国家公務員や地方公務員、または国民年金の第3号被保険者となり、自分で保険料を納付する必要のない専業主婦は、個人型の確定拠出年金の加入資格がありません。
その他に勤務している会社が、次のような企業年金を実施している厚生年金保険の加入者も、個人型の確定拠出年金の加入資格がありません。
・ 企業型の確定拠出年金
・ 確定給付企業年金
こういった方であっても、個人型の確定拠出年金に加入できるようにする改正案が、平成28年4月15日に、参議員本会議で可決されました。
またこの改正案は平成28年5月24日に、衆議員本会議でも可決されましたので、平成29年1月1日から、国民年金の保険料の免除者など一部の方を除き、誰でも個人型の確定拠出年金に加入できるようになります。
ただそうはいっても、今まで確定拠出年金に関心がなかった方は、何から始めれば良いのか、わからないと思うのです。
また従来からある国民年金基金、生命保険会社が販売する個人年金保険などと比べると、加入時に考えるべきことは多いと思います。
しかし主に考えるべきことは、運営管理機関、掛金額、運用商品の3つだけであり、これらを決定すれば、個人型の確定拠出年金をスタートできます。
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目次
まずは運営管理機関を決定する
生命保険や医療保険に加入しようと思ったら、生命保険会社に資料請求を行い、その資料を見て納得したら、加入手続きをすると思います。
また一定の要件に該当して、保険金や給付金をもらえることになったら、生命保険会社に連絡して、請求手続きをするはずです。
個人型の確定拠出年金において、こういった役割を担うのが、「運営管理機関」になります。
ただ複数の生命保険会社の生命保険や医療保険に、同時に加入することはできますが、運営管理機関は1社しか選べません。
どういった会社が運営管理機関をやっているかについては、国民年金基金連合会のサイトの中にある、「個人型の運営管理機関の一覧」を見るとわかります。
これを見ると皆さんの身近にある銀行、証券会社、生命保険会社などが、運営管理機関をやっているとわかり、個人型の確定拠出年金に対する敷居が、低くなったのではないでしょうか?
ただ私は身近にあるとか、大きい会社であるとかではなく、格付会社のモーニングスターのサイトの中にある、「個人型年金プランのランキング」などを見て、主に手数料を基準に、運営管理機関を選んだ方が良いと思うのです。
それは運営管理機関によって、手数料にかなりの差があり、その手数料は長期間に渡って、支払い続ける必要があるからです。
また確定拠出年金の加入者が拠出した掛金とその運用益は、「資産管理機関」が管理・保全しておりますので、運営管理機関が万が一倒産しても、消失することはないです。
60歳まで引き出せない前提で掛金額を決定する
生命保険や医療保険の保険料は基本的に、生命保険会社が年齢などを基に計算するので、加入者はそれを支払うか否かを、決定するだけです。
しかし個人型の確定拠出年金の掛金は、一定の上限がありますが、月額5,000円以上なら1,000円単位で、加入者が自由に設定できます。
また確定拠出年金の掛金は、年末調整や確定申告の際に、その全額を「小規模企業共済等掛金控除」として、所得から控除できますので、節税効果を期待できるのです。
ただ拠出した掛金とその運用益は、加入者が障害状態になったり、死亡したりしないかぎり、最低でも60歳にならないと、引き出すことができないので、それを前提に掛金額を決める必要があります。
この点を確定拠出年金のデメリットだと、批判される方もおりますが、もし自由に引き出しができたら、誘惑に負けて使ってしまう方もおり、老後資金が貯まっていかないと思うのです。
なお確定拠出年金のモデルとなった、アメリカの401kプランには、拠出した掛金とその運用益の一部を、低利の固定金利で借入れできる制度がありますので、将来には日本でもこのような制度が、導入されるかもしれません。
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運用商品は運営管理機関から提示されたものから選ぶ
一般的な生命保険や医療保険の場合、納付された保険料を何で運用するかは、生命保険会社が決定するので、加入者はその点について、特に考える必要はありません。
しかし確定拠出年金の場合、拠出された掛金を何で運用するかは、自分で決定する必要があります。
ただ何でも良いというわけではなく、運営管理機関から提示されたものの中から、選ぶ必要があります。
そのため上記の手数料の他に、運営管理機関がどんな商品を取り扱っているかも、運営管理機関を選択する時の判断材料になるのです。
おそらく資産運用の経験がない方は、定期預金などの元本確保型商品ばかりを、選んでしまうかもしれません。
しかしそればかりでは、拠出した掛金は増えていきませんので、ある程度は投資信託などの価格変動型商品も、選んだ方が良いと思うのです。
初めてでよくわからないという方は、日本株式、外国株式、日本国債、外国国債などの様々な資産で構成された、バランスファンドを検討してみましょう。
なお投資信託は一般的に、プロのファンドマネージャーが、銘柄や投資割合などを決定する「アクティブ型」より、日経平均株価などの指数に連動した運用を目指す、「インデックス型(パッシブ型)」の方が、手数料を安く済ませることができます。
ですから最初はインデックス型(パッシブ型)の、バランスファンドを選んでおくのが、無難な選択ではないかと思うのです。
まずは少ない掛金額でスタートする
運営管理機関、掛金額、運用商品の3つを決定して、個人型の確定拠出年金をスタートしてみたけれども、始めた時と考え方や収入などが変わり、これらを変更したい場合があると思います。
もちろんそれは可能で、運営管理機関は随時、掛金額は毎年4月から翌年3月までの間に1回、運用商品は少なくとも3カ月に1回、変更することができます。
ですからまずは少ない掛金額で、安定的な運用を始め、継続していけるようだったら、掛金額を増やしたり、価格変動型商品の割合を増やしたりしていけば良いと思うのです。(執筆者:木村 公司)