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相続対策の命綱は不動産の現状分析をしっかりおこなうこと

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相続対策の命綱は不動産の現状分析をしっかりおこなうこと

 今年1月からの相続税基礎控除額減額改正に伴って相続増税…相続増税…とTVや週刊誌等、各種メディアにとりたてられています。相続増税に備えての相続税対策としての生前贈与を特集している専門誌も発刊されました。

遺産分割が重要な理由

 一言で相続対策といっても、将来の相続税を軽減する節税対策ばかりでなく、むしろ重要なのは遺産分割であり、そして納税を考えた対策でなければなりません。

 以前のコラムでも申し上げましたが、相続税には一定の要件もとに相続税の負担を下げられる特例規定が設けられています。配偶者の税額権限や小規模宅地等の特例、農地や非上場株式等の納税猶予、等々…。この合法的に相続税を下げられる特例は、相続税の申告期限までにその特例を受ける相続財産が相続人間で分割協議がまとまっていないと適用ません。結局、遺産分割でもめてしまうと、そもそも論としていかにして相続税対策を練っていたとしても相続税は軽減出来ないということになりかねません。

 このように、相続対策は遺産分割の方法を考えながら相続税の税額をシミュレーションしてその相続税をいかにして納税するかを考え、そして少しでも相続税を下げらる方法も考えなければなりません。

相続対策で大事なのは「財産の現状分析」

 ただし、相続税だけを考えてばかりでもいけません。

 相続の開始があるまでのあいだ、土地活用等の収入をだれが享受し所得税はだれが負担するのか、不動産管理法人をつくったり貸家の建物の一部を家族に生前贈与したりしながらの所得税や法人税、消費税も含めてその対策は練っておきたいところです。このように、いろいろなことを考えて行かなければ、よりよい財産承継はできないでしょう。

 では、この相続対策を考えて行く上で、一番大事なことは何でしょうか?

 それは、ずばり、財産の現状分析と考えています。

 日本の資産家の特徴ともいえる相続財産に占める割合の内、最も高いのは不動産と言われています。日本全国の平均値で、その割合は50%超えるといわれています。路線価の高い地域では、その比重は自ずと上がってきます。この不動産と言うのが、相続対策では実に厄介な存在となります。

 例えば、ポートフォリオの基本である「財産三分法」(財産を「預貯金」、「有価証券」、「不動産」に適正配分する考え方)の投資・資産運用の基本となるのは「収益性」、「安全性」、「流動性」の3つの要素といわれていますがが、不動産の投資・運用(有効活用)についてその特性は次のようにいわれています。

(1) 収益性

 不動産の収益はインカム・ゲイン(賃料収入)とキャピタル・ゲイン(値上がり益)によって成り立ってきます。不動産価格の下落によって投資額が少なくなれば、インカム・ゲインの割合が大きくなりますので、投資のタイミングが収益性を大きく左右することになる。

(2) 安全性

 実物資産である不動産はそれ自体の利用価値があること、登記による公示制度が整備されていることなどから、比較的安全性の高い資産といえます。

(3) 流動性

 不動産はすぐに換金できるわけではありません。不動産業者に仲介を依頼してから実際に代金を受け取るまで数カ月かかることも珍しくありません。したがって、不動産は流動性に乏しい資産といえます。

(1) 収益性について

インカムゲイン

 このような三分法で見た場合、まず、収益性についてのインカムゲインについては、土地活用等の賃料収入を得る場合、大きく住宅用と事業用に分かれてきます。

 住宅用はアパートや賃貸マンション、駅近くの新規の区画整理地などでは、地主還元地にあっという間にアパートや賃貸マンションが林立してきます。これは、住宅メーカーや建築業者、不動産会社、銀行等が相続税対策とうたっての猛烈な売り込みがあるからにほかなりません。

 まだ、駅から歩10分以内のエリアであれば将来のリスクは少ないものの中には、駅から車で10分以上の区画整理地の端の方の立地に建築されたものもあります。新しいうちは競争力もあり、そこそこ空室も少なく貸せるでしょうが、10年もすると競争力が落ちて稼働率の低下に悩まされそうです。

 まして、これから日本の人口は減少していきますので、建築資金の元を取るのに15~20年もかかる貸家の建築は慎重に進めたいところです。賃貸経営のリスクの高い住宅地は住宅を欲している方に売却してあげて、そのお金で別の事業用資産に組み替えるといった方法もあるでしょう。

 事業用は、例えばロードサイドの店舗や倉庫、駅前の事業用ビル、そしてクリニックモールなどです。この事業用の土地活用は、一件、一件の賃料が高く、何といっても1件でも空室が出てしまったら、年間に何百万もの収入減となってしまうことでしょう。

 私の昔のお客様でもクリニックモールで全6室のうち、2室が空室で入居が決まらず、その建築資金の借入金返済に窮している方がいらっしゃいました。年間四千万を超える賃料収入があっても、一つの物件でこのような空室が出てしまうと、生活に回せるお金は微々たるものになってしまいます。

 資産の時価は20億円あろうとも、一つの土地活用でつまずいてしまうと、一般のサラリーマンの手取り収入に、とても及ばなくなってしまうこともありますので、注意が必要です。結局、手持ちの不動産を切り売りしながら、何とかやりくりしていくといった話も、よく耳にします。

