「年金カット法案」の対策 個人年金保険はインフレになっても、年金額は増えない さぁどうする?»マネーの達人

「年金カット法案」の対策 個人年金保険はインフレになっても、年金額は増えない さぁどうする?

毎年4月に物価の変動率などで金額を改定している老齢年金



67歳到達年度までの新規裁定者の場合


原則65歳になると支給される、老齢基礎年金や老齢厚生年金などの老齢年金は、毎年4月になると賃金や物価の変動率で、その金額を改定しております。

例えば67歳到達年度までの「新規裁定者」の場合には、賃金の変動率によって、老齢年金の金額を改定します。

具体的には過去3年度における、現役世代の賃金の変動率の平均を算出し、それが上昇(下降)した分だけ、老齢年金を増額(減額)させるのです。

68歳到達年度以降の既裁定者の場合


一方、68歳到達年度以降の「既裁定者」の場合には、物価の変動率によって、老齢年金の金額を改定します。

具体的には1月頃に総務省から発表される、前年の全国消費者物価指数を参照し、それが上昇(下降)した分だけ、老齢年金を増額(減額)させるのです。

公的年金の財源となる保険料収入は、現役世代の賃金の水準が上昇すると増額し、またそれが下降すると減額するため、公的年金は現役世代の賃金の変動率に合わせて、その金額を改定するのが原則になります。

しかし既裁定者については購買力を維持する観点から特例的に、物価の変動率に合わせて、その金額を改定しているのです


年金制度改革法案が年金カット法案と批判される理由

野党が「年金カット法案」と批判していた年金制度改革法案が、2016年12月14日に参院本会議で可決され、成立することになりました。

この年金制度改革法案が年金カット法案と批判されているのは、次のような2つの手段によって、年金額が減額されるからです

(1) 賃金の変動率を優先して年金額を改定する


現在は冒頭に記載しましたように、新規裁定者は原則として賃金の変動率で、また既裁定者は物価の変動率で、年金額が改定されます。

しかし2021年4月以降は、賃金が物価より下降した場合、賃金の変動率を優先して、年金額を改定するのです

例えば賃金の下降率が、物価の下降率より大きい場合には、新規裁定者か既裁定者かを問わず、下降率の大きい賃金の変動率で、年金額が改定されるようになります。

また例えば賃金の変動率がマイナスで、物価の変動率がプラスの場合には、新規裁定者か既裁定者かを問わず、マイナスの賃金の変動率で、年金額が改定されるようになります。

(2) 複数年分のマクロ経済スライドをまとめて実施する


マクロ経済スライドとは賃金や物価の変動率から、少子高齢化の進展状況などを元に算出した「スライド調整率」を控除して、年金額を減額する仕組みになります

2015年度にマクロ経済スライドが発動された時のスライド調整率は、0.9%になっていたので、例えば賃金や物価が1%上昇しても、

「1%-0.9%=0.1%」

となり、0.1%しか年金額は増えないのです。

このようにマクロ経済スライドが発動されると、賃金や物価が上昇しても、その分だけ年金額が増えないのですが、例えば賃金や物価の変動率がマイナスの場合は、マクロ経済スライドは発動されないようになっております。

しかしいつまでもマクロ経済スライドを発動しないでいると、年金財政は悪化していきます

そこで2018 年4月からは、賃金や物価の上昇率が大きかった年度に、複数年分のスライド調整率を、まとめて控除できるようにするのです。


年金カット法案の対策なら物価の上昇で価値が上がる金融商品



(1)や(2)のような改正が実施されると、前年より物価が上昇しても、その分だけ年金額が増えなくなるので、年金の実質的な価値は目減りしていき、年金受給者の購買力は低下します。

そのため年金カット法案が不安で、何か対策を立てるとしたら、物価の上昇で価値が上がる金融商品、つまりインフレに強い金融商品を保有して、購買力を低下させないことだと思うのです。

インフレに強い金融商品としては、例えば株式、不動産、コモディティ(金、銀、プラチナなど)などが挙げられます

しかしこれらは投資の経験がない方にとっては、少しハードルが高いと思うので、次のような金融商品を検討してみるのが良いかと思うのです。


外貨預金より手数料や換金性の面で優れた外貨MMF

インフレにより物価が上昇すると、円の価値が下がりますので、円は売られやすくなり、円安が進んで行きます。

円安が進むということは、逆に外貨高(例えば米ドル高)になりますので、外貨はインフレに強いのです。

外貨投資でハードルが低いものというと、外貨預金や外貨MMFなどが挙げられますが、手数料や換金性の面などを考慮すると、外貨MMFの方が有利だと思います

1口10万での販売が予定されている物価連動国債

物価連動国債は一般的な国債とは違い、物価の上昇に合わせて、元金や金利が増えていくので、インフレに強いのです。

この物価連動国債は2016年から、個人でも購入できるようになりましたが、1口1,000万円程度からの販売になっているため、気軽に購入できません

そこで2017年2月から、1口10万で購入できるものが、販売される予定だったのですが、財務省から延期が発表されました。

いつ販売が開始されるかは不明ですが、お近くの金融機関で、1口10万円で物価連動国債が購入できるようになれば、インフレ対策として普及していくと考えられます

インフレで年金額が増えないという欠点のある個人年金保険

年金カット法案による公的年金の減額を、生命保険会社などが販売している個人年金保険で、補おうとする方もいるかと思います。

ただ一般的な個人年金保険は、将来に受給できる年金額が契約時に確定しており、たとえインフレになったとしても、年金額は増えないのです。

つまり個人年金保険は「物価の上昇で価値が上がる金融商品」という、年金カット法案の対策になる金融商品の要件を満たしておらず、他の金融商品と比較して、優先順位は低いと思うのです。


インフレ抑制で金利が上昇する可能性のある普通預金



インフレになると中央銀行(日本であれば「日本銀行」)は、政策金利を引き上げ、銀行の貸出金利や預金金利が上昇するように誘導します。

その理由として貸出金利が上昇すると、企業は設備投資を控えるようになり、また預金金利が上昇すると、個人は消費より預金にお金を回すようになり、お金の流通量が減るため、インフレが抑制されるからです。

そうなるとインフレになっても年金額が増えない個人年金保険より、インフレ抑制で金利が上昇する可能性のある普通預金の方が、年金カット法案の対策になるかもしれません

ただ現在の状況を見ると、すぐに日本銀行が政策金利を引き上げるとは考えられず、普通預金だけで年金カット法案の対策をするのは、難しいのではないかと思うのです。(執筆者:木村 公司)

この記事を書いた人

木村 公司 木村 公司»筆者の記事一覧 http://manetatsu.com/author/kkimura/

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。
【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種

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