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DNA親子鑑定、本当にあった悲劇の実話

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DNA親子鑑定、本当にあった悲劇の実話

 さて今年の上半期も、いろいろな話題がありましたが、最も世間を騒がせたのは、何だったでしょうか? 例えば、元・光GENJIの大沢樹生さんの親子鑑定の騒動ですね。彼は女優の喜多嶋舞さんと結婚し、子供を授かったのですが(すでに夫婦は離婚)、離婚した後、「本当に自分の子なのか」と疑い始めたのが事の始まりです。

 結局、自分と子供をDNA鑑定するに至ったことが諸悪の原因です。しかも、その鑑定の結果が黒(親子ではない)だったので、余計に問題が大きくなったのです。

 DNA鑑定書の真偽はさておき、世論的には「大沢氏がわざわざ鑑定し、子供を傷つけたのは許せない」という否定派と「いやいや、根本的には元妻(喜多嶋舞さん)が隠し続けのが悪いし、許せない」という肯定派と真っ二つに分かれたのは、なかなか興味深いですね。

 「本当に俺の子なのか」

 そんなふうに疑念を抱くのは、芸能人に限った異例中の異例ではなく、一般人でも起こり得ることで、特に離婚の場面では、「DNA鑑定しようかどうか」を迷う男性は増えているのです。

 「長年育ててきた子供は可愛いけれど、でも、本当のところを知りたい。」

 そこで今回、実際にDNA鑑定を行い、「黒」(親子ではない)だったケースを過去の相談実例のなかからご紹介しますので、参考になさってください。

DNA親子鑑定、悲劇の実話

 「この度、先生の著書『男のための最強離婚術』を拝見させていただきました。私も、この1年ほど離婚問題で悩んでおりまして、ぜひ、先生のアドバイスをいただければと思います。」そんなふうに著書をきっかけに相談しに来た彼。

 彼にはちょうど6歳の子供がいたのですが、本当に可愛い年頃なのに、妻が子供を連れて、実家に帰ってしまったそうなのです。自宅から実家までは、車で1時間ほど。彼が不在の間に連れ出すのが不可能な距離ではありません。一体、何があったのでしょうか?

 彼は結婚のときまで遡って、話をしてくれました。「私は6年前、妻と結婚したのですが、いわゆる『できちゃった婚』でした。そして結婚した年に子供が産まれたのですが、その子は私の子ではないのは明らかでした。なぜなら、私も妻もO型で、子供はB型で、あり得ない組み合わせだったのです。」そうやって苦虫を噛み潰しながら、何とか言葉を搾り出す彼。

 今思えば、妻は彼と交際する前に、交際している男性がおり、彼と付き合い始めた後も男性と二股をかけていたようで、はっきりと断定はできないけれど元彼の子ではないかと言うのです。

 「自分の子でなかったことが、とてもショックで、思わず、離婚しようと思いました。しかし、子供に罪はないのです。子供のことがかわいそうになり、結局、育てていくことにしました。」

 彼にとって、子供はとても「かわいい存在」で、「お父ちゃん」と慕ってくれたそうです。彼は次第に感情移入していき、実の子として接することにしたのです。

 しかし、妻は彼の気持ちを察しようとせず、あろうことか、元彼(子の父親)とメールのやり取りをしていたようで妻の方から何度となく「別れて欲しい」と言ってきたようなのです。

 今現在、妻と元彼がどうなっているのか定かではありませんが少なくとも、子供が産まれてから、1,2年は関係が続いており、彼は二重にも三重にも、心を傷つけられるハメになったのです。そして子供が3歳になり、保育園に預けることができるようになったので妻はパートに出るようなったそうです。

 本来なら毎日17時に、保育園に迎えに行かなければならないのですが、妻は19時まで平気な顔で働き、保育園へのお迎えをサボり始め、保育園からクレームが届き始めたのです。

 彼が妻を問い詰めたところ、悪気もなく「仕事が忙しいから」と言うのですが一方でパート先に確認すると、「17時であがったはず」と言い、明らかに言い分が食い違っているのです。

 結局、彼が早退したり、祖父母に頼んで、子供を迎えに行くのですがそんな状態が2年ほど続いたせいで、彼も祖父母も、ついに我慢の限界を超えてしまい、彼、両親、妻が一同に会する場を設けるに至ったのです。妻が出て行ったのは、その話し合いの直後だったそうです。

