※本サイトは一部アフィリエイトプログラムを利用しています

注目記事

2024「新NISA」スタート 株価が落ち続けていた時代もあることを忘れずに

投資 株式投資
2024「新NISA」スタート 株価が落ち続けていた時代もあることを忘れずに

1月から、いよいよ「新NISA」がスタートします。

投資初心者を巻き込んでのブームでは、近年にない盛り上がりを見せています。

ネット証券大手のSBIホールディングスや楽天証券などでは、すでに1,000万口座を超えているようで、1人1口座しか持てないことを考えると、大変なことになっているという感想を持ちます。

確かに、今あるNISAに比べたら、商品性も使い勝手も格段に良くなっています。

「マネーの達人」でも、山のように「新NISA」は素晴らしいという記事が出ているようなので、具体的な商品性や使い勝手はそちらをお読みいただくことにして、私は、あえて「新NISA」に、なけなしの虎の子をつぎ込んでいいのかという観点から記事を書きます。

「損」には弱い

「値上がり」すればバラ色だが、「損」には弱い。

「新NISA」は、「値上がりしても、税金を払わなくていい」というのが大きな魅力。

ただ、「値上がり」ばかりが宣伝されていて、「じゃあ損したら?」という観点が、往々にして抜け落ちている。

金融機関も、「損」を前提にした話はしません。

投資の手法の1つで、「ナンピン」という方法があります。

たとえば、100万円の株を買ってこれが50万円になってしまったら、さらに100万円買えば、200万円で3株買ったことになり、取得コストは約67万円になります。

この株が、さらに30万円になってしまったとしたら、90万円で3株買えば、トータル290万円で6株持てますから、1株あたりのコストは約49万円。

つまり、株価が49万円以上になると、利益が出ます。

ただ、「新NISA」では、1年間に240万円までしか株を買うことはできないので、同じように「ナンピン」で取得コストを下げようと思っても、230万円で4株しか買えない

この場合、株価が58万円以上にならないと、利益が出ないということです。

しかも、「新NISA」では、240万円の枠いっぱいにすでに金融商品を買っていたら、その年はどんなに株価が下がっていても、買うことができません。

これでは、株式投資の自由度があまりに低いということで、「新NISA」のほかに普通の証券口座を持つという人もいるでしょうが、そうなると、「損益通算ができない」「損失繰越ができない」などのデメリットも出てきます。

直近10年を基準に「長期投資」が語れるのか?

「新NISA」では、思い込みによるデメリットも大きくなりそうです。

なぜなら、政府が全力を挙げて「長期投資」なら資産がどんどん増えていくと宣伝をしているからです。

金融庁の「NISA特設ウェブサイト」には、「資産運用シミュレーション」という「NISA」で積立をしていくと将来いくらくらいになるのかということを計算するものがあります。

これをやってみると、いくら積み立てれば将来どれくらいになるのかということが表示されるもので、たぶん投資初心者が見たら、すぐにでも「新NISA」を始めなくてはと思うことでしょう。

「NISA」で積立をしていくと将来いくらくらいになるのか

≪画像元:金融庁 NISA特設ウェブサイト

けれど、実際の投資がそんなにうまくいとはとても思えません。

「新NISA」なら、右肩上がりで増えて行くという根拠には、ここ10年ほどの日経平均の上がり方にあります。

ここだけを切り取って、あたかも30年先まで日経平均が上がり続けるような幻想を振りまいていますが、今から約30年前の日経平均は約4万円

10年間で半分の2万円になり、その約10年後の2009年3月には7,054円とさらに半値になっています。

「長期投資」と言いながら株価が落ち続けていた時のことを拭って、上がっている直近10年のデータしか提示しないのは、ミスリードと言えるのではないでしょうか。

≪画像元:日本経済新聞≫

金融庁がお墨付きを与えた金融商品ではない。

「新NISA」は、扱える投資信託や信託報酬の基準などを、金融庁が厳しく定めています。

これが金融機関にとって、「国が勧めるのだから大丈夫」的な売り方になっているということは覚えておいたほうがいいでしょう。

国の基準で選ばれている「新NISA」の商品は、信託報酬が0に近いインデックスファンドから外債などを組み入れた信託報酬が約1.5%というアクティブファンドもあります。

たぶん、金融機関はインデックスファンドよりも信託報酬の高いアクティブファンドを勧めるでしょう。

また、悪名高い「毎月分配型」は商品としては除外されましたが、隔月分配型は除外されていません

こうしたものを「国が選んだ商品だから間違いがない」と素人向けに売ると、相場がどんどん上がっていればいいですが、下がったら、目も当てられない状況になる可能性があります。

ちなみに、世界の相場は、明日どうなるのかもわからない不安定な状況にあり、アブ、再建、為替ともに長期的な見通しなど立てられない。加えて、日本の株式相場は、日銀が大株主といういびつな官製相場。

こうしたなかで、「長期投資だから安心」というのは、私には、無責任な言葉に聞こえるのです。
《荻原 博子》
この記事は役に立ちましたか?
+17
荻原 博子

執筆者:経済ジャーナリスト 荻原 博子 荻原 博子

経済ジャーナリスト 1954年生まれ。経済事務所勤務後、1982年からフリーの経済ジャーナリストとして、新聞・経済誌などに連載。女性では珍しく骨太な記事を書くことで話題となり、1988年、女性誌hanako(マガジンハウス)の創刊と同時に同誌で女性向けの経済・マネー記事を連載。難しい経済やお金の仕組みを、生活に根ざしてわかりやすく解説し、以降、経済だけでなくマネー分野の記事も数多く手がけ、ビジネスマンから主婦に至るまで幅広い層に支持されている。バブル崩壊直後からデフレの長期化を予想し、現金に徹した資産防衛、家計運営を提唱し続けている。新聞、雑誌等の連載やテレビのコメンテーターとしても活躍中。「私たちはなぜ貧しくなってしまったのか」(文藝春秋)「一生お金に困らないお金ベスト100」(ダイヤモンド社)など著書多数。 寄稿者にメッセージを送る

今、あなたにおススメの記事