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免除期間の国民年金の保険料を追納するなら、入社直後か2023年が良い理由

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免除期間の国民年金の保険料を追納するなら、入社直後か2023年が良い理由

会社などに雇用されている方(正社員、契約社員、パートタイマー、アルバイトなど)に課税される所得税の計算方法は、大まかに表現すると次のようになります。

(A)1~12月に勤務先から支払われた給与(月給だけでなく賞与も含む)の合計-給与所得控除=給与所得

(B)給与所得-所得控除(配偶者控除、扶養控除、社会保険料控除、医療費控除など全部で15種類)の合計=課税所得

(C)課税所得×税率-税額控除(配当控除、住宅ローン控除など)の合計=所得税

以上のようになりますが、(A)からわかるように所得税は、12月の給与の金額が確定するまで、正確な金額を計算できないのです。

そのため勤務先は1月以降に支払う給与から、各人の給与の金額に応じた概算の所得税を天引きしていきます。

また年末を迎えて12月の給与の金額が確定すると、(A)に記載した「1~12月に勤務先から支払われた給与の合計」がわかるため、勤務先は正確な金額の所得税を計算するのです。

これを計算した後に、「概算の所得税の合計>正確な金額の所得税」になっていたことが判明した場合には、勤務先は従業員に対して取り過ぎた分を還付します。

一方で「概算の所得税の合計

このようにして一部の従業員(例えば年収が2,000万円超)以外は、所得税の過不足が精算されるので、(B)に記載した医療費控除を受ける場合などを除き、確定申告の必要はありません。

また勤務先が従業員に代わって実施する、このような所得税の過不足の精算手続きが、いわゆる年末調整になるのです。

免除期間の国民年金の 保険料を追納するなら、 入社直後か 2023年が 良い理由

保険料を納付するのが難しい場合の免除制度

国民年金の保険料は収入の金額にかかわらず同額であり、また新年度が始まる4月になると、賃金や物価の変動率を元にして金額を改定します。

2023年度は前年度より70円ほど減って、月1万6,520円という結果になりました。

収入の低下などの経済的な理由により、これだけの金額を納付するのが難しい場合の制度として、保険料を納付する必要がなくなる全額免除と納付猶予(50歳未満が対象)があります。

この他に一部だけ保険料を納付する必要がなくなる、4分の3免除、半額免除、4分の1免除もあります。

いずれを受けられるのかは、申請者本人の前年の所得だけでなく、世帯主や配偶者の前年の所得にも左右されるのです。

また例えば50歳未満の方が何も指定しないで、これらを受けるための申請手続きを行った場合、

全額免除→納付猶予→4分の3免除→半額免除→4分の1免除

という順番で審査されます。

一方で20歳以上の学生の方は、学生納付特例という免除を受ける必要があるため、審査の順番を気にする必要はありません。

また学生納付特例は他の免除と違って、申請者本人の前年の所得のみが審査の対象になるため、例えば世帯主である親が高収入であっても、審査に対して影響を与えないのです。

国民年金保険料の納付猶予申込手続き

追納するなら納付猶予と学生納付特例を優先しよう

原則10年という受給資格期間を満たした場合、65歳になると国民年金から老齢基礎年金が支給されます。

また公的年金(国民年金、厚生年金保険)の保険料を納付した期間だけでなく、上記のような免除を受けた期間も、原則10年の中に含めても良いのです。

そのため国民年金に加入する必要がある、20歳から60歳までの40年の間に、例えば全額免除と納付猶予の期間しかなくても、65歳から老齢基礎年金を受給できます。

ただ免除を受けた期間については、老齢基礎年金の金額に対する反映が次のようになるため、ひと月分の保険料(月1万6,520円)を納付した場合より不利になるのです。

・ 全額免除:1月分の保険料を納付した場合の「2分の1」

・ 納付猶予:ゼロ(反映なし)