 「私も少し言い過ぎたかもしれません。ただ、家庭より子供より、パートを大事にしようしとしたこと。親戚中と振り回したこと。そして何より、妻が全く反省せず、何も変えようとしないこと。どうしても許すことはできませんでした。」

 「後から気付いたことですが…」彼はそう口にすると、過去のことを振り返ってくれました。「妻はもともと自律神経失調症やパニック障害の病気を持っており、こっそり通院していたようです。妻が出て行く前も、不眠や頭痛に悩んでいたようで、いわゆる『うつ』状態だったと思います。

 私は妻のパート先に事情を話し、『診断書を提出するから、妻を辞めせて欲しい』と頼み込んだのですが妻本人が『働きたい』と断固反対するので、結局、今でも同じ職場で働き続けているようです」

 しかし、妻が出て行った後、何もしなかったわけではなく、できる限りの手は尽くしたようです。

 例えば、休日は妻と子供の3人で、食事や買物をする、映画を見に行く、プレゼントを渡すなど小さな接点ですが、妻子との関わりが消えてしまわないよう、努力を続けてのです。

 そして妻に気持ちが通じたのか、別居から半年後、妻が「子供と3人でアパートに暮らしたい」と言ってきたのです。結婚から別居までは彼の実家に暮らしていたのですが、そのことも妻のストレスの原因だったのかもしれません。

 「やっと帰ってくてくれる!」

 彼はそのことを大変喜び、すぐにアパートの契約をしたのですが、妻に入居日を尋ねたところ、いきなり手の平を返すかのごとくとんでもない返事をしてきたのです。「やっぱり一緒に暮らしたくない。離婚して欲しい」と。

 さすがの彼もいい加減、堪忍袋の緒が切れたようで、もはや離婚に反対する気力は残っていませんでした。また子供が小学校に入学するタイミングなので、これ以上、宙ぶらりんな生活を続けこの件を長期化させるわけにはいかないという事情もあったようです。

 確かに子供とは血がつながっていません。しかし、彼は子供のことを可愛がっており、今まで、いろいろなところに遊びに行き、楽しい思い出が残っているので最後は「子供のために」離婚する決心をしたのです。

戸籍の父親欄は「空欄」になる

 しかし、彼のケースは、ただの離婚ではありません。「ただの離婚」だって、慰謝料や財産分与、年金や保険などで揉めに揉めるのに、今回の場合、「子供をこのまま『自分の子』にしておくべきかどうか」という非常に難しい、難しすぎる問題に直面せざるを得ないのです。

 離婚と同時に「自分の子」ではなくなるのなら、もう少し、話は簡単です。ただ、実際のところ、何の手続もしなければ、妻が親権者、彼は非親権者となり、子供に対して養育費の支払義務、面会を求める権利、そして子供には相続権が発生します。

 これは「ただの離婚」と同じなのですが、それは嫌なら、子供との縁を切らなければなりません。具体的には家庭裁判所に「親子関係不存在の訴え」を申し立て、彼と子供がDNA鑑定をしその結果、「親子ではない」という鑑定結果が出れば、裁判所がその職権で戸籍を修正するという流れです。

 今までの戸籍は、彼と子供が親子だったけれど、「親子だ」という記述は削除され、また子供の戸籍の父親欄は「空欄」になるのです。

 このように彼にとっても、子供にとっても人生を左右するほどの大問題なのですが、彼はどのような決断をしたのでしょうか?

 「子供の将来を考えて、迷いに迷ったのですが…露木先生のおっしゃる方法で親子の縁を切ることに決めました。」

 彼は「産みの親」と「育ての親」をはっきりさせることを選んだようです。もちろん、血のつながりを重視するという意味で、おかしなことではないのですが。とはいえ、気持ちのつながりに目をむけると、なかなか複雑でもどかしい部分も多いのです。

