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PERの公式から導く「長期投資」の本質とは

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長期投資って何?

  長期投資って何でしょうか?単に保有期間を長くしようとのイメージを持って投資することでしょうか?気持ちだけではダメですね。では、意地を張って実際に長い間持ち続けることでしょうか?たまたま良い結果となることがありますが、それではいけません。正しい長期投資は、成長すると思える銘柄を長きに渡って保有し、成長する様子を優しく見守ることです。成長する銘柄でなければいけないのです。

  これらをもう少し具体的に理解するために、株式投資の世界ではとてもポピュラーなPERの公式を利用して、長期投資について考えてみます。

PERとは

  PERはご存知ですか?PERは株価の割高、割安を判別する指標であり、同業他社や当該銘柄の過去の数値などと比べ、数字が大きければ割高。小さければ割安となります。公式は、「PER=株価÷一株利益」です。

  その通りと再確認された方も多いと思います。しかし、ここで終わってしまうとあまりにも勿体ない、非常に役立つ指標なのです。多くの株式投資に関する書籍やテキストもここで終わっていますが、本当に残念な使い方です。

  ではどうするのか?この式を変形してみるのです。そして、それぞれの数値を違う角度から眺めてみるのです。こうすることで、「PERはなんと示唆に富んだ役立つものなんだ!」との思いが溢れてくるはずです。株式投資の本質にぐっと近づくことにもなります。

PERを変形すると

  変形の前に、そもそものPERの意味も確認しておきましょう。これは株式が一株利益の何倍の値段まで買われているのか?そして、何年分の一株利益を見越して、先回りして買われているのか?を示します。また、市場参加者がどれだけ熱くなって株式を買い進めているのか?どれだけバブルが発生しているのか?と考えることもできます。

  では、式の変形をしてみましょう。式を、株価= で始まるものにして下さい。それほど難しくありませんね。答えは「株価=一株利益×PER」となります。この結果、株価は二つの要素の掛け算で決まること。企業の利益が倍になると、株価も倍になること。10%減益になると、理論的には株価も10%値下がりすること。などが、変形した式から読み取れます。

  この変形ができれば、次は、それぞれの用語を別の角度から表現する作業に入ります。掛け算の左側の一株利益から始めると、数値が明確に公表されるので、定量的。また優秀な企業はこの数値を十数年に渡って大きくし続けることができる。このようになります。

  一方の右側のPERは、投資家の思惑や期待値を示す数値なので、定性的。変動要因は、経済環境の変化や、企業業績に影響を与えそうなニュース(新製品の発売など)や、市場参加者心理の変化や、テクニカル的な節目など多くの理由が存在する。市場参加者の人気を示すものなので、上がり下がりを繰り返す。このように表すことができます。

  そしてもう一つ、忘れてはいけないことは、左側の一株利益は決算ごとにしか変わらない、少なくとも今日明日や数日では変化しない長期的な動きのものであるが、右側のPERは数分ごと、いや数秒ごとに変化する短期的な動きのものであることです。一日の相場の中で株価は大きく動きます。しかし一株利益は変わりません。であれば動いているのはPERだと言えるのです。

  このように考えると、長期投資とトレード(短期投資)の本当の違いが分かってきますね。長期的にしか変化しない左側の一株利益の動きに注目し、銘柄選択を行う行為が長期投資。反対に、数秒で変化する右側のPERの動きを予想し、銘柄選択を行う行為がトレードです。期間の長短だけが違いではありません。銘柄選択時のポイントをどこに置くのかが異なっているのです。

  どちらの行為が正しいのか?間違っているのか?その答えはありません。しかし、明らかなことは、心の中をよまなくてもよい分だけ、左側が圧倒的に簡単であること。そして、この二つを混同している限り、ろくな結果が期待できないことです。投資期間だけでなく、選ぶべき銘柄がそもそも違うのです。長期投資に向く銘柄、向かない銘柄があるのです。優良銘柄を選んでも、短期的には値下がりするのです。

長期投資に適する銘柄は?

  この違いを知っていると、投資先企業を選ぶ基準が明確になります。長期投資を志す場合、株主として応援し続けることができる企業、そして順調に利益が大きくなる企業です。投資時期は小さな利益でも構いません。それなりに株価は低いはずだからです。将来利益が大きくなるのであればまったく問題はありません。利益成長のある銘柄探しにとことんこだわって下さい。

  ではどのように利益が大きくなる企業を見つけましょうか。様々な企業の決算を時系列で眺めると、「企業は簡単に変われない。」ということに気付きます。安定した利益を出し続ける企業、大幅減益や赤字が頻出する企業、ジェットコースターのように利益水準が乱高下する企業。この中で安定的に利益成長がある企業を選びます。大切なことは、単年だけでなく時系列で眺めることです。

最後に

  長期投資とは左側の一株利益に注目し、一株利益が大きくなる銘柄を探すことです。投資期間を長く設定するに従って、右側のPERは徐々に影響力が薄まっていきます。5年などの視点で株式投資を考えると、右側はまったく気にしなくてもよい状態になります。これは、人の心をよみ取る作業が不要になることを意味するため、長期投資になればなるほど株式投資は簡単になる。そんな一面もあります。

  長期投資を正しく理解すると、「いつまでギャンブルみたいな心理戦を挑むのですか?」「いつまで売った買ったを繰り返すのですか?」と、多くの(自称個人投資家の)個人トレーダーにたずねてみたくなります。もちろんトレードが本職の人は、別です。トレードを極めて下さい。一方、株式投資以外が本葉の方は、株価上昇のこの時期にもう一度、長期投資の本質を考えてみませんか。これからの豊かな生活に、長期投資はきっと役立ちます。

《山副 耕一》
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「長期個別株投資」推奨ファイナンシャルプランナー メイキット有限会社 代表取締役 京都府在住。関西大学経済学部卒業後、独立系FP会社に入社。平成7年メイキット有限会社を設立。現在に至る。FP資格講座や経済セミナー講師業務、原稿執筆などを行う中で、現在は「投資」としての「長期個別株投資」の普及活動を中心に活動中。「株式投資」には、本来の意味である企業への「投資」と、株式を使った「トレード」が併存するが、後者の情報やセミナーばかりになっていることが現状。これを少しでもバランス良くするための情報発信をすることが天命と考えている。 <保有資格>:CFP、1級FP技能士 寄稿者にメッセージを送る

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