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「iDeCo(イデコ)ってなんか怪しい…」と思っていませんか? 制度の認知や利用がぜんぜん広まらない理由

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「iDeCo(イデコ)ってなんか怪しい…」と思っていませんか? 制度の認知や利用がぜんぜん広まらない理由

「イデコ」の登場は金融の世界をざわつかせた


先ほど「いでこ」を変換したら「井出湖」と出てきてしまった石川です(苦笑)

それはともかく、昨年からこのiDeCo(以下イデコ)のことは、我々ファイナンシャル・プランナー(以下FP)の間では「超」が付くくらい話題になっていました。

ご存じかと思いますが、イデコとは「個人型確定拠出年金」のことで、公的年金の上乗せである「自分年金」を作ることができる制度です

そして、一番のポイントとして、これほど税制面で優遇された「老後資産形成ツール」は無いとも言われてきました。

どんなすごい税制面でのメリットがあるか、おさらいしてみますと。

1. 掛け金が全額所得控除されるので、節税になる

2. さらに、運用益が非課税になり、税金のことを運用中は気にしなくてもいい

3. そして、受け取るときにも税制優遇がある(一時金は退職所得控除、公的年金控除)

こんなメリットを国が許しているわけですから、言い換えると、イデコを活用した「老後資産形成」を国がバックアップしているようなものです。

そんなわけで、さらに、FPの皆さんは舞い上がってしまいました。

「イデコを勉強して、たくさんのお客様に勧めないと!」

イデコ関連の書籍が出たら、自ら買い求めて知識習得に励み、イデコ関連のFP向けの勉強会・研修会はどれも盛会だったはずです。

そりゃそうです、これほどメリットのある制度に取り組むには、早いにこしたことはないからです。

「始めるなら、今でしょ!」(ちと古いか)

でも、温度差があるのも「イデコ」

ところが、そんな金融の世界のフィーバーとは全く正反対な、こんなニュースが流れてきたのです。

「確定拠出年金 個人型認知低く 利用希望も2割」(毎日新聞 2017.1.29 )

「いやいや、おかしいだろ、これは。トランプじゃないけど、フェイクニュースじゃないの!」

そう感じたFPさん、結構いたかもしれませんね。

だってあんなにイデコのメリットが、ニュースで報じられていましたからね。

イデコが、税制面から見ても優れた老資産形成の制度であることは間違いありませんし、デメリットの一つである「途中解約できない」ということも、老後資産形成のためならば仕方ない、と言えるでしょう

ですから、イデコが今一つ認知されていないという現実は、「金融の世界の専門家」にとって、認めがたい状況ではないでしょうか?

では、なぜこんなにもイデコへの認知が進まないのでしょうか?


ちょっと怪しさを感じてしまう「イデコ」待望論

私は某生命保険会社の個人代理店をしていたことがあります。

その某会社は、日本に初めて「がん保険」を持ち込んだあの会社です。

その会社の歴史を代理店さんは学ぶわけですが、がん保険の発売当初は、がん保険への理解は少なかったと聞きました

がん保険が日本に登場したころ、1970年代中頃は、死亡保険(終身保険など)が保険商品の主流だったと聞きます。

つまり「保険=死亡保険」の時代に、がん治療に備えましょうという「新しい理念」がなかなか受け入れられなかったのは、致し方ないと思います。

そして、この会社だけでなく、他の会社もがん保険や医療保険などを販売することになり、だんだんと、がん保険に代表される「第三分野」の保険が認知され、さらに商品競争を生み、より認知が進んでいきました。

そういう流れがあったからこそ、「がん保険などの第三分野保険が必要なのか?」という議論が自然になされてきました第三分野の保険が必ずいるという事ではありません

つまり「その商品の必要性の背景が議論されて、その結果、商品の要不要を判断をする機会が生まれたからこそ、何年もかけて、少しずつ、その商品の一般化が進んできた」のです

「まずはイデコありき」になってしまった

では、イデコの場合はどうでしょうか?

イデコの素晴らしさが唐突に、いっせいに、発信され始めました。

多くの有名なFPさんが「老後資産形成の切り札」的な記事を書き、「まずはイデコありき」と謳っているように、世間一般では見えてしまうのではないでしょうか?

ですから「イデコを始めないなんてもったいない!」という発信に怪しさが感じられてしまい、その結果「投資はめんどくさい」、「運用で損したくない」という、個人的な感覚だけが広がってしまったのではないかと思います。

そして、「過剰に熱くなったFPと、極めて冷めている消費者」という構図に発展してしまっているのかもしれません。

「イデコの良さ」を語る前に、まずはこうありたい!


では、どうすれば、この魅力的な「イデコ」が広く認知されるのでしょうか?

私はまず「ライフプランニングの視点から、老後資金の必要性を確認する」という、まさに初歩の初歩から始めるべきだと思います。

「老後資金形成の必要性」に触れないで、「税制面でのメリットの多いイデコを始めよう!」と発信してしまうと、それは「まずはがん保険に加入しないと!」というような、乱暴な理屈と同じになってしまう気がするからです。

なぜならば、イデコは「節税するためのツール」ではなく、節税効果を享受することができる「老後資産形成の一つの方法」に過ぎないからです

現在のイデコ切り札論では、この「節税」の部分だけに焦点が当たり、その必要性の背景には触れられていない事も多いと思います。

「老後資産つくりは誰にでも必要である。そしてその方法にはいくつかある。その中でイデコにはこうしたメリットがある」

この説明を、順序を守り、端折るのではなく、丁寧に説明すれば、自然にイデコの認知はあがってくると思います。

イデコの魅力だけを語るのをやめて、「イデコなどで、老後資産形成することの意義」をまずは語り、最後に「イデコの魅力」を話す専門家が増えることを期待しています。(執筆者:石川 智)

《石川 智》
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石川 智

石川 智

FP事務所オフィス石川 代表 1966年高知県生まれ。トヨタ系販売店~外資系保険会社を経て、2010年独立起業した。一般的な相談業務とともに「高齢者とお金」「障害者とお金」などの講演会で高知県内外で講師を務めている。また国の事業である「生活困窮者自立支援事業」での家計相談を、高知県内の市町村で担当し、福祉FPとして活動中。今後の目標は高知県内で金融リテラシーを普及させることと、様々な分野にFPの技法を活かすこと。メディア出演歴は高知放送「こうちeye」テレビ高知「テレッチのたまご」など。 <保有資格>:AFP認定者 2級ファイナンシャル・プランニング技能士 生命保険・損害保険・少額短期保険募集人資格 終活アドバイザー 寄稿者にメッセージを送る

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