筆者は、これまで年初の経済展望セミナーの中などで、新規株式公開についてもこだわり、言及して来ました。それは、「発行市場」と「流通市場」は有機的に関係していて、「流通市場」を占う意味でも、さらには経済の活力を図る目安としても発行市場としての新規株式公開について注目しているからです。
日本郵政グループ3社上場のインパクト
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そんなわけで当欄でも以前【
】と題して執筆していました。
そして、今回11月4日に日本郵政グループ3社(日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命)が上場となるわけ(これを書いている10月28日時点では未来形)ですが、3社を合わせた市場からの資金吸収額は約1兆4000億円ともいわれています。
この額は、なんと昨年のすべての新規株式公開をあわせた額を上回りますから、まさに超メガ上場というわけです!
さらに、公開時の3社合計の時価総額も14兆1450億円となる見通しで、これは1987年2月のNTT(18兆6732億円)に次ぐ史上2番目の規模になりそうです。
IPO投資は儲かるのか?
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それでは、はたして「儲かるのか?」という声が聞こえてきそうですが、1987年のNTT株以降今までの政府保有株の上場では、初値が売り出し価格を下回ったのはJTだけといったデータもあります。そしてそのJTも長期的には値上がりしていますので、今回の郵政グループの人気が底堅いのもうなづける話ではあります。
ちなみに筆者は今回2つの証券会社で申し込みましたが全部はずれました…。
そこで、今回のメガ郵政上場にちなんでここ直近4年の株式公開市場の公募価格と初値との関係に着目して考察してみたいと思います。
2013年は、同じく47銘柄中45銘柄(同値が1銘柄)、同勝率95,7%。
2014年は、同75銘柄中57銘柄(同値が3銘柄)同勝率76%。
今年はこれまでのところ59銘柄中51銘柄(同値が2銘柄)同勝率86,4%
となっています。この結果だけ見ると、やはり公募で入手出来ればかなりの勝率になっているように思います。
では、市場別に見てみるとどうでしょうか?
東証2部は、14勝 12敗 1分け、同勝率51.9%
東証ジャスダックは、23勝 2敗 1分け、同勝率88.5%
東証マザーズは、129勝 7敗 1分け、同勝率94.2%
となっています。
ここでは、ジャスダックとマザーズの好勝率が目立ち、明らかに新興市場有利の感も否めません。
それでは企業の規模別ですが、上場時の時価総額で見てみると、
100億円以上1000億円未満の企業は、 35勝 18敗 2分け、同勝率63.6%
100億円未満の企業は 138勝 6敗 2分け、同勝率94.5%
となっており、時価総額の小さい銘柄が好勝率になっているのが伺えます。ここまで見てくると、1000億どころか3社で15兆円ともいわれる郵政グループは分が悪いようにも見えます。
しかしいずれにしても、この考察はあくまで公募で入手し初値で売却するという前提ですので、(本来的ともいえる)長期投資の場合のパフォーマンスは、結局のところ、その銘柄の成長性や安定性にかかってくるのだと思います。
今回の3社は、高い成長性があるかといえば現時点では悩ましいとは思いますが、それぞれ抜群の知名度や配当利回りが比較的高いこともあり、中長期的に注目を集める可能性はあると考えております。今回のメガ上場も含めて、今後も引き続き、新規株式公開にも目配りしていきたいと思います。(執筆者:阿部 重利)