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【40年音信不通の父】消費者金融から届いた手紙で知る、死と借金。相続人である娘のするべきこと。

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【40年音信不通の父】消費者金融から届いた手紙で知る、死と借金。相続人である娘のするべきこと。

40年間音信不通の父


父親のことで40年ぶりに来た手紙をもって、相談者の話です。

母が離婚し3歳の時に別れ、行方不明だった父親のことで40年ぶりに来た手紙は

消費者金融からの「借金のお知らせ」

でした。

父は消費者金融からお金を借り、返済しないまま亡くなったようです。

借入金額3万円。延滞金含め10万円ほどあるとの連絡です。

どこにいるのか本当に死亡しているのかも不明です。

そもそも行方不明だったお父さんの死亡が事実か作り話なのかもわかりません

父親の死亡確認をしたい

戸籍を入手してお父さんの死亡の確認をすることが可能です。

・ 配偶者
・ 直系親族(父母、祖父母など)
・ 直系卑属(子、孫)

であれば、市役所に直系の親族(父)である資料をみせると取得できます

確認の手順

父・子関係は自分の現在の戸籍に記載されています。

自分(子)が結婚する前の戸籍を取ります。

母と離婚した記載のある戸籍(原戸籍など)までさかのぼり、今度は離婚後の父の戸籍をたどります。

市外に住所を変えても本籍はそのままもあれば、戸籍を動かしていることもあり得ます

調査したところ、転籍されていましたが、死亡の事実が確認できました。ただし死亡されていたのは前年の7月でした。

相続放棄は可能か?

相続放棄は3か月以内の手続きが必要なので「借金なんていらない」から放棄することはできないのでしょうか?

民法915条に「自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内」と書いてあります。

相続人が消費者金融から手紙が届くまで父の死亡は知りませんでした。

この場合の相続開始は、手紙が届いて父親の死亡を知ったときから3か月以内ですので、放棄も可能です。

父親の住所がわからない


相続放棄の申述先は、亡くなった父の最後の住所地の「家庭裁判所」となっています。

父の本籍地は判明しているので、「戸籍の附票」を取ることで住所の移動履歴が判明します。

申述先が県外の場合

相続人の最寄りの家庭裁判所で受付できないのでしょうか。

最寄りの家庭裁判所へ行きお願いしてみました。

最寄り経由では受付できないが、郵送でも受付できる

との回答でした。

念のため、書類の確認だけ見てもらい収入印紙800円に切手代(申述先の家庭裁判所で違います)で手続きができました

返済せずに放棄する理由

「返済金10万円なら家庭裁判所に放棄の申し立てなんてせずにきちっと返済しておかないの?」

といった声もあるでしょう。

返済することで、「相続を放棄しない=単純相続した」とみなされる可能性があります。

「借金の相続のお知らせ」を送ってから3か月後に他の金融会社からどっさり返済してくださいと通知がくることもあり得ます。

そうなるともう放棄もできません。

そのために返済しないで放棄する選択肢を選んだのです。


新手の「相続放棄詐欺」かも?

父親は再婚していました。

父の相続人は再婚相手と先妻の子2人と後妻の子1人でした。

今回、先妻の子供2人は放棄することにしましたが、

父が再婚後事業に成功し資産家になっていた

としましょう。

再婚され奥さんが、2人で築きあげた財産を相続するのにも「遺産分割協議書」に先妻の子の実印が必要です。

分割協議なら全員の合意が必要ですが放棄はひとりひとりの「申し立て」でできます。

故人に借金があれば放棄してもらえます。そこで、あえて生前少額のお金を借り返済せずにおいて放置したかもしれません。

奥さんが、先妻の子に金融会社から手紙を送るようにしたかもしれません。そうすれば

あわてて放棄の手続きをしてくれる…

なんて、たくらみかもしれません。

父の住所地の固定資産税課で不動産の調査し、登記簿謄本を取得されれば資産状況の把握ができますので、そういった調査も場合によっては必要かもしれません。

放棄する場合の重要な注意点

放棄は遺産分割と違い相続人全員の合意なくてもでき、申し立てた本人は借金を負わなくて済む簡単な手続きですが、放棄することで、初めからその相続人がいなかったことになり、新たに相続人となる方が発生します。

例えば子供が全員放棄すると故人の直系尊属が相続人です。

両親などもいなければ故人のきょうだい、おいめい(きょうだいがいなければ)まで金融機関は借入の返済を求めます。

そのため自分が放棄することで新たな相続人になる方には事前に連絡をしておくのが賢明かと思います。


「マネーの問題」は「こころの問題」

もし、お父様に莫大な財産が有ったらどうします?

と僕は相談者に確認したところ

「三歳で別れたお父さんの借金なんか要らないし、プラスの財産があっても、なにもいりません」

と彼女は言い切り、「あえて言うなら、父の顔はみたかったかな」とつぶやいてました。(執筆者:橋本 玄也)

《橋本 玄也》
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橋本 玄也

執筆者:FP1級、相続一筋20年 橋本 玄也 橋本 玄也

父の死をきっかけに相続に関心を持つ。その後、祖母、母の相続と3回相続を経験。自身の体験から相続人の気持ちがわかるFPです。愛知県の会計事務所にて20年近く相続専門の実務担当として様々な体験をし、遺産分割はこれまで500件以上関わりました。まとまる相続、相続人全員の方から喜んでいただくのを生きがいに、おかげさまで在職中担当したお客さますべて、全員の合意による遺産分割を行うことができました。現在は経験を活し、老人会、市役所、商工会議所、ハウスメーカー、金融機関、日本ファイナンシャル・プランナーズ協会等、講師を行っています。 <保有資格>:一級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP、宅地建物取引士、相続診断士 寄稿者にメッセージを送る

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