FRBの出口戦略は?

  始まったばかりの、日本の異次元金融緩和において、将来の出口の話をするのは少し気が早いかも知れませんが、完済まで長期にわたる住宅ローンにおいては、非常に大きな影響を及ぼす要因となります。現在、市場を震わせているアメリカの出口戦略への取り組みは、数年後の日本の手本となることでしょう。住宅ローンの話に先立って、アメリカ量的緩和政策の出口戦略について確認してみます。

  6月20日、バーナンキFRB議長が会見で表明した今後の出口見通しに対し、市場は大きな株価下落で応えました。緩和政策をヤメる時の話をしているのですから、冷たい反応があって当然なのですが、少し過剰反応だと思っています。

  日経新聞にも同じ趣旨の記事がありましたが、今アメリカが直面している金融政策の状況を自動車の運転に例えると分かりやすくなります。

  急ぎの用事があり、訪問先へ車を走らせていました。その時、かなり急勾配の上り坂に差し掛かりました。当然のように強めのアクセルを踏みます。坂道がさらに急になると、ほぼフルアクセルです。そうこうするうちに、平地とは言えませんが、先程に比べるとゆるやかな上り坂となってきました。

  この時、どうしますか?

  フルアクセルのままだとスピードが出過ぎるため、アクセルを踏みながらも、少し加減した踏み方にします。しかし、上り坂は続いているため、アクセルから完全に足を離したり、ブレーキを踏んだりしません。

  この状態が今のアメリカです。バーナンキ議長は、もっとも急なところから若干なだらかなところになってきそうなので、「アクセルを緩めることを考えます。」と言ったのであり、「ブレーキを踏む。」とは一切言っていません。また「アクセルから足を離す。」とも言っていません。

  さらに、明日からすぐに!とも言っていません。「多分、今年の終わり頃に緩めることになりそうだ。」そう言ったのです。完全にアクセルから足を離すのは、さらに一年。ブレーキを踏むのはさらに一年はかかるだろう、そう言っています。

 アクセルの度合いを緩めることが、資産買取量の縮小。
 アクセルから完全に足を離すことが、資産買取の終了。

 そして、ブレーキを踏むことが、短期金利の引き上げに該当します。

日本銀行の出口戦略と時間軸予想

  かつて、2001年3月に始まった量的緩和政策を、2006年4月に福井元総裁が終了した時も、まずは量的緩和政策の縮小⇒終了⇒短期金利の引き上げ、と同じような手順が取られました。実際に、短期金利が引き上げられたのは2006年7月。2度目の引き上げで、0.5%となったのは2007年2月のことでした。

  すぐにアクセルが踏まれる(=短期金利を引き上げる)のではなく、時間をかけて徐々に行うものなのです。また、ブレーキを踏むにしても、いきなり急ブレーキ!とするはずがありません。金融を調整することで物価や景気などの安定をもたらすことが、日本銀行の使命であり存在価値です。短期金利を急激に上げ、日本経済を混乱に落とし込むことなどあり得ないのです。

  では、日本の出口戦略の時間軸を考えてみましょう。目標達成がなければ、出口は見えないので、(将来のことは分かりませんが)良い方のシナリオで考えてみます。

  日本銀行の目標通りに2年後の2015年3月、インフレ率が2%になりました。その頃には消費税の引き上げも実施されているため、インフレ率の上振れの可能性もあります。賃金上昇による景気回復も考えると、長期金利は4%程度に上昇していてもおかしくありません。現在に比べると大幅な金利上昇です。

  日本銀行は出口戦略を検討しますが、当初の目標が“瞬間値のインフレ率2%”ではなく、“安定的に2%達成”となっていたため、安定的な動きを確認する期間として半年程度を要しました。

  目標達成後、日本銀行が取り組むべきは、量的緩和の縮小です。これまでの年84兆円の購入額を年27兆円とすることで、計算上は保有額が増加しない状態となりますが、急に27兆円に減らすことはできないため、月額7兆円を5兆円、3兆円、2.5兆円へと段階的に縮小しました。ここまでさらに半年を要し、時は2016年3月になっていました。

  保有国債の増加こそありませんが、大量の国債が依然として手元に残されています。

  次は、国債保有額の縮小です。保有額の縮小は長期金利の上昇要因となるため、必要以上の金利上昇とならないよう細心の注意が必要です。このため、国債の売却は行わずに、償還部分の再投資を控える方法をとりました。最大で230兆円にも膨らんだ保有国債を徐々に減らす作業には1年間を要しました。

  2017年3月、元気を取り戻した日本経済の過熱感を冷やすために、金融政策は金利での調整を行う伝統的な形に戻りました。同時に短期金利の引き上げの検討に入り、3月の金融政策決定会合で0.25%の利上げを決定。それに伴って短期プライムレートが上昇。住宅ローンは「4月に見直し6月から適用」との規定通り、6月から変動金利が0.25%引き上げられることになりました。

  2ヶ月後の5月の決定会合で、経済情勢に悪い兆候がないことが確認されたため、再度金利が0.25%引き上げられ、0.5%となりました。この結果を受け、10月に適用金利の見直し行われ、住宅ローン変動金利は2018年1月から再度引き上げとなりました。当初私が借りていたのは1%と超低金利でしたが、これに比べると0.5%高い1.5%となりました。

住宅ローンへの影響は?

