿密な払出し計画を練った上で実行をしないと難しいのではないだろうかとさえと感じてもしまう。

 いずれにせ、皆さんも、契約前には制約や条件等を再度よく確認をされて上で、より適正な制度をご活用下さいね。(執筆者:中川 透)

《中川 透》
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少子高齢、長寿化、AIやITの技術革新の台頭などにより、これから先の私たちの生活スタイルは大きく変化していきます。今までの常識が非常識化していくと共に多様化していく私たちのライフスタイルへの適合性にキチンと対応できるFPを目指しながら日々分析や研究等をしています。家計管理や資産形成相談、保障見直し、相続相談などが得意分野です。 <保有資格>:AFP/二級ファイナンシャル・プランニング技能士/トータル・ライフ・コンサルタント(生命保険協会認定FP)/生・損保販売員資格/老後鑑定士 寄稿者にメッセージを送る

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