過払い金とは、消費者金融やクレジットカードなどの貸金業者から借りたお金を返済する際に、法律で定められた利息の上限を超えて支払った分の金額です。
過払い金が発生している場合、貸金業者に返還を請求することができます。
ただし、過払い金請求に関して、悪質な業者や団体が消費者をだましてお金を騙し取る詐欺が横行している点には注意が必要です。
この記事では、過払い金詐欺の手口と被害にあわないための対策、そして詐欺にあった場合の対処法について解説します。
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そもそも過払い金請求とは?
過払い金請求は、過去に払いすぎた利息や手数料がある場合、支払いすぎた分を金融機関から返金請求する手続きです。
クレジットカード会社や消費者金融は、法律上無効でありながら刑事罰が課せられない金利を活用してきました。
グレーゾーン金利と呼ばれ利息制限法の上限以上の利息を違法に徴収してきていました。
そのため、長期の支払いがある場合は過払い金が発生している可能性があります。
過払い金の発生や返金の条件
過払い金が発生する場合の条件は、利息上限法の上限金利を超えて利息を取られていた分です。
2010年の貸金業法の改正により、多くの貸金業者が利率を下げています。
グレーゾーン金利で融資を受けていて完済した方や、利息が下がる前から継続して借入や返済を繰り返している方が対象です。
実際に過払い金が発生しているかどうかは、貸金業者から借り入れや返済に関する書類を取り寄せることで判断できます。
しかし、書類は複雑で専門的な知識が必要なため、一般的には弁護士や司法書士などの専門家に依頼することが多いです。
過払い金が発生している場合、貸金業者に対して返還を請求することができます。
過払い金の申請期限
過払い金の返還請求は期限があり10年もしくは5年です。
過払い金の申請期限は時期により異なるため、自身に当てはまる時期を確認してみましょう。
- 2020年4月1日以前に最後の取引をおこなった場合
最後の取引とは、完済や返済のみでなく借入も含まれます。
過払い金の申請期限は最後の取引から10年です。
- 2020年4月1日以降に最後の取引をおこなった場合
2020年の民法改正により債権者が権利を行使できることを知り、5年間という規定が追加されています。
そのため、最後の取引から10年または過払い金請求できる権利を行使できることを知ってから5年のうちどちらか早い方です。
債権者が権利を行使できることを知ってから5年間とは、過払い金を取り戻そうと行動した日から5年間のことを指します。
たとえば、貸金業者に取引履歴を取り寄せたり、過払い金請求書を送付したりなどです。
しかし、過払い金の無料診断で過払い金が発生するかどうかを調べるのみではカウントされません。
過払い金詐欺の手口
過払い金詐欺を企む詐欺師は、さまざまな手口で詐欺を図ろうとしてきます。
具体的な過払い金詐欺の手口をいくつか紹介します。
過払い金詐欺の手口を知ることで、過払い金詐欺に遭うのを防げるため、ぜひ参考にしてみてください。
返還請求を装った手口
過払い金詐欺の一般的な手口は、返還請求を装って消費者に連絡する方法です。
返還請求を装った手口では、金融機関や弁護士などを名乗る人物から電話や手紙がきます。
過払い金の返金手続きのためにATMで返金手続きをしてくださいと連絡がきて、第三者に送金するように促されます。
もし、第三者に送金してしまうと過払い金は返金されず、お金を騙し取られる手口です。
気を付けるべき怪しい業者
過払い金詐欺に関与している業者や団体には特徴があります。
これから紹介する特徴に当てはまる業者や団体から連絡が来た場合は注意が必要です。
裁判所やNPO法人を装う団体からの連絡
過払い金詐欺によく使われる手口として、裁判所やNPO法人などの公的機関を装ってきます。
その場合、詐欺師は次のようなことを言って信用させようとします。
- 裁判所から過払い金の返還命令が出たと言う
- NPO法人などの公益団体として消費者の権利擁護をおこなうと言う
