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遺族年金の「男女差合憲判決」 今後、男女差は残っていくのか?

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遺族年金の「男女差合憲判決」 今後、男女差は残っていくのか?

平成29年3月21日に遺族年金の男女差について、法の下の平等を定めた憲法には違反しないという最高裁判決が出されたと報道されました。

この判決で皆さん気になるのは、

このまま遺族年金の男女差は固定されるのか? 

また、この判決で女性の進出が阻まれないか? 

と言ったところだと思います。


正確には地方公務員の遺族補償年金をめぐるもの

公的年金制度の男女差

遺族年金と言うと、思い浮かべるのは公的年金制度の遺族基礎年金・遺族厚生年金のことではないかと思います。

確かに、遺族厚生年金の受給要件としては死亡時に、

・ 妻を亡くした場合:55歳以上

・ 夫を亡くした場合:年齢制限なし

というのがあります。

遺族基礎年金については、平成26年3月までは「高校生相当年齢までの子がいる妻」という母子家庭の要件がありましたが、平成26年4月以降は父子家庭でももらえるようになりました

児童扶養手当も平成22年より父子家庭に支給されるようになっています。

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遺族補償年金の男女差

しかしこの判決でいう遺族年金とは、地方公務員が公務災害で亡くなった場合に遺族がもらえる遺族補償年金のことを指しています。

遺族補償年金とは一般的には労災保険から給付される労災年金ですが、公務員が公務上負傷した場合は、国家公務員災害補償法や地方公務員災害補償法に基づき給付されます。

地方公務員の場合は、地方公務員災害補償基金より給付されます。

地方公務員の遺族補償年金の受給資格も

・ 妻を亡くした場合:55歳以上もしくは一定の障害を持つ場合

・ 夫を亡くした場合:年齢制限なし

となっており、男女差があります。ちなみに原告は妻の死亡当時51歳で、妻は学校教諭であったという状況です。

民間の労災保険や国家公務員でも同様の年齢制限・男女差があります。

その後の動きはどうなるのか?


合憲判決は男女差があるという現実の表れ

合憲判決が出たのは、就労人口や雇用形態(正規・非正規)、平均賃金の男女差が現状でもあり、それに基づけば妻が亡くなって遺族補償年金が支給されないとしても生計維持できないとは言えず、このような男女差が不平等とは言えないと最高裁が判断したためです。

裁判所が判決を出す場合、法律やその解釈だけでなく社会通念を考慮することは珍しくありません。

女性も社会進出すべきという「理想」があり、それに基づいて社会も変わってきているものの、それでもなお男女差が残るという日本社会の「現実」の表れと言えます

もし現実に男女差があると言えない状況であれば、違憲判決が出ていた可能性もあります。

現状合憲でも法改正はありうる

法律は昭和40年代に成立したもので、要件は当時の状況に基づいています。

それ以降共働き世帯が増加しており、1審(大阪地裁)ではそれを踏まえて違憲判決を出しています。

遺族基礎年金や児童扶養手当に関しては現実に法改正されており、海外情勢にもあわせて要件を改正していく可能性は十分考えられます

また判決は、要件の男女差固定化までは認めていません

現状合憲になってしまうという問題意識から、国民をはじめ議員・有識者等が動くと考えれば、判決が男女差を固定化させるとは言えないと思います。(執筆者:石谷 彰彦)

《石谷 彰彦》
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石谷 彰彦

石谷 彰彦

1977年生まれ。システム開発会社・税理士事務所に勤務し、税務にとどまらず保険・年金など幅広くマネーの知識を持つ必要性を感じFPの資格を取得。行政非常勤職員や個人投資家としての経験もあり、社会保障・確定申告・個人所得税関係を中心にライティングやソフト開発を行う。近年は個人の金融証券税制に重点的に取り組み、上場株式等課税方式有利選択ツールを公開。お得情報の誤解や無知でかえって損をする、そんな状況を変えていきたいと考えている。 <保有資格>AFP・2級FP技能士・日商簿記2級 寄稿者にメッセージを送る

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