会社で働いている方は、多くの方は雇用保険に加入していると思います。
この雇用保険制度は、失業した時に受け取る「失業保険」や、失業した時に就職を促進する給付、自ら職業に関する勉強をするための教育訓練に関する給付であったり、育児や介護、高齢者になった場合に雇用が継続するための給付など様々な給付があります。
今回は、失業した時に受け取る「失業保険」について、流れやポイントを解説したいと思います。
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目次
必要な雇用保険への加入期間
失業した時に受け取る「失業保険」は、「基本手当」といいます。この「基本手当」を受給するためには、雇用保険の加入期間がある程度必要となります。その最低の加入期間は、離職時の理由によって異なります。
(1) 会社都合などの場合… 雇用保険に6か月以上加入
(2) 自己都合退職などの場合… 雇用保険に1年以上加入
受給手続きの流れ
「基本手当」を受給するためには、ご自身が居住している住所地の管轄している公共職業安定所(ハローワーク)へ求職の申し込みをする必要があります。
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(2) 求職の申込み…会社から送られてきた離職票やその他必要な書類等をハローワークへ提出します。また後日行う給付説明会で、受給資格者証を受領します。
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(3) 待期及び給付制限…「待期」は、求職の申込みを開始した日から失業している日が通算して7日間のことをいいます。この間は、支給対象となりません。「給付制限」は、自己都合などで退職された方は、待期満了後にさらに3か月間は支給されません。
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(4) 失業の認定…失業認定日ごとに受けることになります。(原則として4週に1回、直前の28日間の各日に行います。)その後、おおむね一週間程度で銀行口座に振り込まれます。
このように、「求職の申込み」から基本手当の受給手続き開始となります。そもそも、「基本手当」は、離職日(退職日)の翌日から1年間が受給期間となります。
少しややこしいですが、基本手当の支給を受けるための待期や給付制限は、離職日(退職日)からではなくこの「求職の申込み」日からになりますので、離職票がお手元に届いたらすぐにハローワークに行きましょう。
また、離職理由などや雇用保険の加入期間により、「基本手当」が支給される給付日数が各個人により異なります。(給付日数分しか「基本手当」は支給されません。)
基本手当が受給できる状態
雇用保険に加入している期間を満たしていても、基本手当が必ず受給できるわけではありません。「失業の状態」であることが必要となります。
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「失業の状態」とは
(a) 就職したいという積極的な意思
(b) いつでも就職できる能力(健康状態・家庭環境など)
(c) 積極的に求職活動を行っているにもかかわらず、就職できない状態
の(a)から(c)をすべての条件を満たした方のことを言います。
次のような方は「働く意思と能力」があるとは見なされず、原則として雇用保険の給付を受けることができません。
(2) 学業に専念する方(学校に通っており、すぐに就職が難しい)
(3) 家業に従事し、就職することができない方
(4) 自営業を開始、またはその準備を開始する方
(5) 次の就職先が決まっている方
(6) 会社の役員等に就任している方(就任予定や名義だけの役員の方も含む)
(7) 現在既に就職・就労中の方(パートや試用期間等を含む)
(8) 病気やケガでいつでも就職できない方
(9) 妊娠、出産や育児、親族の介護などすぐに就職できない方
(10) 定年を迎え、離職後すぐに就職を希望しない方
(11) その他の理由で求職活動を行わない方。
また、(8)から(10)の理由のよりすぐに就職できない場合は、受給期間の延長ができる場合があります。
「基本手当」は、離職日(退職日)の翌日から1年間が受給期間となりますが、受給期間の延長の申出をすると最大3年間は延長することができます。
なお、虚偽で基本手当を受給すると不正受給の対象になります。不正受給が発覚した場合、「不正受給した3倍の金額の返還」をしなければならなくなりますので注意が必要です。(執筆者:社会保険労務士 高橋 豊)