- 貸金業者から過払い金の情報を入手したと言う
裁判所やNPO法人などは、過払い金に関して消費者に直接連絡したり、情報提供したりすることはありません。
過払い金請求をするふりをして着手金を請求する時が多いため注意が必要です。
これらの団体から連絡が来た場合は、無視するか、警察や消費生活センターに相談してください。
司法書士や弁護士を装う団体からの連絡
司法書士や弁護士などの専門家を装い消費者に連絡する方法も多くある方法の一つです。
本人が依頼しない限り、司法書士や弁護士側から過払い金請求を提案することはありません。
過払い金が確実に戻ることを口実にATMから振り込みをさせたり、口座番号や暗証番号などを聞き出したりします。
過払い金請求では、ATM操作や口座番号などを聞き出すことはありません。
ATM操作や口座番号などを聞いてきた時点で詐欺を疑うようにしましょう。
また、怪しいと感じたときには、次のことを確認してください。
- 司法書士や弁護士の登録番号や所属事務所などの情報を聞く
- 司法書士会や弁護士会などの公的機関に問い合わせる
- 事前に手数料や保証金などを支払うことはしない
正規の司法書士や弁護士
過払い金詐欺に関与している業者や団体は、すべて偽物や悪徳です。
しかし、それとは別に、正規の司法書士や弁護士でも、悪徳なサービスを提供する司法書士や弁護士などがいます。
悪徳な司法書士や弁護士には次のような特徴があります。
- 過払い金請求の成功率や返還額を過大に見積もる
- 過払い金請求に必要以上の費用や時間を要求する
また、正規の司法書士や弁護士による過払い金詐欺には次のパターンが考えられます。
- 過払い金を着服するパターン
- 違法な業者と連携するパターン
過払い金を着服するパターンでは、過払い金を正しく報告せずに一部を着服するパターンです。
過払い金請求手続きを司法書士や弁護士が代理でおこなうため、依頼者側にとってはメリットと言えます。
しかし、やり取りの手続きをすべて把握できないデメリットがあります。
違法な業者と連携するパターンでは、違法な業者に紹介料を渡し、多重債務者を紹介してもらうパターンです。
紹介してもらった多重債務者の過払い金請求をおこない不当な利益を得ています。
そのため、違法な業者と連携している司法書士や弁護士に依頼すると連絡が取れなくなる場合があります。
悪徳な貸金業者
取引履歴の請求をされた際に利用者から過払い金請求されるのを防ぐために示談を持ちかけてきます。
たとえば、利息をなくす代わりに元金のみは返済をして欲しいと示談を持ちかけてくる可能性があります。
もし、示談に応じてしまうと民法上の和解が成立していると判断され、過払い金請求が難しくなるでしょう。
貸金業者は、金融のプロで専門的な知識を使い説得をしてくるため、知らず知らずのうちに示談に応じてしまう可能性があります。
示談で過払い金請求を解決させられそうな時は、自身で判断する前に信頼できる司法書士や弁護士に相談しましょう。
直接電話による勧誘
直接電話で、「過払い金が発生しているため過払い金請求を促す」という電話をしてくる時があります。
電話口で司法書士や弁護士と名乗り直接電話をしてくるため、信頼できると考えてしまいがちです。
しかし、自身から司法書士や弁護士に依頼しない限り過払い金の調査はおこなわれません。
そのため、依頼していないのに司法書士や弁護士から過払い金請求の勧誘を電話でしてくることはありません。
依頼した覚えのない事務所の名前を名乗った時点で詐欺の可能性が高いです。
名指しで電話してくる場合も不正な方法で個人情報を得ている可能性も高いため、より詐欺である可能性が高いといえます。
投函チラシによる勧誘
投函チラシによる過払い金請求の勧誘もよくある方法の一つです。
直接電話による勧誘同様に自ら依頼した司法書士や弁護士などでなければ、連絡は取るのは止めましょう。
連絡をすることで、過払い金請求の相談をしてもらえるかもしれません。
しかし、着手金のみを請求されたり、高額な費用のみを請求される可能性があります。
投函チラシによる勧誘の場合は、次のことを確認してみてください。