 もう少し、彼の話を聞いてみましょう。

 「息子は自分のことを実の父親だと思い、慕ってくれたので、当然、断腸の思いでした。しかし、妻が自分に対して、裏切り続けたことを思うと、やはり憎いことは憎いのです。そんな性格の妻ですから、息子のことを曖昧にしておけば、あとあと揉めるのは確実ですし、もし、今でも本当の父親とやり取りがあるのなら、息子もそっちに行った方が最終的には幸せになれるだろうし、きっと私のことを忘れてくれるでしょう。そう願いたいのです! それはそれで私は立ち直れないかもしれませんが…」

 彼はそんなふうに苦しい胸のうちを明かしてくれました。苦渋の決断だったことがひしひしと伝わってきて、聞いているこちらも胸が苦しくなりますね。

 さて、彼は子供との血縁関係を明らかにする道を選んだのですが、具体的には家庭裁判所に対し、「親子関係不存在の訴え」を申し立てる必要があり、それに伴い、細かい手続についての相談が続きました。

 「こういう経緯なので、お互い、お金のやり取りをしないことで決着できそうですし、おかげ様で離婚はすんなり決まりそうです。先に離婚届を出して、妻側に子供の親権を移しその後で『親子関係不存在の訴え』を行えば良いのでしょうか?」

 具体的にいうと、離婚前に親子関係を取り消すと、その時点で親権者は夫婦2人から、妻1人に切り替わります。その状態で離婚する場合、離婚届のなかで親権者を選ぶ必要はなく、自動的に「妻が親権者」となります。

 一方、離婚後に親子関係を取り消す場合、その時点ではまだ、彼は子の父親なので、親権を持っています。ですから、離婚届のなかの「親権者の欄」には、妻の名前を書かなければなりません。

 どちらにしても、最終的には親子関係を取り消すのだから、結果は同じなのですが、手続の難易度がやや異なります。これはどういうことでしょうか?

 離婚前なら、妻は早く離婚したいがために、すんなりDNA鑑定の手続に協力するでしょう。一方、離婚後ですと、元夫と連絡をとりたくないがために、裁判所に出頭しなかったり鑑定に協力しなかったり、子供を鑑定機関に連れて来なかったり、不誠実な態度をとる可能性があります。

 もちろん、妻としては、早く本当の父親を「本当の父親」にしたいのでしょうから最後には観念するでしょうが、せっかく離婚できたのに、また妻に振り回されるのでは何をやっているのか分かりません。ですから、やはり、面倒なことは離婚前に綺麗さっぱり済ませておくのが賢明です。

 彼は追加でこんな質問をしてきましたが、それに対するアドバイスは、上記の内容で事足りるでしょう。

 「もし、親子関係不存在の訴えをしている最中に、離婚届を出すのはあまり、望ましくないのでしょうか? と言いますのも、子供は4月から小学校にあがるので、できれば、4月までに離婚届を出し、住民票を移動させたいのです。親子関係不存在の訴えが終わるのは3ヶ月後という話でしたので、4月までに間に合いそうもありません。とりあえず、DNA鑑定まで済ませておき、3月中旬くらいに離婚届と転居届を出してしまい5月頃に親子関係不存在の訴えが終わるという流れでもよろしいでしょうか?」

 そして最後の最後ですが、彼はこう言い残し、相談を終えたのです。

 「このような相談をしなければならないこと自体が本当に悲しいです。だって何の罪もない、可愛い子供を傷つけてしまっているのだから。とても辛いです。」(執筆者:露木 幸彦)

《露木 幸彦》
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露木 幸彦

露木 幸彦

露木行政書士事務所 代表 1980年生まれ。国学院大学・法学部出身。金融機関の融資担当時代は住宅ローンのトップセールス。離婚に特化し行政書士事務所を開業。開業から6年間で有料相談件数7,000件、離婚協議書作成900件を達成した。サイト「離婚サポートnet」は1日訪問者3,300人。会員数は20,000人と業界では最大規模にまで成長させる。「情報格差の解消」に熱心で、積極的にメディアに登場。読売、朝日、毎日、日経各新聞、雑誌「アエラ」「女性セブン」「週刊エコノミスト」テレビ朝日「スーパーJチャンネル」TBS「世界のこわ〜い女たち」などに取り上げられるなどメディア実績多数。また心理学、交渉術、法律に関する著書を数多く出版し、累計部数は50,000部を超え、根強い人気がある。 <保有資格>:行政書士、AFP 寄稿者にメッセージを送る

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