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先日Yahoo!ニュースを読んでいたら、中年フリーターの問題について取り扱った記事が掲載されておりました。
この記事の中で一番興味を持ったのは、フリーターなどの非正規社員と正社員の、社会保険の加入率を比較した、次のようなデータになります。
雇用保険の加入率:非正規社員65.2%、正社員99.5%
健康保険の加入率:非正規社員52.8%、正社員99.5%
厚生年金の加入率:非正規社員51.0%、正社員99.5%
従業員がこれらの社会保険に加入する場合、事業主は原則として従業員が納付する保険料と同額を、拠出しなければなりません。
例えば皆さんの給与から、社会保険料として10,000円が控除されている場合、事業主は同額の10,000円を拠出して、併せて20,000円を日本年金機構などに納付します。
ただ健康保険や厚生年金の保険料は、雇用保険の保険料と比べてかなり高く、事業主の負担も大きくなります。そのため事業主は雇用保険に加入させても良いけれど、健康保険や厚生年金にはあまり加入させたくないと考えるので、「雇用保険の加入率>健康保険や厚生年金の加入率」になるのです。
具体的には「1週間当たりの所定労働時間が20時間以上」になると、従業員を雇用保険に加入させる必要があります。また「1カ月の所定労働日数及び1日の所定労働時間が、正社員の概ね4分の3を上回る」と、従業員を健康保険や厚生年金に加入させる必要があります。
例えば正社員の所定労働時間が1日8時間ならば、1日6時間以上が、正社員の概ね4分の3を上回る時間です。
つまり週5日働くならば、1週間当たりの所定労働時間を20時間以上30時間未満にすれば、雇用保険には加入するけれども、健康保険や厚生年金には加入しないという状態を作れます。
目次
老齢基礎年金しかない中年フリーター
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皆さんもすでにご存知かと思いますが、平成28年10月1日から次のような要件を満たすと、健康保険や厚生年金に加入する必要があります。
・給与の月額が8万8,000円以上(年収に換算すると106万円以上)
・勤務期間が1年以上
・学生でないこと
・社会保険の対象となっている従業員数が501人以上の企業に勤務していること
このうちの「1週間の所定労働時間が20時間以上」は、上記の雇用保険に加入する必要のある所定労働時間と全く同じです。
しかし仮に雇用保険の加入者の全員が、健康保険や厚生年金に加入したとしても、それは65.2%にすぎません。
厚生年金に加入できない方は引き続き、国民年金に加入して自分で保険料を納付します。
しかし20歳から60歳まで、1カ月も欠かすことなく国民年金の保険料を納付しても、原則65歳から支給される老齢基礎年金は、780,100円(平成27年度額)にしかなりません。月当たりに換算すると65,008円くらいですから、普通に生活していくだけでも大変です。
年金の視点で中年フリーターの問題について考えてみると、このような点が一番の問題だと思います。
正社員でも今後は安泰ではない
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正社員になり厚生年金に加入すれば、国民年金から支給される老齢基礎年金に上乗せして、厚生年金から老齢厚生年金が支給されます。
それなら中年正社員は、年金について心配する必要はないと思いますが、全員が安泰というわけにはいかないのです。
その理由として先日SPA!を読んでいたら、管理職のポストが急速に減っているため、課長にすらなれない40代が増えているという記事が、掲載されていたからです。
ねんきん定期便を開いてみるとわかるように、老齢厚生年金は次のような計算式で算出します。
この「平均標準報酬額」とは大まかに表現すると、入社から定年退職までの間に会社から受け取った、すべての月給と賞与の平均額です。
そのため役職に就くことができず、給与の上昇が緩やかになってしまった方は、老齢厚生年金の金額も増えないことになります。
年金の視点で見ると中年正社員は、中年フリーターよりは良いとしても、決して安泰ではないのです。
400円か5,000円で自助努力を始める
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このような事情があるため中年正社員であっても、今後は年金額を少しでも増やすための、自助努力が大切になってきます。
公的な制度で低額から始められる制度としては、「個人型の確定拠出年金」があり、これなら毎月5,000円から始められます。しかし中年フリーターの方はこのくらいの金額であっても、かなりの負担になると思うのです。
そこで国民年金の加入者のみが利用できる、「付加年金」という制度をおすすめします。
この付加年金は老齢基礎年金の上乗せになりますが、その金額は「200円×付加保険料の納付月数」となり、決して大きな金額ではありません。
しかし付加保険料は毎月400円とかなり安く、また付加年金の支給開始から2年が経過すれば元が取れます。中年フリーターも中年正社員も将来を悲観する前に、できることから始めてみましょう。(執筆者:木村 公司)