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空き家予防策としての「家族信託」 おススメする理由を事例で紹介 

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空き家予防策としての「家族信託」 おススメする理由を事例で紹介 

空き家を所有する原因の半数…

公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会によると、空き家を所有することになった原因の約半数は「親の住宅を相続」です。

子世代からすれば、親の家を相続しても、それをすぐに貸したり売ったりできません。当面は空き家として放置されることになります。

他方、厚労省によると、平成24年時点で65歳以上の7人に1人が認知症です。平成37年には5人に1人になるといいます。

子どもを煩わせたくないとの想いから高齢者施設に入所される方も多いのですが、単身世帯の親が施設へ入れば、自宅が空き家になります。そのまま認知症になってしまえば、売ることも貸すこともできなくなります。

負のスパイラスからの脱出手段


≪画像元:http://kazokushintaku.org/whats/≫

人が住まない空き家は傷みます。しかし、売却できない家を改修する気にはならず、ますます傷む…の負のスパイラルに突入します。

これを未然に防ぐために、家族信託®を活用した事例をご紹介します。

※ 家族信託は、一般社団法人家族信託普及協会の登録商標です。

事例 父を亡くした方の相続相談


相続人は母と子の2人。母は夫婦名義の家にお住まいで、子はその向かいにマイホームを所有しています。

父の遺産は、自宅の共有持分と現金600万円。長年施設に入っていたため、現金はほとんど残っていませんでした。当初は、母が全財産を相続する予定でしたが、二次相続が気になったとのことです。

母は自宅の共有持分の他に3,000万円の預金をお持ちでした。二次相続で相続税がかかるため、父の財産は子に相続させることを提案しました。

もう一つの困った問題

母は要介護3、いわゆる「まだらボケ」の状態でした。遅かれ早かれ、判断能力を喪失するであろうことが予測されました。将来、施設に入ることになったとしても、3,000万円の預金があるため、費用の心配はいりません。

しかし入所が長引いた場合や、突発的にまとまった出費が必要になった場合など、万が一の時には自宅を売却できる手立てを講じておくべきだと考えました。

ところが、母は日頃から自宅に対する思い入れが強く、判断能力がある間の売却は到底できません。その一方で、判断能力を失った後では契約行為(=売却)そのものができません

この解決に「家族信託」登場

このジレンマを解決できるのが家族信託です。今回、下記のような信託を設定しました。

委託者兼受益者: 母
受託者: 子
信託財産: 自宅の共有持分
信託内容: 信託財産の管理・運用・処分。信託終了時、残余財産は受託者に帰属

自宅の登記事項の甲区欄には、子が共有者と受託者の両方の立場で登記されました。

これで、母が判断能力を失っても、子が売却することが可能になります。また、売却しないまま母が亡くなった場合、母の持分は子に帰属するため、相続したのと同じ形になります。

「保険」として、家族信託が果たす役割は大きい


この信託を組成してから、まだ1年ほどしか経過していません。母はまだまだお元気にご自宅で暮らしていらっしゃいます。もしかすると、信託そのものが無駄になるかもしれません。

しかし、アルツハイマー病患者の平均余命が約8年と言われる昨今、万が一の際に自宅を空き家にしないための「保険」として、家族信託が果たす役割は大きいと考えます。売却せずにすめば万々歳、売却の必要が生じた場合でも滞りなく処理できます。

このように、「自宅を空き家にしない」という一点だけに着目しても、家族信託は便利で使い勝手の良いツールであることがおわかりいただけると思います。不動産に従事する方々の必須アイテムとして、もっと積極的に取り組むべきでしょう。(執筆者:和田 清人)

《和田 清人》
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和田 清人

和田 清人

和田清人測量登記事務所 代表 1988年、近畿大学理工学部原子炉工学科卒業。制御機器メーカー勤務を経て、2003年和田清人測量登記事務所を開設。土地家屋調査士として不動産の登記や境界の相談に応じながら、土地相続専門FPとして相続対策ならびに相続税対策のアドバイスを行っている。境界問題や相続税をテーマにした講演や執筆多数。そのわかりやすさには定評がある。現・日本FP協会大阪支部副支部長、大阪府不動産コンサルティング協会理事。元・大阪土地家屋調査士会広報部長。 <保有資格>AFP、公認不動産コンサルティングマスター 寄稿者にメッセージを送る

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