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これからのマイホーム選びに必要な「終活」の視点

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これからのマイホーム選びに必要な「終活」の視点

 一定の年齢以上の方の間では「終活」に関心が集まっています。最近ではゴールデンタイムに番組が組まれたり、情報番組やニュース番組の中で特集が組まれたりしています。

 様々に取り上げられる終活ですが、その定義は

「人生の終焉を考えることを通して、今をより良く生きる活動」
(一般社団法人終活カウンセラー協会)

 とされています。

 将来の備えをしたうえで、残りの人生をどう生きていくのかということです。

 どちらかというとシニア世代の方がご自身のお墓や葬儀の準備のようにとらえる風潮が多いのですが、今回は家を建てる子供世帯の視点からも必要な「終活と住まい」という考え方で書いてみたいと思います。


家を建てる=親子のこれからの関係性をどうするのか? を考える機会

 家を建てることはとても夢のある出来事です。新しい生活に心躍ることは間違いありません。と同時に家を建てる子供世帯はご両親との関係性を考えなければいけないタイミングでもあります。

 家を建てるということはそこに生活の基盤を築いていくことに他なりません。事情が変わったからといっても、住宅ローンやお子さんの学校の関係などで引越しをすることは簡単ではありません。だからこそ、住宅ローンの借り方などの経済的な部分以外にも、家を建てる時に考えておかなければいけないことがあります。

親が介護状態になった時、両親が一人になったときどうするのか?

 家を建てるきっかけもいろいろあります。お父さんが亡くなり、お母さんが一人暮らしになって心配だから同居できるように建てたとかお子さんが小学校に入学するまでには生活の基盤を築きたかったとか、社宅を出なければいけなくなってなど様々です。

 実家との距離という視点からは次の3つに分けられます。

1. 実家で同居する(二世帯住宅を建てる)
2. 実家に近いエリアに住まいを構える
3. 実家からは離れたエリアに住まいを構える

各パターンのメリットデメリットは

1. 同居するパターン

 同居といっても同じ空間で生活を共にする同居と二世帯住宅という形で玄関も分かれていて、1階にご両親 2階に子供世帯 が住むなんてパターンもあります。最近では更に結婚していないお子さんが両親世帯と一緒に住む2.5世帯なんていうパターンも出てきています。

 いづれにしろこのパターンは扉ひとつでお互いのスペースを行き来できることが多いので、困ったことがあれば容易に助け合えるメリットがあります。

 実際、二世帯住宅に住み始めた方にお話を伺うと親世帯からは

「普段は生活自体は別々に過ごしているけど、週末などに一緒に食事をしたりしている。自分たちの体調が悪いとか困ったことがあったら、二階に子供世帯が住んでいるというのは気持ち的に大きな安心感がある」

 とおっしゃいます。

 一方、子供世帯からは

「たまに子供の面倒を見てもらったり、自分たちが仕事で遅くなりそうな時もおじいちゃん、おばあちゃんがいてくれると思うと助かる」

 というお話も聞きます。

 もちろんそばにいるからこそ、気を使う面が出てくるのはデメリットかもしれません。もしかしたら「嫁姑の関係が悪くて、同居なんて考えられない」なんて事情も出てくるかもしれませんが、長い目で見た時には介護などの支援が必要な時に遠方から通ってくるよりも関わりやすい面は大きいと思います。


2. 実家に近いエリアに住まいを構えるパターン

 近いというのがどの程度かにもよりますが、車でおよそ30分以内くらいでしょうか。片道1時間かかると気軽に来られる距離ではないかもしれません。

 「味噌汁が冷めない距離」なんて表現がありますが、近所に住んでいて、何かあれば歩いてお互いの家に行き来できるというのは理想かもしれません。

 同居と違ってお互いの生活に干渉することはない。でも困ったことがあれば気軽に行ける距離感と言えます。最近は70歳代でも元気な方が多いです。日頃から地域のコミュニティに参加したり、旅行に出かけたりと忙しくしている方も沢山います。だからこそ親世帯も生活を干渉されたくないという気持ちもあります。でも年齢的にいつまでも元気でいられる保障もない世代だったりします。