- チラシに書かれた電話番号や名前などが実在するかを調べてみる
- 事前に警察や消費生活センターに相談する
過払い金詐欺の被害から守る3つの対策
過払い金詐欺をおこなう業者や団体は多く、さまざまな方法でお金を引き出そうとしてきます。
過払い金詐欺に合わないために、過払い金請求は自身から動く必要があることを思い出しましょう。
過払い金に関する電話やチラシは無視する
過払い金請求は、借入をしていた貸金業者を特定して、取引履歴を取り寄せる必要があります。
自身で弁護士や司法書士に依頼しない限り自身に過払い金があるかどうかが分かりません。
過払い金に関して消費者に直接連絡したり、情報提供したりするのは、正規の弁護士や司法書士のみです。
そのため、自身から連絡を取らずに業者や団体から連絡が来た場合は、過払い金詐欺の可能性が高いです。
また、過払い金に関するチラシが投函されることがあります。
チラシがきっかけで自身に過払い金があるかどうかを調べるきっかけになるかもしれません。
しかし、チラシに掲載されている業者や団体が詐欺の可能性があります。
過払い金は、自身で連絡を取らない限りは分からないため、事前の電話やチラシが届いた場合は、過払い金詐欺を疑いましょう。
相談する弁護士や司法書士を慎重に選ぶ
過払い金請求は、専門的な知識や技術が必要なため、弁護士や司法書士に依頼することが多いです。
しかし、すべての弁護士や司法書士が信頼できるとは限りません。
悪徳な弁護士や司法書士に騙されないために相談する弁護士や司法書士を選ぶ際には次の点に注意しましょう。
- 弁護士や司法書士の登録番号や所属事務所などの情報を確認
- 弁護士会や司法書士会などの公的機関に問い合わせる
- 費用や期間などの契約内容を明確に説明してもらう
- 契約書にサインする前に内容をよく読む
- 契約書の写しを渡してもらう
依頼費用の相場を把握する
過払い金詐欺の被害から守るためには、依頼費用の相場を把握することも重要です。
過払い金請求には、弁護士や司法書士に支払う着手金や成功報酬などの経費がかかります。
しかし、これらの費用は、過払い金の返還額に応じて決まることが多く、一概に高いかどうかは分かりません。
詐欺師や悪徳な弁護士や司法書士に騙されないためには、次のようなことを確認してください。
- 過払い金請求に必要な費用や時間の内訳
- 事前に手数料や保証金などを支払わない
過払い金請求に必要な費用は、過払い金の返還額から差し引かれることが多く、事前に支払う必要はありません。
返還額が過払い金請求に必要な費用よりも少ない場合や、返還がされない場合は、費用の減額や免除を求めることができます。
実際に依頼するときには、着手金や成功報酬などの相場を確認してから依頼するようにしましょう。
司法書士や弁護士以外の過払い金に関する相談先
司法書士や弁護士でも悪徳な方がいるため、司法書士や弁護士以外に相談したいと考える時もあるでしょう。
司法書士や弁護士以外でも過払い金に関する相談ができる相談先を4つ紹介します。
司法書士や弁護士以外に相談したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
日本クレジットカウンセリング協会
日本クレジットカウンセリング協会は、消費者金融やクレジットカードなどの多重債務に関する相談を受け付けています。
過払い金に関する相談も無料でおこなており、過払い金の計算や返還請求の方法などを教えています。
無料で電話やメールで相談可能で、業者との交渉も引き受けてくれるため安心です。
家族に内緒で相談もできるので、家族に内緒で過払い金請求について相談したい方におすすめです。
法テラス
法テラスは、国が設立した法的トラブル解決のための総合案内所サービス機関です。
法的トラブルや犯罪の被害にあった方などの支援もおこなうのが特徴です。
法テラスでは経済的に余裕がない方を対象に無料の法律相談を実施しており、過払い金に関する相談もおこなえます。
収入や資産が一定額以下の条件はありますが、30分程度を3回ほど利用可能です。
また、所得に応じて弁護士の報酬を補助するサービスもあります。