・ 4分の3免除:1月分の保険料を納付した場合の「8分の5」

・ 半額免除:1月分の保険料を納付した場合の「8分の6」

・ 4分の1免除:1月分の保険料を納付した場合の「8分の7」

・ 学生納付特例:ゼロ(反映なし)

この中の全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除には国庫負担(税金による補助)があるため、全額免除を受けて保険料を納付しなかった場合でも、老齢基礎年金の金額に少しは反映されます。

一方で納付猶予と学生納付特例には国庫負担がないため、老齢基礎年金の金額にはまったく反映されないのです。

そのため老齢基礎年金の減額を防ぐために、国民年金の保険料を追納(後払い)するなら、これらの期間を優先した方が良いのです。

新入社員は翌年6月まで住民税が天引きされない

年末調整が終わった後に勤務先は、この時に集計した年収や所得などのデータを、原則として翌年1月31日までに、各従業員が住んでいる市区町村に送付します。

このデータを元にして市区町村は、翌年6月~翌々年5月の月給から天引きする1年分の住民税を計算し、その計算結果を翌年5~6月頃に、勤務先に対して通知します。

計算結果を受け取った勤務先は、指示された通りに月給から住民税を天引きし、各従業員が住んでいる市区町村に納付するため、毎年6月になると住民税の金額が変わるのです。

また4月に入社した新入社員の場合、入社した年の翌年6月の月給から、住民税の天引きが始まります

逆に言えば翌年6月までは住民税が天引きされず、その分だけ手取りが多くなるため、入社した直後は免除期間の国民年金の保険料を追納する、良い機会ではないかと思うのです。

追納が可能な期間は免除を受けた各月から10年以内になりますが、免除を受けた月の翌年度から起算して3年度目以降に追納すると、当時の保険料に加算額が付きます

また追納が遅くなるほど加算額は増えますが、入社した直後に追納するなら、加算額は付かない場合が多いと思います。

新入社員と社会保険料の天引き

ボーナスが増えると所得税や住民税の負担が重くなる

日本経済新聞社が集計した、2023年夏のボーナス調査最終集計(6月30日時点)によると、全産業平均の2023年夏のボーナスの支給額は前年比で2.6%増え、89万4,285円という結果になりました。

2年連続で集計結果は過去最高を更新したのですが、2022年は前年比で11.29%も増えたので、伸び率は鈍化したようです。

ボーナスが増えるのはうれしいことですが、その分だけ所得税や住民税の負担が重くなる場合があるため、何かしらの増税対策を実施した方が良いと思います。

免除を受けた国民年金の保険料を追納した場合、その金額の分だけ(B)に記載した社会保険料控除が増えるため、追納する前より課税所得が低くなります。

これにより所得税や住民税が安くなる可能性があるため、国民年金の保険料の追納は増税対策になるのです。

追納が可能な期間は上記のように、免除を受けた各月から10年以内になりますが、ボーナスの伸び率が鈍化している点などから考えると、2023年辺りが追納の良い機会ではないかと思います。(執筆者:社会保険労務士 木村 公司)

《木村 公司》
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執筆者:社会保険労務士 木村 公司 木村 公司

1975年生まれ。大学卒業後地元のドラッグストアーのチェーン店に就職。その時に薬剤師や社会福祉士の同僚から、資格を活用して働くことの意義を学び、一念発起して社会保険労務士の資格を取得。その後は社会保険労務士事務所や一般企業の人事総務部に転職して、給与計算や社会保険事務の実務を学ぶ。現在は自分年金評論家の「FPきむ」として、年金や保険などをテーマした執筆活動を行なう。 【保有資格】社会保険労務士、2級ファイナンシャル・プランニング技能士、DCプランナー2級、年金アドバイザー2級、証券外務員二種、ビジネス実務法務検定2級、メンタルヘルス・マネジメント検定Ⅱ種 寄稿者にメッセージを送る

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