 日本人の健康寿命は男性が71歳 女性が74歳です。

 70歳代にもなればいつ身体に異変が起きてもおかしくないという想いと背中合わせで過ごしているかもしれません。そうすると「何かあっても近くに子供世帯がいる。」「実家にすぐに行ける」という距離感は大きな安心感につながるかもしれません。

3. 実家からは離れたエリアに住まいを構えるパターン

 夫婦とも地方から上京して、東京で住まいを構えるなどこのパターンが意外と多いもしれません。また全国転勤のある金融機関の方などは借上げ社宅制度があり、転勤先での住まいは確保されるものの、お子さんの学校のことを考えるとお子さんが小学生高学年になったらその場所で住まいを構えるなんてお話も良く聞きます。

 ご夫婦ともにそのエリアの出身ではなくても、お子さんの教育環境を優先させて、ご主人はそれ以降の転勤の際は単身赴任をする覚悟をするようです。

 お仕事の関係で実家に近いところで生活がすることは難しいケースは多くあります。そして離れた場所でマイホームを持つのならば、ご両親が今よりも高齢になって、介護などが必要となった時のことを考えておく必要があります。

 すぐに解決策が出せるものではありませんが、

・もし介護が必要になったら
・ご両親のどちらかが亡くなって、ひとりになったら

 どういう対応が可能でしょうか? ご兄弟がいればどう役割を分担できるのでしょうか? ご両親に自分たちの住まいのエリアに出てきてもらう方が現実的でしょうか?

 こんなことを家を建てる時に考えておくべきだと思います。

 せっかく建てた家を10年と経ないうちに売却をして、実家で同居が必要となったなんてケースもありました。この時は売却もスムーズにいき、住宅ローンも精算できたので恵まれたケースでした。住宅ローンが残る家は売るに売れません。最悪、実家に住みながら、空き家の住宅ローンを返済し続けなければなりません。

 もしかしたらそんな視点で考えると、物件選びの視点も変わってくるかもしれません。実家に戻ることが想定されれば、売却しやすい立地の良い物件を選ぶとか賃貸しやすい立地を選ぶとか。もしかしたら短期間で住宅ローンを完済できるくらいの予算で中古物件を選ぶなんて選択肢もあるかもしれません。

家を建てる=「親の終活」に関心を持つチャンス


 マイホームを持つ時には「親の終活」に子供も関心を持たなくてはいけなくなるということだと思います。

 そんな視点で考えるとマイホームを持つのはもっと後でも良くなるかもしれません。実家を建替える選択肢が現実的になるかもしれません。自分たちが住む家ですが、自分達だけの事情だけでは決めない方が良い側面もあるということです。

 両親はいつまでも元気でいて、口うるさい存在と思っていますが、人間は生まれた時、全員に平等に決められることがあります。

 それは、「死ぬ」ということ。

 いつかは分かりませんが、必ず最後に「死」を迎えます。今元気な両親もいづれ…その次は自分達も「その時」が訪れます。

 「終活」はその時を考えて、元気なうちに準備を整え、いつかは分からないその時まで元気に過ごすことです。住まいは「衣食住」のひとつで最後まで生活に欠かせないものです。「今」だけではなく、「将来」も見据えた賢い選択をしていきたいものです。(執筆者:佐藤 陽)

《佐藤 陽》
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佐藤 陽

FPオフィスケルン 代表 住宅取得相談専門のFPとして住宅取得に伴う資金計画・住宅ローン相談、不動産購入に伴う様々な不安を解消するサポートを行なっています。特に住宅ローンについては机上の相談だけではなく、融資申込~融資実行までの実務サポートを行っています。15年間在籍したハウスメーカーでの年間300件超の住宅ローン業務の経験を活かし会社経営者や個人事業主など住宅ローン審査が厳しい方のローン付けも全面的にサポートしています。ケルンという事務所名は登山道の道標からもらっています。相談者の人生の道標を作るような仕事をしたいとの想いから付けました。 <保有資格>:ファイナンシャル・プランニング技能士(2級)(AFP) / 宅地建物取引士 / 建設業経理事務士 寄稿者にメッセージを送る

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