法テラスサポートダイヤルも設置されており、相談窓口の紹介や法制度の情報を知ることができます。
弁護士会法律相談センター
弁護士会法律相談センターは、各都道府県の弁護士会が運営する法律相談機関です。
借金問題や過払い金に関する相談も受け付けており、相談料がかかります。
しかし、法テラス内が相談会場の場合は法テラスの基準を満たすことで無料で相談可能です。
相談後に正式に弁護士に依頼する場合の費用や手続きなどは、相談内容により異なります。
そのため、費用や手続き方法などは納得がいくまで話しを聞いておきましょう。
電話やインターネットで予約し、最寄りのセンターで相談できます。
電話番号やインターネットの公式サイトは、各都道府県の弁護士会により異なるため、お住まいの地域で検索してみてください。
各自治体の無料法律相談
各自治体の無料法律相談は、市区町村や都道府県がおこなう法律相談サービスです。
借金問題や過払い金に関する相談も受け付けており、弁護士や司法書士が無料で相談に応じています。
相談時間が15分から20分ほどと短いことが多く詳しい相談が厳しい可能性があります。
実際の弁護士に相談可能ですが、弁護士の指定はできません。
アドバイスしてもらいたい分野に強い弁護士が担当するか分からないのも不安です。
しかし、無料で相談できるため、弁護士にはじめて相談する方やこれからどうすればよいか分からない方にはおすすめです。
過払い金詐欺にあった場合の対処法
過払い金請求をおこなったものの悪徳の弁護士や司法書士が担当すると、過払い金詐欺にあう可能性があります。
着手金を持ち逃げされたり、高額な成功報酬を要求されたりと過払い金詐欺にあった場合の対処法を紹介します。
警察や消費生活センターに相談する
過払い金詐欺にあった場合、まずは警察や消費生活センターなどに相談することが重要です。
警察では、悪徳な弁護士や司法書士を摘発して相手側が逮捕される場合もあります。
また、消費者生活センターでは専門の相談員によって対処方法や具体的な相談先を紹介されるのが特徴です。
警察や消費生活センターどちらも頼りになる相談先です。
無料で相談できるため、過払い金詐欺にあった場合は、すぐに相談するようにしましょう。
消費生活センターでは、全国統一で連絡先が用意されているため自身に合う連絡先に電話してみてください。
- 消費者ホットライン:誰もが相談しやすい相談窓口で、電話番号は188です。
- 平日バックアップ相談:最寄りの相談窓口に繋がらない場合の相談窓口で、電話番号は03-3446-1623です。
担当の司法書士や弁護士を変更する
過払い金詐欺にあった場合、担当の司法書士や弁護士を変更することもできます。
担当の司法書士や弁護士が詐欺師や悪徳である場合は、貸金業者と和解しないようにしてください。
貸金業者と和解する前であれば、新しい司法書士や弁護士に依頼し直すことができます。
しかし、契約解除には一定の手続きや手数料がかかる場合があるため注意しましょう。
また、信頼できる司法書士や弁護士を見つけるのは簡単ではありません。
担当の司法書士や弁護士を変更する場合は、次の手順に従いおこないましょう。
- 契約書に記載された契約解除の条件や手続きを確認します。
- 契約解除の意思を書面で通知します。
- すでに支払った費用や預かった書類や証拠の返還を求めましょう。
- 信頼できる司法書士や弁護士を探して再度依頼し直す。
まとめ
過払い金詐欺は、消費者をだましてお金を騙し取る悪質な犯罪です。
過払い金詐欺にはさまざまな手口があります。
過払い金に関する電話やチラシで消費者に連絡し、事前に着手金や高額な成功報酬などを要求することです。
過払い金詐欺の被害にあわないためには、次の対策をとることが必要です。
- 過払い金に関する電話やチラシは無視する
- 相談する弁護士や司法書士を慎重に選ぶ
- 依頼費用の相場を把握する
また、過払い金詐欺にあった場合には、警察や消費生活センターに相談したり、担当の司法書士や弁護士を変更したりすることも可能です。
過払い金請求は消費者の権利ですが、過払い請求を利用した悪徳な弁護士や司法書士に騙されないように注意しましょう。