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トルコに資産を置き続けると「年に3.5%も目減り」する トルコリラ、新興国通貨の現状と展望

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トルコに資産を置き続けると「年に3.5%も目減り」する トルコリラ、新興国通貨の現状と展望

今回は、急落するトルコリラの現状と今後の注意点および、新興国通貨全体の現状について解説していきたいと思います。

トルコリラ、新興国通貨の現状と展望

急落する新興国通貨

コロナショックを受けて世界全体が超金融緩和に動くなかで、米国は政策金利ゼロ誘導を決定しました。

それを受けて新興国通貨はその水準を全体的に大きく切り下げています。

その中で特に不安定な値動きを継続しているのがトルコリラです。

その水準は2019年の30円台から半値の14円台まで急落しており、いまだ底の見えないという状況が継続しています。

では、なぜトルコリラだけがこれほど下落しているのでしょうか。それを理解するには、各国の実質金利の現状を把握する必要があります。

トルコリラ急落の要因

現在、トルコリラは14円台と過去最安値水準まで下落していて、市場のリラ安への不安は日に日に増し続けています。

では、なぜこれだけリラ安が進んでしまったのか。それはリラの実質金利が他国と比べて極端なマイナス金利状態となっているためです。

実質金利は、名目金利から物価上昇率を引くことで求められ、その計算式は次の通りです。

実質金利 = 名目金利 ‐ 物価上昇率

ここで言う名目金利とは「政策金利」のことを指します。

現在のトルコの政策金利は8.25%まで引き下げており、それに対して物価上昇率が11.76%と異常な水準で推移しています。

トルコの現在の実質金利はマイナス3.5%であり、他の主要新興国の実質金利がほぼマイナス1%以下であるのに対して異常な水準を維持しています。

つまり、トルコに資産を置き続けると1年間3.5%も目減りしてしまうということです。

米国でさえ実質金利がマイナス0.6%であり最大マイナス2%ほどになる可能性が市場で囁かれているなかで、これだけ金利がマイナスであるとトルコに通貨を置いておくほど不利になります。

そこにコロナショックによる経済不安が重なってしまったため、リラに対する信用不安はさらに拡大しました。

株、為替、債券全ての金融資産に資金が回らなくなる事態になっています。

1年間3.5%も目減りする

エルドアン大統領は利下げ姿勢を崩さず

2019年のリラ急落時には中央銀行は自国通貨を守るために政策金利を24%まで急上昇させ、自国通貨の安定化に努めました。

しかし、異例の緊急利上げだったためにその金利はすぐに引き下がり、今回のコロナショックもあって現在は8.25%までその金利は引き下げられています。

これは、エルドアン大統領が「物価が高いのは政策金利が高いから」として、利下げすることによってそれを抑制できると考えているからです。

そのため、もともとの強権的な性格もあいまって、自分の意向に沿わなかった当時の中銀総裁を更迭するという異例の事態となりました。

しかし、物価上昇は短期間に起きたトルコリラ急落による輸入品の価格上昇が原因であり、これを抑制するためにはリラ高に誘導する必要があります

そのためには、前述した実質金利をプラスにしなければなりません。

仮に、エルドアン大統領が主張するように政策金利を引き下げて物価上昇率が低下する可能性があるとしても、それが低下するまでにはある程度の期間を要するため、すぐに効果が表れるわけではありません。

この通貨安をすぐにでも改善傾向に持っていかなければいけない状況下で即効性を求めるのならば、政策金利を引き上げた方が手っ取り早く、それを市場関係者は広く望んでいます。

しかし、エルドアン大統領と中銀との溝が深いなかで、現状を打開するのは容易なことではありません。

政策金利は据え置き

8月20日に行われた政策決定会合では、市場の期待を裏切って金利据え置きが発表されました。

市場では物価上昇率が12%近くまで上昇していることから、5%の利上げなどが望まれていました。

しかし、エルドアン大統領が利下げを望み続けているため、中銀はその意向に反することができませんでした。

前述したように、過去にエルドアン大統領は自分の意向に反して緊急利上げを実行した中銀総裁を更迭しています。

そのため、中銀はそれを恐れて強気な行動に出られません。

さらに、通貨防衛のための外貨準備高も減少傾向にあるため、いよいよ策が限られてきています

その結果、トルコリラは14円台で推移しており、仮に14円を割り込んでくると下値の抵抗ラインを下回ってしまうため、さらにそのレンジを切り下げてしまう可能性があります。

米国の利上げ動向も注視

現在の新興国通貨安の度合いを見極めるためには実質金利の水準および外貨準備高の推移を見る必要があります。

コロナショック下でこれが極端に悪化してしまうとさらなる通貨安になる可能性が拡大するため、その変化には十分に注意しておく必要があります。

また、米国の利上げ時期にも注意しておく必要があり、前回の利上げ同様に通貨安を助長する可能性があります。

市場関係者の間では「米国の物価上昇率が2%に達しないと利上げはしないのではないか」との考え方もありますので、その変化率にも注目しておいたほうがよいことでしょう。(執筆者:現役証券マン 白鳥 翔一)

《白鳥 翔一》
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白鳥 翔一

白鳥 翔一

大学院にて化学を専攻し、現在某証券会社にて働いている現役の証券マンです。周りに流されない独自の投資理論で営業活動をしており、そこで得た経験を生かしてライターとしても活動しています。 寄稿者にメッセージを送る

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