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「年金が危うい」からと「危うい日本の”円”」を使った自分年金を勧める金融機関の矛盾

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「年金が危うい」からと「危うい日本の”円”」を使った自分年金を勧める金融機関の矛盾

 私どものオフィスには「老後のお金が不安だけど、どう考えていいのかわからない」という相談者が大勢来られます。相談するというアクションはようやく起こしてらっしゃるのですが、お話をうかがっていると40歳を超えているのに具体的に考えたことがないという方が圧倒的に多いです。独身、既婚に関係なく考えていない方が多いです。

 私どものオフィスに来られる相談者の皆さんには、これからの人生に必要なお金について具体的に考えたことがないという方が多くて驚かされますが、それと同時に、具体的に考えてアクションを起こしているのに、間違ったお金の貯め方をしている方もとても多いということにも驚かされます。

「子供」、「家」、「老後」という人生の計画(ライフプラン)の必要額を得るための4つの選択肢

 そんな一つの例をお話ししましょう。前回最後に書いた、「子供」、「家」、「老後」という人生の計画(ライフプラン)の必要額を得るための4つの選択肢をもう一度ご覧下さい。

(1) 一生懸命金利の高い金融商品を探す
(2) 節約する 旅行をあきらめる、冷暖房我慢する
(3) 勤労所得を上げる メインの仕事の後やお休みにアルバイトをする
(4) お金の貯め方を考える、変える

 この4つの中から「(1) 一生懸命金利の高い金融商品を探す」を選んだ人が金融商品を探して金融機関に相談に行くと、定額年金保険や、終身保険をすすめられます。

 営業窓口の方は、老後の年金について「金額が減るんじゃないか」とか「もらえなくなるんじゃないか」とか巧みに不安を煽って、「自分で年金作りませんか?」という勧誘をして来ます。読者の皆さんの中にも、そういう勧誘を受けた方はすごく多いはずです。

”年金が危うい日本の国債”で運用されてる商品を「年金が危ういから」と勧める金融機関の不思議

 この営業トークって実は自己矛盾の極地で、とてもおかしいことなんですよ。

 お金の基本的な知識を身につけていないので、お金を貯めて行ってそれにある程度利息がつくというだけで、その商品を選んでしまう人が多いのですが…。営業窓口の人は、国の根幹に関わる年金が「将来危うい!」とみなさんに訴えていますよね。

 年金に不安を持っているという事は国の将来に不安を持っているということですね。常識的に考えて、将来を不安視している国の国債は買わないんですよね。でも、定額年金保険というのは、ほぼ99%、日本の国債で運用されている金融商品なんですね。

 「将来国力や信用力が下がる恐れのある国の通貨」でお金を貯める人はいません。アルゼンチンのペソでお金を貯めますか? ギリシャに通貨があったら、その通貨でお金を貯めますか? という話なんです。こういうふうに噛み砕けば、間違いなく100%の方が「NO!」というはずの商品を、「不安」という理屈で強引に売っているんですよね。これはかなり笑えるお話です。

定額年金保険を30年積み立てて毎年42万円もらえる頃に、果たして現在の42万円の価値があるのか?

 ここで、そんな、人の弱みに付け込むようなフレーズで薦められるこの定額年金保険の仕組みや効果はどうなっているのかご説明しましょう。

 30歳の人が、毎月1万円ずつ貯めて行くとすると、60歳までに、360万円積み立てることになります。そのお金が、60歳から70歳までの10年の間、毎年約42万円ずつ返ってきます。10年間でおよそ420万円返って来る、戻り率118%というのが各社の商品の大体のしくみです。

 まず、30年積み立てた後に毎年42万円もらえる頃に、果たして現在の42万円の価値があるのか? という部分もかなり気になりますね。「確定保険年金はもらえる金額が決まっているから、日本の国力が下がっても同じ額がもらえるじゃないか!」と仰る方もいらっしゃいますが…。国力が下がって輸入に頼っているので、日本の物価が高騰すると、手にする42万円に、今と同じ価値はなくなるという経済の基本的な法則を思い出して下さいね。

 更に、もっと根本的な質問をしたいです。

「30年間かけて360万円が420万円に増えるくらいでいいのですか?」
「戻り率118%で納得していていいのでしょうか?」
「それであなたのライフプランは実現するのですか?」

 私にはそんな大きな「?」があります。

 さて、次回はその疑問の根拠と「(4) お金の貯め方を考える、変える」という選択についてお話ししたいと思います。お楽しみに。(執筆者:平山 哲也)

《平山 哲也》
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平山 哲也

平山 哲也

青山学院大学法学部公法学科卒業後、大手証券会社にてリテール営業に邁進する中、欧米の金融教育とリスク管理手法に感銘を受ける。ビッグバン到来時は、フローからストックへの掛け声のもと教育係として全国行脚し、長期投資・分散投資の啓蒙に邁進。50歳を前に大手メガバンクへ転職し、投資の啓蒙に尽力。金融業界一筋30年の経歴だけでなく、家業の失敗による「貧乏」「借金」「子育て」「マイホーム購入」という人生経験が活きたコンサルティングは、その言葉の全てを聴くものの腑に落とす魔力がある。資産形成のアドバイス、ポートフォリオプランニングを最も得意とする。長崎県出身、1959年生まれ。 寄稿者にメッセージを送る

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