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労働市場改善で早期利上げ観測が膨らむ米国

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労働市場改善で早期利上げ観測が膨らむ米国

 20日、米連邦準備制度理事会(FRB)が、7月29日~30日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)の議事録を公表しました。

 「社債投資まとめ!」でチェックしている外国債券全般に大きな影響のあるイベントですので、要点を整理しておきます。(※議事録へのリンクは最下部”外部参照”に掲載)

連邦公開市場委員会(FOMC)議事録のポイント

 連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、直近の労働市場の改善に関して、以下のような評価をしています。

Participants generally agreed that both the recent improvement in labor market conditions and the cumulative progress over the past year had been greater than anticipated and that labor market conditions had moved noticeably closer to those viewed as normal in the longer run.
[抄訳] 労働市場の状況はここ1年間の改善が予想以上であり、長期的に正常とされる水準に著しく近づいたことに総じて同意した

 米国の失業率はリーマンショック後の2009年10月の10.0%をピークに改善しつつあり、2014年6月には6.1%まで改善しています。 失業率改善が賃金上昇につながれば、インフレ率上昇に結びつくため、米連邦準備制度理事会(FRB)としては利上げなどによって現在の金融緩和を収束させていくことになっていきます。

 実際、今回の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では、早期利上げの可能性を示唆するような文言が入っています。

Moreover, many participants noted that if convergence toward the Committee’s objectives occurred more quickly than expected, it might become appropriate to begin removing monetary policy accommodation sooner than they currently anticipated.
[抄訳] 多くの参加者は、委員会の目標に向けた収束が予想より速いペースで起きた場合、金融政策による緩和措置を現在見込まれているよりも早期に引き揚げ始めることが適切になる可能性があると指摘した

 しかし、連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では同時に、労働市場の改善はまだまだ予断を許さないという見方を示しています。

However, many participants continued to see a larger gap between current labor market conditions and those consistent with their assessments of normal levels of labor utilization than indicated by the difference between the unemployment rate and estimates of its longer-run normal level.
[抄訳] しかし、多くの参加者がなお労働市場の現状と、労働力の活用において参加者が正常だと判断する水準に一致する状況との間にはより大きな隔たりがあると考えている

 米連邦準備制度理事会(FRB)は、2012年12月から2014年3月までの間、「インフレ率が2.5%を下回る水準にとどまるとみられる限り、失業率が6.5%に低下するまで利上げを検討しない」とするフォワードガイダンスを採用していました。

 現在では、労働市場の回復度合いを測る指標としては失業率だけでなく幅広い指標を検討すべきとして、明確な失業率目標は設定されていませんが、失業率が引き続き重要な指標として見られていることは確かです。

 たとえば、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長は2014年4月の講演で、政策当局者が完全雇用の推計として示している5.2-5.6%に言及しています。失業率が6%を切ってくるような水準まで改善していけば、利上げに向けた環境はだいぶ整ってくるのではないかと思います。

 利上げ開始時期の見通しについて、連邦公開市場委員会(FOMC)議事録では以下のように言及されました。

However, most participants indicated that any change in their expectations for the appropriate timing of the first increase in the federal funds rate would depend on further information on the trajectories of economic activity, the labor market, and inflation.
[抄訳] ほとんどの参加者は、初回利上げの適切なタイミングに対する期待におけるいかなる変更も、経済活動や労働市場、物価上昇率に関する今後の動向次第と指摘した。

 今回の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録は、概してタカ派(利上げ積極派)的な要素が強いと受け止められていますが、米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長はハト派(利上げ慎重派)と認識されています。実際に利上げに踏み切るまでには、もう少し実体経済の改善傾向が明確になり、連邦公開市場委員会(FOMC)内での意見が集約されていくまで時間がかかりそうです。

米連邦準備制度理事会(FRB)はいつ利上げするのか?

 連邦公開市場委員会(FOMC)議事録の内容を受けて、マーケットでは早期利上げの可能性が高まったという見方が強くなっています。

 米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ時期についてマーケットがどのように予測しているかは、30 日物フェデラルファンド金利先物(FF 金利先物)によって理解することができます。具体的には、米先物取引所大手のCMEグループが公表しているFed Watchで確認することができます。

 8月21日時点のデータでは、来年予定されている米連邦準備制度理事会(FRB)のタイミングでの利上げ確率については、2015年6月で45.0%、2015年7月で68.5%と予想されていますので、来年夏頃に利上げされるという予測が大勢を占めています。

米国利上げの個人向け社債に対する影響は?

 今回の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録は、短期的には為替相場・株式市場・債券市場等に影響はあるでしょう。より中期的に考えて、今回の連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が指し示すような米国の金融緩和政策の収束は、特に外国債券に対してどのような影響があるのでしょうか。

 米国の金融緩和収束の、特に外国債券に対する影響としては、

(1)米国の長期金利の上昇にともない、米ドル建て債券の金利が上昇する
(2)ドル高が進み、米ドル建て債券の円ベースでの価値が上昇する。
(3)米国の金融緩和が縮小することで、リスク資産からの資金引き上げが起こり、新興国通貨が下落し、新興国債券の円ベースでの価値が下落する

といった可能性が想定されます。

 米国の利上げ自体は、よほどインフレ率が急激に悪化しない限りは小幅に留まると考えられますので、中期的にドル高基調が予想される中では、条件の良い米ドル建て債券があれば比較的投資しやすい状況にはなっていると言えそうです。

 また、資金調達側の都合でいえば、利上げが予想される中では、少しでも金利が低い今のうちに資金調達しておいた方がいいはずなので、今後1年間くらいは米ドル建ての個人向け社債の発行が増えるかもしれません。

 一方で、新興国債券に対する投資は、経済状況の悪い新興国通貨は下落リスクを意識して、投資する通貨は慎重に選ぶ必要がありそうです。特に「フラジャイル・ファイブ(脆弱な5通貨)」と呼ばれる、ブラジルレアル、インドルピー、インドネシアルピア、トルコリラ、南アフリカランドは、外国資金に対する依存度が高く、米連邦準備制度理事会(FRB)の量的緩和縮小に伴って下落が進みやすいため注意が必要です。(提供:社債投資まとめ!)

【外部参照】
Minutes of the Federal Open Market Committee (July 29-30, 2014)

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