相続税はどうやって計算するのか?

引き続き深堀事務所で先輩方と打ち合わせをしている。

深堀:
先輩方、コバさんの件の打ち合わせをさせて頂いても良いですか?

固定資産税の書類を預かってきていただけましたか?

中島:
先日、コバの家で話を聞いてきた時に預かってきたよ。この課税明細書で何をするんだ?
固定資産税通知書

≪固定資産税通知書 クリックで拡大≫
深堀:
まず。コバさんは相続税の納税が必要か? という事を一緒に考えましょう。

この書類で不動産の財産が計算できます。建物の相続税評価額は、ここに書いてある固定資産税評価額になります。

しげ先輩。金額はいくらになってますか?

倉本:
5,882,342円。土地の金額も書いてあるね。
深堀:
相続税の計算は建物については固定資産税評価額ですが、土地の計算については違う方法になります。

この課税明細書から土地について読み取れるのは、所在地と土地の面積なんです。230平方メートルとなっていますね。

先輩方は、路線価についてご存知ですか?

中島:
路線価図というのは、仕事で見たことがあるよ。

国税庁が公表するもので、道路ごとに値段をつけてあるやつだろう。今だとインターネットでも見る事が出来るよな。

コバのとこの路線価を見てみようか?

深堀:
お願いします。
中島:
印刷もできるんだな。印刷するか?
深堀:
お願いします。

路線価図 浦和

≪路線価図 クリックで拡大≫

この路線価図をみると、コバさんの自宅が面している道路の路線価格は、250Dとなっています。

では、計算してみましょう。250は、平方メートル価格250,000円の意味ですから、土地の相続税評価額は230平方メートル×250,000円で、57,500,000円となります。

コバさんのところの不動産の相続税評価額は、土地の相続税評価額57,500,000+家屋の相続税評価額の5,882,342円で63,382,342円となります。

それと、預金を足せば大体の相続税評価額が分かります。

倉本:
え~。家だけでそんな額になっちゃうのか。

たしか、預金は、20,000,000円位と言っていたぞ。

深堀:
そうすると、相続税の総額は、不動産と現金を足して82,382,342円です。

借金や葬祭費用は分からないのでプラスの財産だけとし、計算しやすいように8,200万円として考えてみましょう。

相続人は、コバさんと義兄さんでしたよね。そして、ご主人が亡くなられたのは今年の1月ですから。

法定相続分は、妻が3/4ですから8,200万円×3/4で6,150万円
義兄が1/4ですから8,200万円×1/4で2,050万円
基礎控除は、3,000万円+600万円×2で4,200万円
課税遺産総額は4,000万円となります。

相続税の速算表で税金を計算してみると夫々の納税額は、配偶者は400万円で義兄は100万円となります。

中島:
配偶者は、相続税は掛からないと聞いているけど。
倉本:
そういうことを聞いたことがあるよな。
深堀:
先輩方は良くご存知ですね。

そうなんです。配偶者は法定相続分か1億6千万円までは相続税は課税されないのです。理由は、財産は夫婦が協力して残したと理解されているからです。

しかし、特例を受けるには、相続税の申告期限までに誰が相続するのかが決定している事が条件となるのです。

遅れたとしても相続開始から3年以内には決定する必要があります。

遺言書があれば簡単なんですが、ない場合は遺産分割協議書を作成する必要があります。

中島:
そうだったのか? 俺は「遺産分割協議書」と「養子縁組」について調べてきたけど、その知識が役立つんだな。

相続申告までに遺産分割協議書が作成されていれば、配偶者の税額軽減と小規模宅地という特例が使えると本に書いてあったよ。

深堀:
その通りです。コバさんが家を相続されてそのまま住むことが出来れば、自宅の土地については、330平方メートルまでは80%減額されるんです。

先ほど計算した自宅部分ですが、5,750万円が1,150万円の評価になりますから全体として相続税は課税されなくなります。

勿論、義兄も課税されなくて済みます。その場合も税務申告をすることが前提となりますが。

コバさんは税理士の先生に頼んでいるのでしょうか?

中島:
税理士の先生に知り合いはいないし、義兄の事もあるので誰にも頼んでいないと言っていた。良い先生がいたら相談したいと言っていたよ。
倉本:
それなら俺がJAで働いている時にJAの顧問の税理士なら紹介できるぞ。威張ってなくて付き合いやすいんだ。深堀君の知り合いの先生でなくても良いか?
深堀:
勿論です。税理士の先生は人柄が良くてじっくり話を聞いてくれる方が良いですね。

ところで、先生は何という方ですか?

倉本:
中学校のそばに事務所がある芹沢先生だけど、知ってるか?
深堀:
芹沢先生なら良く存じ上げています。先輩方と同年代ですよね。
中島:
芹沢って、高校のゴルフ部でプロを目指すなんて言っていたけど、税理士になったんだ。

そうか、知り合いなら相談しやすいな。

深堀:
ご主人が亡くなられたのが今年の1月ですから、申告期限は10か月後の11月となります。早めに先生と一緒にコバさんと打ち合わせしてください。
倉本:
俺は「リバースモーゲージ」というのを調べてきたけど、コバのところの相続と関連があるのか?
深堀:
コバさんの希望は「家を失いたくない」という希望と「預金も減らしたくない」でしたよね。

そこで、義兄に相続税分として預金からお金をお渡しして、老後資金はリバースモーゲージを利用するという提案です。

コバさんは、相続後もそのまま住み続けていけるし、使った分の金利だけ払っていけば良いので大きな負担になることはない。

借り入れについては、コバさんの死後に売却して清算して貰うというのはどうでしょうか?

倉本:
それはいいね。
中島:
リバースモーゲージについて詳しく教えてくれよ。
深堀:
倉本先輩を中心としてリバースモーゲージについて具体的に検証してみましょう。

そして、次の作戦として義兄に相続は放棄してもらう代わりに義兄の息子さんをコバさんの養子になってもらうという提案です。コバさんの財産の全部を相続できることになりますし、コバさんにとっても老後の安心を手に入れる事が出来ます。

しかし、相続税の申告期限もありますので遺産分割協議書は進める必要があります。芹沢先生と一緒にコバさんと打ち合わせを開始してください。

相手がある事で調整は難しいですが、中島先輩を中心に可能性を検証してコバさんに提案しましょう。

中島:
コバを助けてあげられる提案をすることが出来そうだな。何となく正義の味方みたいで。子供の頃に夢中になった少年探偵を思い出すな。
倉本:
そうだな。俺は、子供の頃シャーロックホームズを夢中で読んだよ。一緒に探偵になったつもりで頑張ろう。
深堀:
ワクワクしますね。実は、先輩方にお話ししたいことがあります。

それは、先輩方の奥様方から主人が昔のように格好良くなれるように協力してほしいと、頼まれたんです。

確かに久ぶりにお会いした先輩方は、ジャージ姿で寝癖もついていて、昼間から缶ビール片手、楽しそうに生きているといった感じには見えませんでした。しかし、今の先輩方はバリバリのサラリーマン時代の雰囲気に戻っています。

後輩から言うのもなんですが「今の先輩方は格好いいです」

つづく(執筆者:岩宗 繁樹)

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