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ROEとは?銘柄選定の新基準、東証の新株価指数について考える

コラム コラム
ROEを基準にした世界初の指数が東京証券取引所で作られるとの報道が先月末にありました。これを機会にROEについて会話形式で簡単にまとめたい。

【会話の登場人物】
・お金に詳しい先生
・勉強嫌いだけど“新しいもの”に敏感な女子生徒さん

生徒さん 「先生! 先月こんな記事を見かけたんですけど、本当なんですか?」↓

東京証券取引所は、東証株価指数(TOPIX)と並ぶ株価指数として、東証一部に上場する企業の中から高い利益を上げている上位300~500社の銘柄を選び、その時価総額の増減幅を指数化したものを年内にも新設する予定だ。

高い利益を判断する方法として、資本金をどれだけ効率よく使っているかを示すROE(自己資本利益率)と呼ばれる経営データをもとに対象銘柄を選ぶ。

東証によると、ROEを基準に株価指数を作るのは、世界の主要市場で初めて。
                                 (YOMIURI ONLINE より抜粋)

先生 「実際のところ本当かどうかはまだわからないよ。新指数を作ろうとしているのは事業計画書にもあるように本当なんだけど、基準をROEにするかどうかまでは決まっていないんだ。それにしても勉強嫌いなわりに目ざといね」

生徒さん 「それはもう。私、新商品はとりあえず買って食べる派なんで」

先生 「それで新しいものに釣られた、と。まあ、今後の動向しだいだけど、新しい注目材料にはなりそうだよね。私たち消費者もそうだけど、上場企業の方もROEを少なからず意識するように今後はなるだろうからね」

生徒さん 「ところで先生。質問なんですけど、このROEというのは、いったい何なんですか? 」

先生 「自己資本利益率と呼ばれているものだね。投下した資本に対して企業がどれだけの利益をあげているのか、それを表す財務指標だよ。数式で表せばこんな感じだね」

自己資本利益率(ROE)=当期純利益/自己資本(株主資本) ×100(%)

生徒さん 「う~ん、いまいちピンとこないですけど……なんか、この式って預金利回りに似てますね?」

先生 「なかなか鋭いね。そう、ROEは企業の利回りのようなものだ。当期純利益を利息に、自己資本を預金額を当てはめると解りやすいね」

生徒さん 「なるほど。それで、このROEはどのくらいあれば良いんですか? 」

先生 「業界によって違うんだけど、ROEはだいたい10%以上だと良いと言われている。ちなみに東京証券取引所が開示している資料によると平成24年3月期の東京証券取引所全銘柄の平均ROEは4.74%とされている。今は6%ほどじゃないかと言われているよ」

生徒さん 「目安は10%…と。ROEは高い方が良い指標なんですか? 」

先生 「そうだね、一般的には高い方がいい。だけど、残念ながら一概にそうは言い切れない部分もある。実は自己資本比率が鍵になるんだ。

  せっかくだし、さっきの預金の例えを借りてROEと自己資本比率の関係を話そうか。例えば、私の財布に10万円があったとしよう。これを預金したところ、5千円の利息がもらえた。税金は考えないことにしよう。この場合、金利は何%になるかな?」

生徒さん 「いきなり算数ですか? 5%ですね」

先生 「じゃあ、私が90万円の借金をして、それを加えて預金した場合、利息は幾らもらえるかな?」

生徒さん 「合計100万円で利率が5%だし、5万円になりますね」

先生 「そうだ。だけど、先生がの元手(自己資本)は10万円だ。10万円で5万円の利益を得たと考えた場合、金利はどうなる?」

生徒さん 「50%になっちゃいますね」

先生 「そうだね。じゃあ、そろそろ金利をROEに置き換えて見てご覧」

生徒さん 「ROEが本来5%のものが、借金をすることで50%になっちゃいますね」

先生 「そうなんだ。借金が多い企業はROEが高くなる傾向がある。それを見分ける手段が、この自己資本比率だ。この場合、100万円のうち10万円が元手(自己資本)だから自己資本比率は10%となる」

生徒さん 「なるほど。自己資本比率が低ければ、借金が多いわけですね」

先生 「そういうこと。自己資本比率は50%以上が望ましいとされている。でもこれは決して借金がよくないっていうわけじゃない。借金の返済利率が利回りよりも低ければ、利益が乗るからね。

  だけど、金利の上昇局面では、これが逆回転してしまう。これを難しい言葉で『財務レバレッジ』というんだけど、要は借金が良い悪いじゃなく、そういうバランスを考えた上で判断しなくちゃならないんだ。だからROEを見る場合はその見た目だけじゃなく、内面(自己資本比率)もチェックしないといけないんだよ。

  それでも、ROEという指標は海外じゃかなりもてはやされていてね。言うなれば『海外投資家好みの指標』なんだ。海外に比べ、日本企業のROEは低い傾向にあるんだけど、指数の基準とすることで企業全体がROEを見直す機運が高まるかもしれない。そうなれば、日本企業は海外投資家の興味を惹くことになり、株式市場全体が活気付くかもしれないね

生徒さん 「なるほど。そういうことも見越しての新指数の採用指標候補なんですね」

先生 「そういうこと。どうなるかはわからないけど、今後の動向には注目したいね」

生徒さん 「わかりました。私も彼氏を選ぶ際には見た目のROEだけじゃなく、自己資本比率も見なくちゃいけませんね。ところで先生? 先生の自己資本比率は低そうですが…」

先生 「……ほっといてくれないか?」

《石川 肇》
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石川 肇

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「銀行・保険会社・証券会社」で培った実務経験を活かし、金融商品の多角的な分析・説明を得意としております。金融商品といえば何か難しいイメージがあるかも知れませんが、そんなに身構えることはありません。ただ押さえておくべきポイント、ルールがあるのも事実です。「金融商品はよく判らないのでつい情報を鵜呑みにしてしまう…」そんな方には、そこで一歩立ち止まり思考を広げる、そのためのお手伝いができればと考えております。また、日頃から講演活動にも積極的に取り組み、「正しいことを面白く、そしてわかりやすく伝えること」を目標に研鑽を積んでおります。 <保有資格>:CFP、1級FP技能士、証券アナリスト検定会員補、証券外務員一種 寄稿者にメッセージを送る

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