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我が家の相続(遺産分割)の行方 あえて遺言書を作らない選択肢

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我が家の相続(遺産分割)の行方 あえて遺言書を作らない選択肢

 まず父の相続(一次相続)がありました。相続人は母と姉と私です。不動産は同居していた母と私で分けました。預金はすべて母です。姉にはハンコ代で話がまとまりました。姉に感謝です。問題は二次相続です。

 お客さまに「相続は子にとって通常二回あり、父の相続(一次相続)では、いかに相続税を安くするかが問題になっても、遺産分割についてはうまくいくことが多いです。それは母が健在だからです。ところがです。一次相続で税金のことばかりに頭が行き他の兄弟姉妹の気持ちを考えていないと二次相続でとんだしっぺ返しが待っています。」なんて話していたものの実際のところ少々不安でした。

 付き合いのあった信託銀行さんは遺言をすすめられました。しかし実際、母の死後、「実は遺言書があり、その内容で遺産分割をする」と姉に話したらどうなっていたでしょう。相続のプロである私が姉に遺言書を作らせたと思うはずです。事実はどうであれ、それは姉にとって面白くない話だと思うのです。

 ひょっとしたら姉は「私は何もいらない。その代り、家と墓は守って下さい」と言うつもりだったかもしれません。とすると遺言書を作ることで私は姉の”譲る爽やかさ”を奪うことになったかもしれないのです。

 私は遺言書を作れば姉の相続分は法定の半分である1/4(遺留分)におさまることを理解した上であえて遺言書を作りませんでした。

 では、実際どうだったか。

 土地については自宅以外は調整区域に農地しかなく、姉は要らないとのことでした。では預金はどうするか、いろいろ悩みましたが結局、初めに思った金額に上乗せすることとしました。 

 忘れもしません。母の亡くなった翌年の正月、仏壇のある部屋で姉に恐る恐る切り出したところ、「あんたそれで実家やっていけるの?」と聞いてくれました。

 正直な話その言葉を聞きホッとしました。小さい時よく遊んでくれ学生時代には恋愛相談にも乗ってくれた姉です。嫌な思いはしたくありません。私の姉に対する思いが通じたと思いました。(執筆者:橋本 玄也)

《橋本 玄也》
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橋本 玄也

執筆者:FP1級、相続一筋20年 橋本 玄也 橋本 玄也

父の死をきっかけに相続に関心を持つ。その後、祖母、母の相続と3回相続を経験。自身の体験から相続人の気持ちがわかるFPです。愛知県の会計事務所にて20年近く相続専門の実務担当として様々な体験をし、遺産分割はこれまで500件以上関わりました。まとまる相続、相続人全員の方から喜んでいただくのを生きがいに、おかげさまで在職中担当したお客さますべて、全員の合意による遺産分割を行うことができました。現在は経験を活し、老人会、市役所、商工会議所、ハウスメーカー、金融機関、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会等、講師を行っています。 <保有資格>:一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP、宅地建物取引士、相続診断士 寄稿者にメッセージを送る

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