老後資金はいくら必要か
平均寿命が伸びていることや将来の公的年金の支給水準の切り下げが予想されることなどから、必要な老後資金はいくらかということに関心が高まっています。
高齢者の平均的な年金額や収入額、生活費、臨時支出、何歳まで生きるか、趣味などのゆとりある支出などを考慮して一般的な老後資金の試算は様々な額が示されています。夫婦二人の場合2,000万円~3,000万円前後といった額が多いのではないでしょうか。
もちろん、個々人の状況や老後にやりたいことなどによって必要な老後資金の額は変わってきます。その必要額は個々人の状況に合わせてある程度試算することは可能です。しかし、その金額さえ用意できれば老後の備えはそれで万全でしょうか。病気や災害、介護など予想もしないことが起きるかもしれません。だからと言ってこれらすべてに備えようとしたらさらに多額の老後資金を準備しなければなりません。
貯蓄額よりも「貯蓄力」が大事
ここで65歳で退職し、セカンドライフのスタートを切ったAさん、Bさんの二人を想定してみましょう。Aさんは早くから老後資金のための貯蓄を始め1,500万円の貯蓄をし、退職金1,000万円と合わせて老後資金2,500万円を準備しました。一方、Bさんは貯蓄はほとんどできませんでしたが、幸い退職金を2,500万円もらいこれを老後資金に充てるつもりです。
Aさん、Bさんとも同じ2,500万円の老後資金を持っていますが、Aさんの方が老後資金が枯渇しない可能性が高いと思われるのではないでしょうか。それはAさんに「貯蓄力」があるからです。「貯蓄力」とは収入の範囲内で生活をし、さらにその収入の中から継続的に貯蓄をしていく力です。
Aさんはセカンドライフでも苦労なくこれまでどおりに収入(年金+貯蓄取崩額)の範囲内で生活をしていくことができるでしょう。今後は貯蓄をしなくてもよいのでその分家計は楽になります。
一方、Bさんは収入を使い切ってしまっていたわけですから生活のレベルをまず下げる努力をしなければなりません。毎月の赤字をボーナスで補てんしていたような家計では現役時代よりも低くなる収入の範囲内で生活していくことが大変になります。
老後資金の貯蓄額は多いに越したことはありませんが、継続して積み立ててきた貯蓄額がある程度あれば、後はそれまで培ってきた「貯蓄力」でセカンドライフを乗り切っていけるのではないでしょうか。(執筆者:犬山 忠宏)