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有効求人倍率は24年7か月ぶりの高水準
7月1日に厚生労働省が発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は、前回より0.02ポイント上昇し1.36倍でした。有効求人倍率とは、有効求職者数に対する有効求人数の割合で、雇用動向を示す指標です。
全国のハローワークの有効求職者数と有効求人数をもとに算出し、厚生労働省が毎月発表しています。
求人数を求職者数で割りますから、倍率が1を上回れば人を探している企業の方が多く、下回れば仕事を探している人の方が多いことを示します。
景気が良くなると求人数が増えることから、景気動向を示す指数となっています。上昇は3か月連続で、1991年10月(1.36倍)以来、24年7か月ぶりの高水準となりました。

有効求人倍率からみる、今後のインフレ
本当に日本の景気は回復しているのでしょうか。
有効求人倍率が示すほど、景気が回復している実感がないのは、労働人口の減少によるところが大きいようです。
労働人口の減少により、求職者数が減っているため、好況感は無いのに有効求人倍率が上昇していると考えられます。
雇いたい人より、働きたい人の方が少なくなると、なにが起こるか。
人を雇いたい企業は、我が社で働いて貰えるようにと、周りよりも良い条件を提示します。実際に、アルバイトやパートの時給が、労働力不足を背景に上昇しています。
首都圏・東海・関西の平均時給は、前年同月比1.8%増えました。職種別にみても、事務系をはじめとする6職種全てで前年同月比プラスとなっています。
安倍総理はインフレを実現させるため、これまで経団連に賃金アップを要請してきました。賃金が上昇すれば、家計所得が増え、消費が活発になり、インフレになる。政府と日銀は、賃金上昇をデフレ脱却の鍵と位置付けています。

今後の日本の人口動態
有効求人倍率の上昇は、働きたい人が少なくなったことが原因でした。そこで、今後の日本の人口動態についても、確認しておきましょう。
日本の人口約1億2800万人は、2030年には1億1600万人に減少すると言われています。また、年齢区分別の人口では、65歳以上の高齢者は増え続け、減るのは64歳までの人口。すなわち労働人口です。
今後も引き続き労働人口が減少することで、企業が人材獲得を競い合い、賃金上昇が予想されます。教科書どおりにいけば、賃金が上昇することにより、消費が活発になるとインフレが起こります。つまり景気の回復です。
「賃金上昇によるインフレ」の落とし穴

一方で、賃金の上昇によって増加したコストを、価格に転化する形で起こるインフレも考えられます。これらは、同じことの表裏でもあるわけですが、
2. 賃金上昇により消費が増えるのが先で、遅れて価格が上がる(インフレ)
という違いがあります。
1. の場合、価格の上昇に賃金上昇がついていけず、家計が疲弊することが想定されます。
2. の場合、景気の好循環を生み出すハッピーなインフレが期待できます。
労働人口の減少による賃金上昇は、賃金上昇分を商品やサービスの価格に転化しようと考えるはずです。故に、可能性が高いのは、1. と考えられます。
また、これからの日本は高齢化の進展に伴い貯蓄を取り崩しながら生活する人が、ますます増えていきます。そのため、国内消費における高齢者の存在感は増していくと考えて良いでしょう。
既に定年退職を迎えた高齢者にとっては、賃金上昇によるインフレは何のメリットもなく、ただ物価が上昇するだけです。すると高齢者の購買力は、低下することになります。つまり、賃金上昇によるインフレが起こった時にも、消費は「それほど増えない」可能性が高いわけです。
教科書どおりにいけば、
「賃金が上昇すれば家計所得が増え消費が活発になりインフレになる。」
ですが、実際には、賃金上昇によるインフレ、消費(景気)は回復しない可能性が高そうです。
このように
と考えます。
インフレに備えて、そろそろ住宅ローンの見直し、貯蓄目的の生命保険の見直し、資産構成の見直しが必要な時期かもしれませんね。(執筆者:渡辺 紀夫)