株式投資には様々な手法がありますが、その中でも人気の手法の一つが「株主優待」。ご存知の通り、権利確定日に株を保有していると、その会社から優待商品が送られてきて配当も受取れるわけですが、株主権利確定日が一番多いのは何月かというと、毎年3月になります。
では、3月の優待権利を獲得するために、多くの投資家はどれくらい前に準備を始めるのでしょうか? 結論から言いますと、3カ月前の12月頃から目ぼしい優待銘柄をリサーチし、株式を購入しておく投資家が多いとされています。
もちろん、それよりも早く仕込むことができますし、極端に言えば、権利確定日に購入し次の日に売却しても権利獲得となります。ですから、いつ優待銘柄を仕込むかは各人の判断となりますが、権利確定月まで3カ月を切ると、たいてい株価が値上がりしていくという事実を思いに留めておかなければなりません。
それもそのはず、人気優待銘柄となると多くの投資家たちが買いに走るので、権利確定月が近づくと株価が高くなる傾向にあります。ですから、まだ値上がりしていない3か月前までに仕込んでおくのが一つのセオリーなんです。
参考に人気優待銘柄の一つ、吉野家ホールディングス(9861)の2014年の権利確定月(2月25日)前後の株価を、チャートで見てみましょう。
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11月から12月にかけて緩やかな上昇が見られますが、12月下旬から急騰していますね。そして2月13日に最高値の1567円をマークし、そこから下落が始まっています。
このチャートを見ると分かるように、3か月前の11月前後に仕込むことで、低価格で優待銘柄を仕込むことができるわけです。さらに具体的にいいますと、低価格で仕込むことができれば2つのシナリオを描くことが可能になるのです。
シナリオ1:優待権利獲得後、株価差損を出さずに売却
優待銘柄を安く仕込むことができたなら、権利確定後に株価を売却しても株価差損がでる可能性はそんなに高くありません。
上の吉野家ホールディングスのチャートでは、11月の株価は約1200円、権利確定後は約1400円ですから、権利確定後にすぐ売却しても200円×100株単位=2万円の株価差益を得られます。
また、吉野家の優待は100株保有で3000円分の優待券(300円の優待券×10枚)、その他に配当金が半年ごとに1000円ずつ受け取れますので、2月の権利獲得で合計4000円相当受取れる計算になります。つまり、100株保有することで株価差益と合わせて約2万4千円相当を利益とすることができるわけですね。
吉野家ホールディングスを一例として見てみましたが、人気優待銘柄の動きはだいたい似通っていますから、3か月前を目安として仕込むことを一つの投資戦略としたいところです。
シナリオ2:権利獲得前に売り、為替差益だけを狙う
もう一つのシナリオが、権利確定日前の高値を狙って売却し株価差益を狙うというもの。優待銘柄は権利確定日翌日以降、株価が急落する傾向にありますから、優待の権利を放棄してでも売却した方が得られる利益が高いことがあります。
もう一度上のチャートを見てみましょう。権利確定日前の最高値が2月13日の1567円で、権利確定日以降の株価は約1400円です。ですから、高値と権利落ち後の株価の差は約167円(100株単位の売買で差益は1万6700円)となり、権利獲得による優待と配当利益4000円を上回っていることになります。
最高値の1567円で売るのは極めて困難ですが、仮に1200円で仕込んで1500円で売ったとしたら約3万円の利益。一方で、権利落ち後1400円で売却したケースでは、上でもふれたように合計2万4千相当の利益となります。優待がどうしても欲しい! という場合を除き、純利益という面だけを考えると、権利確定前に売却した方が断然お得なんです。
これを熟知している投資家は、人気優待銘柄を3か月前までに仕込み、株価上昇したところで売却し利益を積み重ねています。優待商品を貰うというのは魅力的で、ある意味 “流行的な” 投資法ですが、純粋に利益を得ることを考えると、意外にも「シナリオ2」の方が有効となるケースが多いんです。
結局のところ、株価差益を狙うのか、それとも優待商品を狙うのか、その目的を定めておくことが重要になりますが、株価が上がる前、とりわけ「3か月前」までに仕込んでおくことで二つの選択肢を手にすることができるというこの投資法を、是非実践されて下さい。(執筆者:堀 聖人)