脱税 vs 節税

 今回は、コラム公認会計士による監査の視点はお休み。Coffee Breakとして、脱税と節税の違い、についてお話ししましょう。

 よく「脱税と節税は紙一重」などと言われることがあります。しかし、公認会計士の立場から言うならば、脱税と節税というのは、明らかに一線を画すものです。

1. 脱税とは

 そもそも脱税とはなんなのでしょうか?

 本来、犯罪用語としての脱税というのは、裁判で税法違反の判決が下ったものだけのことを指します。テレビや新聞のニュースなどで『脱税』という見出しがあるものは、起訴されたものだけなのです。

 この税法違反の判決はどういう時に下るかというと、以下を満たした時のみです。

(イ) 悪質な、課税逃れがあり、
(ロ) 高額(目安として1億円以上)なもの

 では上記(イ)の「悪質な」とはどういうことを差すのでしょうか?

 国税通則法第68項によると、「悪質な」課税逃れというのはつまり、“仮装や隠ぺいがなされたもの”であることがわかります。つまり、税金を逃れるために、ありもしないことを“でっちあげたり”、あるものを“隠したり”した場合のことなのです。

 ですから、どんなに無理な税法の解釈をして、課税を逃れていても、“でっちあげたり”、“隠したり”していなければ、「脱税」とはならずに単なる「課税漏れ」なのです。

2. 脱税になるケース、ならないケース

 例えば、会社の代表者が夜中じゅう飲み歩き、それを福利厚生費などとして会社の経費で処理したとします。これは脱税になるでしょうか? 

 確かに税法の解釈誤りではありますが、「脱税」にはならず、単なる「課税漏れ」にすぎません。なぜなら、“仮装や隠ぺい”がなされたわけではないからです。

 逆に、一般的に見てそれほど悪質とは思えなくても、「脱税」とされるケースもあります。

 例えば、当年の利益が想定よりも多く出てしまったため、年度末付近の売上を数日間だけずらして来年の売上であったことにしようと、請求書や納品書などの日付を書き換えたとします。

 これは売上自体を隠したわけではなく、単に売上の期日を先送りにしただけなのですが、“書き換えた”という時点で、“仮装”みなされ、「悪質な」課税逃れの対象となるのです。そのため、もし、この額が高額(目安として1億円以上)であれば、「脱税」とされ、起訴されることにもなりえる訳ですね。

3. まとめ

 節税は悪いことではありません。むしろ税金に対しても商品原価と同様にコスト意識をしっかり持ち、それを少しでも削減しようとすることは、大変良いことです。ただし、これが脱税となると、立派な法律違反ですから、一気に悪いことに転落するわけです。

 そこで、上で述べた様な、脱税とされるラインをしっかり理解し、それに抵触しないような節税を行うことで、これからの決算や確定申告の時期を乗り越えて頂ければ幸いです。(執筆者:植田 有祐)