キャピタルゲイン

 続いて、キャピタルゲイン、要は、将来売却したら幾らのお話ですが、バブルの崩壊後、ファンドのミニバブルの時期を除いては、不動産をキャピタルゲインを目的として投資してその効果を挙げらた人は、ごく僅かであろうと想像します。いまは、東京五輪に向けて都心の一等地を初めとして不動産市況は活発化しているようです。ミニバブルの再来か? と思わせるようです。タワーマンションも好調な売れ行きであるようです。ただ、東京五輪の手前のある時点で、このミニバブルの終焉があるのではというお話をされる方もいます。

 キャピタルゲイン狙いは、それこそ、東京都心に一等地を除いては、あまり、期待の持てるものではないものと予想します。まして、郊外となると将来の人口減もあいまって、投資としての不動産という概念は持てないでしょう。

(2) 安全性について

 続いて、安全性については、権利関係は不動産は登記等の公示制度がありますから安全性は高いものといえます。利用価値という面で見ると、昔よりは、かなり落ち込んでいると思われますが、それでも駐車場にするとかの無投資での利用価値はあるでしょう。

 むしろ、利用価値での問題は借地として貸し出している土地でしょう。借地のうえに建物が建ッている限り、その権利は如何ともしがたいものとなります。何十年もの間の借地人と地主の関係であると地代もあげるにあげられずに、安い地代の水準のまま貸し続けているケースはよくある話です。

 この借地関係の解消、例えば、底地を購入してもらうとか、借地権を購入するとか、何かしらの手立ては組んでいきたいところです。貸地=仮死地ともいわれています。いつかは、対応しなければならないもとでしょう。

(3) 流動性について

 つづいて、流動性については、まさに、流動性は低い財産です。すぐ、売ろうと思っても、すぐ買ってもらえるものでもなく、もちろん、条件のいいものは、すぐ売れるでしょうが、条件良く売却するためには、ある程度の時間は見ておく必要はあるでしょう。相続が発生して、遺産分割協議をして、納税額が出て、さあ、納税用に土地を売却しようといった感じでは、申告期限(相続開始の翌日から10か月後)までに売却して納税資金を準備するのには間に合わないといったことにもなりかねません。

 こと、相続に準備するといったことでは、売却すべき土地を絞っておいて、即、売却できるようにしておくことが望ましいでしょう。もしくは、事前に売却しておいて、納税用に生命保険を加入しておくとか(生前贈与を利用するとかいろいろな方法は考えられます)

土地の価値だけでは、判断できない問題も

 こうして、考えていくと、不動産は個別性が高く、それぞれの不動産はそれぞれの特性があり、また、いくらで売れるかも実際に売り出してみないと幾らで売れるかは確証はできません。相続に備えての対策にはこの不動産の現状分析をきちんと行っておく必要があります。

 一つ、一つの不動産の資料(公図、測量図、謄本、インフラ資料等)を揃える。

 一つ、一つの不動産を現地で確認する(立地、日当たり、交通の便、生活利便施設、学校、道路状況等々)。

 一つ、一つの不動産の価値を調べる(相続税評価額、売却時価等)。

 一つ、一つの不動産の活用の可能性を探る(住居用、事業用等)。

 ここまできて、全体を整理して、誰に何を遺してあげていこうか考えてみるべきです。土地の評価は高くても、建物が老朽化して賃料の稼げない物件もあれは、土地の評価は低くてもロードサイドで成功した賃料の稼げる物件もあるでしょう。単に、土地の価値だけでは、判断できない問題もでてきます。インカムゲインとキャピタルゲインの両方で考えることも必要でしょう。

 こうして、遺産分割をかんがえて、実際の相続税は幾らくらいかかるのか検証して、どうやって納税するのか対策を考えていく。そして、小規模宅地等の特例や納税猶予の特例の適用可否を確認しながら少しでも節税できる方法を考えて行く。このような準備が必要でしょう。よりよい相続対策には、まずは、不動産の現状分析をきっちりと行ってみてください。(執筆者:荒木 達也)


《荒木 達也》
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荒木 達也

株式会社ARK財産承継コンサルタンツ 取締役 (荒木不動産コンサルティングFP事務所 代表) 不動産会社での経理業務、大手不動産会社系列の住宅メ-カ-での住宅・不動産の営業、財産コンサルティング会社での財産コンサルティング業務、会計事務所での相続税等税務全般の申告業務に従事した後、相続対策での不動産対策の重要性を痛感し、公平中立な視点で提案を行う不動産・相続をメインとしたFP事務所を開設し今春新たに法人化。株式会社ARK財産承継コンサルタンツ(荒木不動産コンサルティングFP事務所)は、CFP、不動産コンサルタント、トータルライフコンサルタントである一人のコンサルタントの視点で、財産の現状分析から税務、不動産、相続、保険、資産運用等の総合的な財産コンサルティングを行います。不動産・相続・ライフプラン・保険・資産運用・住宅取得・住宅ローンなど、お気軽にご相談ください。 <保有資格>:CFP、1級FP技能士、不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、証券外務員2種、住宅ローンアドバイザー、トータルライフコンサルタント、MBA・税理士試験(簿記論・財務諸表論取得)、日商簿記1級 寄稿者にメッセージを送る

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