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一棟のマンションを共有で相続した場合の相続対策とは…

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一棟のマンションを共有で相続した場合の相続対策とは…

 年が変わって、相続税の増税と叫ばれる中、やはり、今年は、節税対策をメインにした相続セミナーの開催のオファーを多々いただきますが、相続相談の大半は、やはり遺産分割に係る分割対策が大半です。

一番難しい「遺産分割」 遺言だけでは解決しないことも

 私自身は、弁護士、司法書士、行政書士等の法律家でもなく、税理士のような税金の専門家でもない、不動産という分野から派生し、相続対策に特化しているため、法律家や税理士の方々からも相続対策のご相談をいただく機会が非常に多く、不動産業者でありながら、法律家や税理士の方々と遺産分割協議や遺言作成の場や、相続税の申告のための納税者の方々との打合せの場に立ち合わせていただくことが多々あります。

 そのような中で、やはり一番、解決しないと痛感するのは、多くの方から寄せられる通り、分割対策です。最近では、相続に携わる様々な専門家の方々のひたむきな活動が功を奏し、ようやく遺言が必要であることが浸透してき始めたと感じますが、分割対策においては、遺言の作成は、まだまだ、序の口かな…とも思います。

 決して遺言不要論を説いているのではなく、遺言は必要であると思いますが、遺言だけでは解決できないことが多々あります

 例えば、遺言は、財産の所有者が、自身が他界した場合に、誰に相続させるか、或いは遺贈するかを定めるものですが、遺言を作成した遺言者が、遺言によって相続・遺贈を受けた者が、将来、その財産をどうするのか、つまりは、次に誰に相続・遺贈するのか…までは定めることができません

 そういった遺言の限界を埋めることができるのが『民事信託』と呼ばれる制度であったりします。民事信託についての細かい説明は、以前にもこちらのコラムで触れさせていただいたことも何度かあり、また、今後も詳細の解説をしていきますので、今般は、割愛させていただきますが、このように遺言だけでは解決できない問題も多く、「遺言を書けば、問題解決!」というほど、簡単ではないのが分割対策です。

最近多い「不動産の共有問題」


 最近、寄せられる問題として多いのが、不動産の共有問題です。節税対策として、一棟の賃貸マンションを購入されたり、建築される方は非常に多いです。しかし、資産の内、この賃貸マンションの占める割合が非常に重く、結果、いざ、遺言を作成しようとしても、他に分けられる資産がないため、「(一定の割合で)共有で分けるように」という内容で作成されたり、遺産分割協議においても、共有とされるケースが非常に多いです。

 一次相続では、(一般的には奥様のケースが多いですが)配偶者が相続人の一人であるため、お子さん達は、兄弟姉妹で、揉めるケースはあまりなく、円満に遺産分割協議が済まされるケースが多いですが、問題は、二次相続です。

 実は、我々のような相続の実務家からすると、不動産の共有は絶対に回避すべきとしています。自宅等においては、ある意味、親子での共有はきちんとした意義がありますが、その際は、同居をしている子のみとし、その他の子の共有はNGです。

 兄弟姉妹が仮にも相続時に仲が良かったとしても、それぞれの経済状況、家庭環境は常に変化します。場合によっては、兄弟姉妹の内、誰かが経済的に行き詰まり、資金が必要となって不動産を売却したくなっても、他の兄弟姉妹が同意してくれないと、その不動産は売却できません。厳密に言えば、売却自体はできますが、それは、あくまで不動産の持分の売買となり、実体経済では、需要は、皆無といっても過言ではなく、その価格は二束三文です。

 また、兄弟姉妹も次第に年を重ねますので、誰かに相続が発生すると、その持分は、他界された兄弟姉妹の配偶者、お子さんとなります。つまり、義理の兄弟と、甥、姪が共有者となります。このように不動産を共有で持ってしまうと、相続人がどんどん増えてしまう可能性があり、いざ、不動産を売却しようとしても、共有者全員の同意を得ないと、二束三文になるため、大変、苦心されます。

 ちなみに、直近で携わった案件では、共有に共有を重ねた結果、共有者が50人前後までとなった案件もありました。こうなると、実質、売却することは困難となります

賃貸マンションを相続する際に有効な手段

 さて、では、一棟の賃貸マンションを相続する場合、どうすれば…というと、手段は幾つかありますが、代表的な方法としては、2つ程、挙げられます。他にも、方法はありますが、話が複雑になるため、こちらのコラムでは2つ程…。

『区分登記』にする

 1つは、一棟の賃貸マンションを『共有』から、その共有持ち分に応じて『区分登記』にすることです。マンションの仕様や構造にもよりますが、概ねのマンションでは、こちらの作業が可能となります。共有では売れないものの、区分登記にすることにより、1室毎の所有形態となるため、いざ、お金に困った時も、必要な戸数だけ売却すれば現金化できるので、換金性の観点からみても可能です。

一度売却する

 2つ目として挙げられるのは、一度、賃貸マンションを売却し、売却によって得た代金を各々の共有持ち分によって分配し、分配された代金を各々が自由に各々の希望する資産形態に変えることができるので、ある意味、相続の本来あるべき姿だとも思います。

 但し、「相続」とは、読んで字の如く、『相(すがた)承継する』ことを意味しますので、そのような観点から言えば、相続人が築き上げた資産を相続人が可能な限り守る事には大きな意義もありますし、一方で、そのような思いがあるだけに、相続人が苦しむという表裏一体の関係もあります。

 とはいえ、被相続人は、決して自身が遺した遺産によって相続人が苦しむ姿を望むはずはなく、相続人が円満に幸せな生活を遂げることを望まれているはずなので、相続人の出した選択については、何ら後ろめたさを感じる必要はないのではないでしょうか。(執筆者:佐藤 雄樹)

《佐藤 雄樹》
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佐藤 雄樹

佐藤 雄樹

一般社団法人東京都相続相談センター 理事 学習院大学卒業後、財閥系不動産会社にて6年半勤務。企業をはじめ、地主・富裕層へのコンサルティングに従事。平成19年以降、会社更生・民事再生・破産案件に対して法律事務所と一体となり企業再生業務に従事。平成23年に相続コンサルティングに特化した(株)brandsを設立。平成25年には相続の実務家と(一社)東京都相続相談センターを設立。法律・税金・不動産等の各専門分野における垣根を超えた相続コンサルティングは各士業から絶大な支持を得ている。 <保有資格>:NPO法人相続アドバイザー協議会 上級アドバイザー、公認不動産コンサルティングマスター、相続対策専門士、不動産証券化協会 認定マスター、AFP、宅地建物取引士、貸金業務取扱主任者、土壌環境リスク管理者、賃貸不動産経営管理士、住宅ローンアドバイザー、終活カウンセラー 寄稿者にメッセージを送る

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