借金の返済は、日々の生活の中で大きな負担になります。借り入れの返済に悩む方の中には「生活保護を受給して生活を安定させたい」このように考えている方も多いでしょう。
結論からお伝えすると、借金があっても生活保護は受給できます。借金の有無と最低限の生活を送る権利は別物です。
しかし、生活保護を受給しても借金の返済が免除されるわけではないため、受給後も自身で返済する必要があります。
この記事では、生活保護の受給要件や申請方法、自己破産を実行する条件などについてまとめました。
借金により生活が厳しい方は、本記事を参考にして生活保護の受給を検討しましょう。
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借金があっても生活保護は受給できる
借金がある状態でも、生活保護は受給できます。生活保護の受給条件には、借金がない方と定められているわけではないため、借金がある方も生活保護の対象です。
借金があり日々の生活が苦しく、返済の目処が立たない方は、今すぐに生活保護を申請しましょう。
生活保護とは
生活保護とは、収入が低く最低限の生活を送れない方のために、国がお金を支給する制度です。
収入が低い方であれば生活保護を受給できると考える方も多いですが、現在収入がなくても、体が健康で働ける方であれば生活保護の対象になりません。
収入がない方や低い方であれば誰でも対象というわけではないと理解しておきましょう。
生活保護の受給条件
生活保護の受給条件は、次の4つです。
・預貯金や土地などの財産を所有していない
・働けない
・年金や手当を活用している
・親族から支援を受けられない
順番に解説します。
預貯金や土地などの財産を所有していない
預貯金や土地などの財産を所有していない方は、生活保護を受給できます。
反対に、地域によって定められている最低生活費を上回る預貯金や住居用以外の土地などを所有している場合は、生活保護を受給できません。
最低生活費は地域によって異なり、10万円〜13万円ほどに設定されています。
預貯金があるものの、生活保護を受給したい方は、自身が住んでいる地域で定められている最低生活費を確認してみてください。
働けない
働けない方も生活保護の対象です。働けるのにもかかわらず働かない方は、生活保護の対象外のため注意してください。
働けない原因は人それぞれであり、主な原因を挙げると次のとおりです。
・病気が原因で働けない方
・ケガが原因で働けない方
・障害があり働けない方
上記のような方は、働きたくても働けないため、国から生活保護費を受給して生活しましょう。
年金や手当を活用している
年金や手当を受給している方も、生活保護を受給できます。地域が定めている最低生活費に満たない場合は、年金や手当を受給している場合でも生活保護を受給できる決まりです。
しかし、年金や手当などの収入がある方が受給できる生活保護費は、最低生活費から年金や手当の金額を引いた額です。
たとえば、自身が住んでいる地域で定められている最低生活費が15万円で、年金を7万円受け取っている場合は、15万円−7万円=8万円が支給されます。
年金や手当を活用している方も、生活が厳しい状態であれば生活保護を申請しましょう。
親族から支援を受けられない
生活保護は、親族から支援を受けられない方も対象の制度です。親族からの支援によって生活できる方は、最低限以上の生活を送れると判断され、受給の対象になりません。
働きたくても働けず、親族からの支援も受けられない方は、最低限の生活を送るためにも積極的に生活保護を申請しましょう。
生活保護の申請方法
生活保護の申請方法は、次のとおりです。
1:お住まいの福祉事務所で相談
2:申請書を提出
3:訪問調査
4:審査結果通知
上記の手順を参考に、申請してみてください。
1:お住まいの福祉事務所で相談
まずは、自身が住んでいる地域の福祉事務所に相談しましょう。
福祉事務所は全国にあり、市役所や区役所に相談すると場所を確認できるため、どこにあるのかわからない方は、一度問い合わせてみてください。
2:申請書を提出
福祉事務所に相談し、生活保護の受給要件を満たしている場合は、申請書を提出しましょう。
申請書は福祉事務所の用紙ではなく、インターネット上で印刷した用紙でも構いません。
3:訪問調査
生活保護を受給するためには、訪問調査をクリアする必要があります。
訪問調査とは、申請書を提出したあとに実施されるもので、資産や住居などを確認し、生活保護を受給する要件を満たしているのかを確認する作業です。
資産がないのかを確認するために、通帳を提出するように求められる場合もあります。
虚偽の申告をしても、訪問調査で確実に発覚するため、福祉事務所に相談する段階から正しい情報を伝えましょう。
4:審査結果通知
申請書の内容や訪問調査の結果を加味して審査が実施され、合格すると生活保護費を受給できます。
申請から審査結果の通知まで、約2週間ほどかかるため、生活が困窮している方は、できるだけ早めに申請してみてください。
5:受給開始