  もう一度確認しておきますが、同じ住宅ローンでも該当金利の期間によって、性格が大きく異なります。長期金利の動きが大きく影響する30年固定金利ローンや10年固定金利ローン。そして、短期金利の動きが大きく影響する変動金利ローンや2年固定金利のグループに大きく分けることができます。

  また、長期金利は市場の思惑や景況感、需給などで決定されますが、短期金利は日本銀行が決定権を握っていることも再確認する必要があります。

  ここからいよいよ、住宅ローンに関する本題となります。私が最近気になって仕方ないのが、住宅ローンに対する著名人、住宅ローンアドバイザー、そして多くのファイナンシャルプランナーの見解です。気になる点は、以下の3つです。

(1)長期金利が上がると、その後、当然のように短期金利も連れ高する。
(2)長期金利上昇後は固定金利への乗り換えが難しくなる。なので、今長期金利に乗り換えるべき。
(3)今変更をしなければ、将来大きなリスクを抱えることになる。

  それぞれに対する、日銀量的緩和の出口戦略を踏まえた、私の見解をご紹介します。

  (1)について → 確かに、短期金利はいつの日か上がるでしょう。しかし、どのタイミングで上がるのかについての言及が見られません。多くの記事、寄稿は、2年後にすぐに短期金利が上がり、変動金利が上がると読めますが、先述のように、直ぐにブレーキを踏むことなどありません。私のシナリオでは、アベノミクス大成功の場合でも、利上げは、4年後の2017年6月です。アクセルは緩めても、ブレーキを踏むまでには時間がかかります。

  (2)について → 確かに、長期金利が先行して上昇すると、変動金利からの乗り換えは難しくなります。ただし、変動から固定への乗り換えを行うことが前提となっていて、乗り換えを行わず変動のままでいる選択肢が見当たりません。また、そのときの変動金利の予想利率も見当たりません。比較対象があまりにも偏っていて恣意的であると感じます。

  私なりに深読みをすると、「その時に乗り換えるよりも、今から長期固定にしておく方が有利である。」となるので、その時の変動金利は、現在の長期固定を上回っているはずです。であれば、変動金利は現在よりも1%以上高くなっているはず。低く見積もっても、現在よりもプラス1.25%の水準でしょうか。

  これは一般的な利上げの5回分に相当します。住宅ローンの適用金利の更新タイミングは利上げに遅れることも考慮すると、現在の長期固定金利水準に達するのは、5年半後の2019年1月からになりそうです。

  ここまで乗り換え時期が後ろにずれ込むと、割高な長期固定金利を今から適用することは、果たして有利な選択なのでしょうか。

  (3)について → 「長期金利が上がると、その後、短期金利が連れ高する。だから変動金利のローンはリスクが高い。」との言い分はこれまで述べてきたように、あまりにも短絡すぎると思うのです。「2年後に目標通りコア物価指数が2%になった瞬間に日銀はブレーキを踏むから怖いんですよ。」と言っているとしか思えないのです。かつ、変動金利が今の固定金利をすぐに上回るくらいにブレーキを踏む=急ブレーキを踏むと言っているように思えるのです。

  前回、量的緩和を解除したときも、0.5%の利上げまでは1年かかっています。また、金利引き上げはここで終了しています。変動金利住宅ローンの大きなリスクが表面化する=ローン破綻懸念が生じる、と定義すると、前回の解除時には変動金利にリスクは生じませんでした。わずか0.5%、いや数%程度の金利変動は当然の事象です。これでローン破綻するのであれば、それは金利の選択でなく、借入金額の選択が間違っていたのです。リスクの種類を履き違えています。

  今回もどうでしょうか?短期金利が上昇する可能性は高いとしても、ローン破綻を招くような、急激、かつ高い水準にまで短期金利が上がるのかと考えると、これはあり得ないのではないでしょうか。日本銀行がそこまでして急ブレーキをかける程、景気は加熱しているのでしょうか。

  今回の前提はアベノミクスが大成功となり、日本が生まれ変わった場合のものです。大成功であれば給与増が予想されるため、金利上昇によるローン破綻の可能性は低くなります。一方、失敗に終わると、デフレが続くことになるので、長期金利がどれだけ上がっても、短期金利を上げることはできません。それこそ、半永久的にゼロ金利は継続し、変動金利は低いままであることが予想されます。

私が勧めるローンプラン

  最後に、長期金利が不安定で、アメリカの金利も上昇傾向を見せる今、私がお勧めするローンプランをご紹介します。

  結論は、「日銀は直ぐに急ブレーキを踏まない!」です。すなわち「金利の低い変動金利ローンを選択しましょう!」です。物価だけでなく景気や為替レートとの兼ね合いもあるので、その可能性が100%無いとは言えませんが、可能性は限りなく低い。そう考えています。

  アクセルを緩めることと、ブレーキを踏むことを区別し、客観的に考えてみることが大切です。膨れあがった保有国債を、市場へ気遣いながら縮小させる姿を思い浮かべることが大切です。これには、時間がかかります。

  国債価格を暴落(=大量に売却する)させると、国家財政を危機的状況に陥らせるだけでなく、日本銀行の財務諸表も大きく毀損させることになります。それを分かっていながら、早急に国債を売り飛ばすでしょうか?やはりあり得ないことだと考えます。

  ただし、円安が大きく進んだときへの対応など、今の段階では予想すらできないこともあります。このため、念には念をいれて、

◯借り入れ金額には余裕をもったローンとする。
◯原則60歳。少なくとも65歳で返済が終了するローンとする。
◯もちろん、ボーナス返済は計画に入れない。
◯いつでも繰上げ返済ができるよう、ある程度の貯蓄を持っておく。
◯夫婦円満で過ごせるよう、お互いが気遣う。

  などの体制を整えておく必要があります。

  私の見解が必ず当たるとは限りません。また、非主流派の考えであることは承知しています。しかし、うわべの雰囲気に流されることなく、現実を見つめ、分析することが今後ますます重要になると考えます。

  ここがおかしい、理論のすり替えがある。などの点があれば、建設的で具体的なデータに基づくご意見を是非伺って、将来の私のFP活動に活かしたいものです。