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約120年ぶりの大改正
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民法改正法案が平成29年5月26日の国会で成立しました。今の民法は明治時代に制定されて以後、戦後の親族・相続法改正以外は口語化されたくらいで、中身について大きな改正はされてきませんでした。
今回、実に約120年ぶりの大改正となります。改正された民法が施行される時期はまだはっきり決まっていませんが、今後私たちの生活やビジネスなどで広く影響が出てきます。
早いうちにその内容と今後への対策をしておくことが大事になります。
今回の民法で改正されたのは、主に
についてです。
今回の改正で、グローバル化など社会・経済の変化にも対応するとともに、内容についても私たち国民にもわかりやすいものとするために行われました。
改正された内容
かなり多くありますので、とくに私たちの生活に関係があり、影響がありそうな事柄を中心にいくつか取り上げてみたいと思います。
1. 消滅時効の期間の変更
「消滅時効」とは、一定の期間に権利が行使されなかったことで、その権利について請求することができなくなるというものです。
たとえば、AさんがBさんにお金を貸して、たびたび支払ってくれるよう求めていたものの、支払いがないまま一定期間放置していると、裁判を起こしたとしても支払いを求めることができなくなってしまいます。
今の民法では、債権の消滅時効は10年が原則で、消滅時効の起算点、つまりいつから消滅時効の期間がカウントされるかについては「権利を行使できるときから」とされています。
短期消滅時効
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また、それ以外に短期消滅時効といってそれよりも短い、1年~3年で時効にかかるものが職業に応じて発生するものとして、個別に定められています。
たとえば、
・ 塾の費用に関する債権は2年
・ 旅館の宿泊料は1年
などとなっています。
短期消滅時効は廃止
改正法では権利を行使できるときから10年間行使しないと時効で消滅する、という点は今の民法と変わりません。
しかし、改正法ではそれに加えて、債権者が権利行使ができることを知ったときから5年行使しない場合も時効消滅すると変更されています。
どちらかの時効期間が過ぎれば消滅時効となるとして、統一されました。それに伴い、上記の職業に応じて発生する債権の短期消滅時効は廃止されています。
時効期間が5年と短くなる場合が増える
この時効期間についての改正により、消滅時効の期間がこれまでは10年と考えれば良かったものについて、5年と短くなる場合が増えると考えられます。
そのため、とくに何かしら権利を請求する側にたつ場合には、以前よりも早く時効になったと主張されないように気を付ける必要が出てきます。
生命・身体の損害による損害賠償請求について
権利行使ができることを知ったときから5年間、権利を行使できるときから20年で消滅時効になるとの規定が新たに設けられました。
そのため、不法行為に基づく損害賠償請求でこれまで行ってきたものについても、上にあてはまるケースについては、
今の法律(被害者または法定代理人が損害及び加害者を知ったときから3年間または不法行為の時から20年間行使しないと権利行使が出来なくなる)よりも時効になるまでの期間が長くなります。
それによって被害者の救済を図っています。
以下の制度も新たに設けられました
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(1) 当事者が問題となっている権利について話し合い(協議)によって行うことを書面で合意すれば、合意があった時から1年経過したとき
(2) その合意で協議期間(1年に満たないものに限る)を定めたときは、その期間を経過したとき
(3) 当事者の一方から相手方に協議の続行を拒絶する内容の通知が書面でされたときは、その通知のときから6か月を過ぎたときのいずれか早いときまで時効が完成しない
というものです。
これは、お金に関して話い合いをしているが、なかなかまとまらないときでも、期間を気にして裁判を起こすというのがちゅうちょされる場合、腰を据えて交渉する上で利用するのも一つです。
もっとも話合いをしているうちに合意した期間がすぎる可能性もあるので、その対処も考える必要があります。
2. 法定利率
現行法では、法律上発生するものについての民事法定利率は年5%とされています。
しかし、とくにここ最近はマイナス金利になっていて、経済市場の動向を反映していないのではないかという指摘から、改正法では、
ことになりました。
具体的には、市場の金利と金額が離れてしまうことを防ぐため、見直しの際には、銀行が行った貸出平均金利の60か月の平均をみて決めるとされています。
これ以外にも
・ 賃貸借契約では、敷金に関する規定創設
・ 保証に関する改正
など、広く改正されていますので、機会を改めて触れていきたいと思います。(執筆者:片島 由賀)