審査に通過した方には、生活保護の支給が開始されます。生活保護費の支給日は地域によって異なるため、いつどれほどの金額が振り込まれるのかを確認しておきましょう。
生活保護受給中でも借金はなくならない
生活保護を受給しても、借金はなくなりません。借金の返済義務は、債務者と債権者の間で生じるものであり、生活保護の受給とは無関係です。
また、生活保護費を借金の支払いに充てることも禁止されています。借金がある方は、別の方法で返済する必要があると理解しておきましょう。
生活保護受給中にしてはいけないこと
生活保護の受給中にしてはいけないことは、次のとおりです。
・生活保護費を借金返済に充てる
・生活保護受給中に新たに借入をする
一つずつ解説します。
生活保護費を借金返済に充てる
生活保護費を借金返済に充てると、不正受給とみなされ、支給が停止されます。生活保護費は、利用先が次のように決められています。
・光熱費
・食費
・家賃
・医療費
・介護費
基本的には、最低限の生活を送るための支出が認められているイメージです。また、支給停止になるのみでなく、ペナルティを受ける可能性もあります。
借金の返済に生活保護費を充てると、最終的には自身の首を絞める結果になるかもしれません。
借金に困っていても、生活保護費は借金返済に充てないようにしましょう。
生活保護受給中に新たに借入をする
基本的には生活保護受給者に新たな借り入れは認められません。生活保護受給者は、生活保護費の範囲内で生活する必要があります。
新たに借入をすると、生活保護費以上のお金で生活することになり、最低限の生活を保証する生活保護費の目的と矛盾が生じます。
生活保護を受給する場合は、地域が定めている最低生活費以上のお金を受け取れないと理解しておきましょう。
借金がある場合の対処法は自己破産
借金があるものの、返済ができない方は、自己破産を検討しましょう。ここからは、自己破産について詳しく解説します。
自己破産について
自己破産とは、実行するとすべての借金の返済義務が免除される手続きのことです。借金を返済する必要がなくなるため、返済の負担から解放されます。
しかし、不動産や自動車、貴金属などの一定以上の価値がある財産は、強制的に処分されて返済に充てられます。
また、自己破産を実行すると信用情報に傷がつき、一定期間はクレジットカードやカードローン、住宅ローンなどの審査に通過できません。20万円以下の財産は手元に残り、最低限の生活は保障されます。
生活保護受給者は自己破産費用が免除される
生活保護受給者は、自己破産にかかる費用が免除されるため、安心して実行できます。
自己破産を実行する際は、最低でも50万円ほど、場合によっては100万円を超える費用がかかる可能性もあります。
自己破産を実行する方は、そもそもお金に困っており、費用を支払えないと考える方も多いでしょう。
しかし、生活保護を受給している方が自己破産を実行する場合は、自己破産にかかる費用を法テラスが立て替える制度があるため、自身で支払う必要がありません。
また、破産手続きのあとも生活保護を受給している方は、立て替え費用の返済が免除されます。
免除されるのかは審査のうえ決まるため、確実に免除されるとは断言できませんが、高い確率で認められます。気になる方は、一度法テラスに相談してみましょう。
生活保護受給者の自己破産は影響が小さい
自己破産を実行すると、価値のある財産を差し押さえられたり、信用情報に傷がついたりしますが、生活保護受給者は大きな影響を受けない傾向にあります。
生活保護を受給するためには、財産を所有していない状態が前提であり、自己破産で処分されるような財産を所有していない方が多いためです。
また、生活保護受給中の場合、クレジットカードやカードローンの審査に通過できる可能性は限りなく低く、自己破産によって信用情報に傷がついても影響を受けにくいといえます。
生活保護を受給している方の中で、借金の返済に困っている方は、自己破産を検討してみてください。
自己破産ができる3つの条件
自己破産は誰でも実行できるわけではなく、次の条件を満たしている必要があります。
・借金を返済する見通しが立たない
・借金の理由が免責不許可事由でない
・借金が税金のような非免責債権でない
一つずつ解説します。
借金を返済する見通しが立たない
自己破産は、どうしても借金を返済できない状態の方が対象です。借金を返済する余裕がある方は、自己破産の対象になりません。
自己破産を実行する際は、裁判所が自己破産を申し込んだ方の返済能力の有無を確認し、許可を出す必要があります。
たとえば、現在仕事に就いておらず収入がない場合でも、貯金を借金の返済に充てて完済できる状態であれば、自己破産の許可は降りません。
最終的には、裁判所の判断によって自己破産できるのかできないのかが決まります。
自身の収入や貯金の有無などを考慮して、自己破産の対象になるのかを確認してみてください。
自身で判断できない方は、弁護士事務所の無料相談を活用してみましょう。
借金の理由が免責不許可事由でない
