当初の目的と異なる資産運用をしていませんか?

昨年末の株価上昇から資産運用の相談が増えている。相談者のほとんどは何の目的もなく、相場環境がよいから資産運用したいとのこと。
昨年末からすると日経平均で40%以上も上昇したので、同じくらいの上昇率は難しいわけだが、同じくらいの上昇率を期待する方が多いのが現実だ。上昇率だけを期待しているので、相場が下がってしまうとすぐに不安になって売却してしまう方も多い。
リーマンショック後に相談を受けた事例を紹介しよう。その方は、退職金を投資信託で運用しているが、金融危機で資産価値が半分になってしまい、証券会社から「リスク許容度を超えているので、売却してはどうかという提案され、迷っている」といったものである。
私はこうしたケースの相談には、必ずその金融商品を買った最初の目的が何であったかを詳しく質問する。そのうえで、購入した商品がその目的に合ったものであったかを本人に再認識してもらうために商品の仕組みを説明し直す。すると相談者からは「最初の目的とは異なった商品を買ってしまったようだ」「経済環境の変化から本来の目的と違ってしまった」という趣旨の発言が多く聞かれる。
私は、金融商品の見直しを検討するうえで最初の購入目的が何であったかを明確にすることが最も重要なことだと感じる。なぜなら当初の購入目的が明確なら、多少、経済環境が変化しても目的は大きくブレることがないわけで、どんなに下がっていても売却しない限り、損失が確定されないわけだから慌てる必要はない。
ライフイベント表を作成し、購入目的を明確に
そのためには、最初にライフイベント表を作成してもらい、イベントに使う資金と期間がどのくらいなのか、またどの金融商品が適切なのかを考える。イベントが10年以内なら安全性・流動性を中心に収益性があるリスク商品を入れても比率を低くし、この期間に仮にリーマンショックのようなことが起きても慌てないことだ。10年以上なら収益性があるリスクのある商品の比率を高くしてもよいだろう。
しかし、気をつけなくてはいけないことはゴールであるイベントが近づく2~3年前くらいになり、ある程度の収益が確保しているなら、リスク商品から安全性の高い比率に変更することが必要である。また運用している期間中、利益分だけは売却をしておかないと、いくら利益がでていても相場が下がってしまったら、またたく間に収益分がなくなってしまうのがリスク商品で運用する難しさであるので注意しなければならない。