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確定申告もそろそろ後半戦に入ってきましたが、今回は源泉徴収票と支払調書について簡単にご説明したいと思います。
目次
1. 源泉徴収票
源泉徴収票の代表的なものとして、「給与所得の源泉徴収票」があります。
(1) 源泉徴収票の税務署及び市町村への提出
給与等(俸給、給料、賃金、歳費、賞与、その他これらの性質を有する給与)の支払者(会社、個人事業主など)が税務署に提出する「給与所得の源泉徴収票」ですが、例えば、年末調整を行った場合は以下の3つのケースに限定され、すべての源泉徴収票を税務署に提出する必要はありません。
・税理士、公認会計士、弁護士及び司法書士等(報酬等として支払う場合を除く)については、その年中の給与等の支払金額が250万円を超えるもの
・上記以外の者については、その年中の給与等の支払金額が500万円を超えるもの
また、給与等の支払者は翌年1月1日現在に在職しているすべての給与等の受給者の「給与支払報告書(個人別明細書)」を市町村に提出する必要がありますが、その年の途中で退職した受給者への給与等の支払金額が30万円を超える場合も「給与支払報告書(個人別明細書)」を市町村に提出する必要があります。
(2) 源泉徴収票の給与等の受給者への交付
すべての給与等の支払者は「給与所得の源泉徴収票」を作成し、給与等の受給者(サラリーマン、OL、パートタイマーなど)に交付する必要があります。給与等の支払者は給与等の金額や源泉徴収税額の有無に関係なく交付する必要があり、給与所得のある納税者が医療控除などを受けるために確定申告をする場合には、税務署に「給与所得の源泉徴収票」を提出してください。
(3) まとめ
以上のとおり、給与等の受給者に交付する「給与所得の源泉徴収票」、税務署に提出する「給与所得の源泉徴収票」、市町村に提出する「給与支払報告書(個人別明細書)」の交付・提出範囲は異なりますが、すべての給与等の受給者は「給与所得の源泉徴収票」の交付を受ける権利がありますので、十分にご留意ください。
2. 支払調書
支払調書の代表的なものとして、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」があります。
(1) 支払調書の税務署への提出
以下のような報酬等の支払者は「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を税務署に提出する必要があります。
・馬主に支払う競馬の賞金については、その年中の1回の支払賞金額が75万円を超えるものの支払いを受けた者に係るその年中のすべての支払金額
・プロ野球の選手などに支払う報酬、契約金については、その年中の同一人に対する支払金額の合計額が5万円を超えるもの
・税理士、公認会計士、弁護士及び司法書士等に対する報酬、作家や画家に対する原稿料や画料、講演料等については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が5万円を超えるもの
・社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬については、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が50万円を超えるもの
・上記以外の報酬及び料金等で、同一人に対するその年中の支払金額の合計額が5万円を超えるもの
(2) 報酬等を受けた者への交付
一部の皆さんは驚かれるかもしれませんが、報酬等を受けた者に「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を交付しなさいとは法律のどこにも規定されていません。よって、個人事業者が確定申告をするときに、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を税務署に提出する必要もありませんし、税務署がその提出を要求することもありません。
それでは、確定申告時期になると報酬等を受けた者に「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を交付している慣例はどういうことかと言いますと、単なるサービスです。「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」がなくても、「契約書」、「請求書」又は「領収証」などで報酬等の金額及び源泉徴収税額を把握できますし、個人事業者なら契約した報酬等を把握したうえでご商売をされているはずなので、これらに基づいて確定申告をすれば問題ありません。
(3) まとめ
報酬等を受けた者に「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」が交付されるのは慣例として行われている単なるサービスですので、もし、交付を受けたときは「ありがとうございます」と言って受け取ったら良いですが、「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の交付を要求するのは、法律上の義務のないことの依頼ですので、十分にご留意ください。事務処理の簡素化のため、最近は「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を交付しない報酬等の支払者もいますので、日頃からこまめに記帳して、正しい確定申告を心がけましょう。(執筆者:美藤 直人)