自己破産を実行するためには、借金の理由が免責不許可事由に該当しないのも条件です。
次のように免責不許可事由に該当する場合は、自己破産自体が認められません。
・自身の財産を不当に処分する行為
・闇金からの借金
・特定の債権者に優先して返済する行為
・ギャンブルによる借金
・詐欺を働いて財産を取得する行為
たとえば、自己破産を実行すると、一定以上の価値がある財産は処分され、債権者への返済に充てられます。
そこで、自己破産の前に自身の財産を処分しようと考える方も多いですが、勝手に財産を処分すると免責不許可事由に該当し、自己破産できなくなります。
自己破産を検討している方は、スムーズに手続きをするためにも、免責不許可事由に該当するような行為は避けましょう。
借金が税金のような非免責債権でない
借金が非免責債権の場合も、自己破産できません。非免責債権に該当する借金は、自己破産が認められても免責が認められず、自己破産後も返済の義務が残り続けます。非免責債権の一例は、次のとおりです。
・各種税金
・年金
・養育費
・自身の過失による損害賠償請求権
・従業員の給料
たとえば、自己破産が認められても、各種税金や年金、従業員への給料の支払い義務などは残ります。
自己破産で借金から解放されたいと考えている方は、自身の借金が非免責債権に該当しないのかを確認してみてください。
自己破産の流れ
自己破産の流れは、次のとおりです。
1:弁護士や司法書士に相談する
2:裁判所に自己破産の申し立てをする
3:破産審尋を受ける
4:同時廃止事件と破産開始手続きが決定
5:免責審尋を経て免責確定となる
順番に解説します。
1:弁護士や司法書士に相談する
まずは、弁護士や司法書士に自己破産の相談をしましょう。
弁護士や司法書士が在籍する事務所によっては、無料相談を受け付けている場合も多いため、費用が不安な方は無料相談を活用してみてください。
2:裁判所に自己破産の申し立てをする
弁護士や司法書士に相談し、自己破産できる可能性が高いと判断された場合は、裁判所に自己破産の申し立てをおこないます。
自己破産の申し立てには必要な書類がいくつもあり、作成する必要がありますが、弁護士や司法書士に依頼すればすべての作業が代行されます。
3:破産審尋を受ける
裁判所に自己破産の申し立てをおこなったら、破産審尋を受ける必要があります。
破産審尋とは、破産を決定するべきかどうかを判断するための審尋です。
破産審尋の結果によって、自己破産できるのかできないのかが決まるため、非常に重要です。
4:同時廃止事件と破産開始手続きが決定
破産審尋が終わったら、同時廃止事件と破産開始手続きが決定します。この時点で、すべての借金の支払い義務が免除されるわけではありません。
5:免責審尋を経て免責確定となる
同時廃止事件と破産開始手続きが決定したら、免責審尋がおこなわれるでしょう。
免責審尋とは、自己破産が決まったあとにおこなわれる審尋であり、免責不許可事由に該当する内容があるのかを確認します。
免責審尋のあとは裁判所から免責許可決定が出て、免責が確定します。
生活保護に関するよくある質問
ここでは、生活保護に関するよくある質問に回答します。
生活保護はいくらもらえるのですか?
受給できる生活保護費は、地域によって異なります。あくまで目安ではあるものの、10万円〜13万円に設定されている場合が多いです。
土地や家を所有しても生活保護は受給できますか?
基本的に、価値のある財産はすべて処分し、債権者への返済に充てられます。
土地や家を所有している場合は、多くの場合で処分されると把握しておきましょう。
しかし、例外的に持ち家の所有が許可される場合もあるため、確認したい方は弁護士事務所の無料相談を活用してみてください。
自己破産以外で生活保護受給者ができる債務整理はありますか?
生活保護受給者は、自己破産以外の債務整理を実行できません。自己破産のほかに任意整理や個人再生などの債務整理もあります。
しかし、任意整理や個人再生は返済が前提の債務整理であり、生活保護費を返済に充てると不正受給に該当するため、不可能ではありませんが実現は難しいでしょう。
生活保護を受給しており、借金の返済に悩んでいる方は、自己破産を検討してみてください。
まとめ
今回は、生活保護の受給条件や自己破産の基本情報、生活保護や自己破産の申請方法などについて解説しました。
借金を抱えている方でも、生活保護は受けられます。ただし、生活保護費を借金返済に充てることはできません。
生活保護費を受給している方の中で借金の返済に悩んでいる方は、自己破産を検討しましょう。
生活保護の受給中でも自己破産は可能であり、生活保護を受給していない方と比較すると、実行するデメリットも少ないです。
しかし、免責不許可事由に該当する場合は、自己破産を実行できません。
また、非免責債権に該当する場合、自己破産を実行できても借金の支払い義務は免除されません。
自身で自己破産可能なのかを判断できない方は、弁護士や司法書士が所属している事務所の無料相談を活用してみてください。
<参考>
法テラス