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社会保険の保険料が9月から「上がる人、変わらない人、下がる人」の違い

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社会保険の保険料が9月から「上がる人、変わらない人、下がる人」の違い

会社員などが加入する社会保険には、公的医療保険に分類される健康保険と、公的年金に分類される厚生年金保険があります。

両者の大きな違いとしては、厚生年金保険に加入する年齢の上限は70歳なのに対して、健康保険に加入する年齢の上限は75歳という点です。

また厚生年金保険は1種類しかないのに対して、健康保険は次のような2種類に分かれているのです。

社会保険の保険料

【協会けんぽ】

中小企業に勤務する会社員と、その被扶養者(年収130万円未満などの要件を満たす所定の親族)が主に加入しています。

協会けんぽを運営する全国健康保険協会は、各都道府県に支部が設置されており、健康保険の保険料を算出する時の保険料率は、支部ごとに違うのです。

また健康保険に関する申請書は、自分が加入する支部に提出する必要があるため、特に本社が他県にある方は、健康保険証の表面などを見て、加入している支部を把握しておきましょう。

【組合健保】

大企業に勤務する会社員と、その被扶養者(認定基準は協会けんぽと同様の場合が多い)が主に加入しています。

組合健保を運営しているのは、事業主が単独または共同で設立した健康保険組合であり、それぞれが財政状況などを考慮したうえで、独自の保険料率を設定しているのです。

また自分が加入している健康保険組合の名称などは、健康保険証の表面などを見ると把握できると思います。

以上のようになりますが、将来的に健康保険証が廃止され、マイナ保険(健康保険証としての登録を済ませたマイナンバーカード)に一本化されると、健康保険証の表面の情報を確認できなくなります。

ただマイナポータルにログインすると、協会けんぽの支部や健康保険組合の名称だけでなく、健康保険証の記号や番号などの申請書に記入する情報もわかるため、スマホやパソコンがあれば困らないと思うのです。

社会保険の保険料は標準報酬月額と保険料率で算出する

月給から天引きされる社会保険の保険料は、入社した時の月給を元にして算出した標準報酬月額に、保険料率を乗じて算出します。

例えば入社した時の月給が、「29万円以上~31万円未満」の範囲内にある場合、標準報酬月額は30万円になるのです。

これに2023年度の健康保険の保険料率である10%(東京都の協会けんぽに加入する、介護保険に未加入の40歳未満の場合)を乗じると、健康保険の保険料は3万円(30万円×10%)になります。

なお保険料率がもっとも高い佐賀県は10.51%、もっとも低い新潟県は9.33%になるため、東京都の10%というのは平均的な水準だと思います。

一方で標準報酬月額の30万円に、厚生年金保険の保険料率である18.3%を乗じると、厚生年金保険の保険料は5万4,900円(30万円×18.3%)になります。

ただ社会保険の保険料は原則として、従業員と勤務先が半分ずつ負担するため、月給から天引きされるのは次のような金額になるのです。

・健康保険:月1万5,000円(3万円÷2)

・厚生年金保険:月2万7,450円(5万4,900円÷2)

また社会保険の保険料は一般的には、翌月の月給から天引きするため、入社した月の翌月以降の月給から、このような金額の保険料が天引きされる場合が多いのです。

月給に合わせて標準報酬月額を改定する「定時決定」

新年度が始まる4月に昇給があったり、結婚して家族手当が支給されるようになったりすると、月給と適用される標準報酬月額が釣り合わなくなります

このようなズレを解消するため、一部の方を除いた7月1日時点の社会保険の加入者にして、年に1回のペースで定時決定を実施するのです。

また定時決定の際は原則的に、4~6月の月給(残業代も含む)の平均額を元にして、新しい標準報酬月額と保険料が決定されます

例えば入社した時の月給の金額が、「29万円以上~31万円未満」の範囲内にある場合、標準報酬月額は上記のように30万円になります。

こういった方が4月に昇給し、4~6月の月給の平均額が「31万円以上~33万円未満」の範囲内になった場合、標準報酬月額は32万円に変わるため、保険料は次のような金額まで上がるのです。

・健康保険:月1万6,000円(保険料率が10%の場合)

・厚生年金保険:月2万9,280円

一方で配偶者が扶養から外れて家族手当が不支給になり、4~6月の月給の平均額が「27万円以上~29万円未満」の範囲内になった場合、標準報酬月額は28万円に変わるため、保険料は次のような金額まで下がるのです。

・健康保険:月1万4,000円(保険料率が10%の場合)

・厚生年金保険:月2万5,620円

このようにして算出された新しい標準報酬月額と保険料は、月給に大きな変動がなければ、9月から翌年8月まで適用されます

ただ社会保険の保険料は一般的に、翌月の月給から天引きするため、月給から天引きされる保険料の金額が変わるのは10月からです。

標準報酬月額と保険料には上限が設定されている

4月に昇給があっても、4~6月の月給の平均額が「29万円以上~31万円未満」の範囲内に止まり、標準報酬月額が32万円になる「31万円以上~33万円未満」まで届かない場合があります。

こういったケースにおいては、標準報酬月額は30万円のままなので、9月以降に適用される保険料は、今までと変わらないのです。

また月給の金額が135万5,000円以上になると、健康保険の標準報酬月額は139万円、保険料は月6万9,500円に固定されるため、これ以上は高くなりません。

一方で月給の金額が63万5,000円以上になると、厚生年金保険の標準報酬月額は65万円、保険料は月5万9,475円に固定されるため、これ以上は高くなりません。

つまり社会保険の標準報酬月額と保険料には、保険ごとの上限が設定されているのです。

そのため月給の金額が上限(健康保険は135万5,000円、厚生年金保険は63万5,000円)以上になっている方は、4月に昇給があっても、9月以降に適用される保険料は、今までと変わらないのです。

標準報酬月額や保険料が高くなることはプラスに働く

原則65歳になると厚生年金保険から支給される老齢厚生年金は、月給を元にして算出した標準報酬月額と、賞与を元にして算出した標準賞与額の平均額が高くなるほど、受給できる金額が多くなります。

また厚生年金保険の加入者や、老齢厚生年金の受給者などが死亡した時に、所定の親族に支給される遺族厚生年金の金額は、老齢厚生年金の4分の3程度が目安になります。

そのため標準報酬月額や保険料が高くなると、短期的には給与の手取りが減るなどのマイナスがありますが、将来的にはプラスに働くのです。

また業務外の病気やケガで仕事を休んだ時に、通算で1年6か月に渡って健康保険から支給される傷病手当金の1日当たりの金額は、原則として次のような計算式で算出します。

・支給開始日以前12か月間の標準報酬月額の平均額÷30日×3分の2

このように標準報酬月額の平均額を元にして、傷病手当金の金額を算出するため、標準報酬月額や保険料が高くなることは、病気やケガで働けなくなった時にもプラスに働くのです。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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