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「分散投資」が必ずしも税務的にオトクにならない理由

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「分散投資」が必ずしも税務的にオトクにならない理由
一つのカゴに複数のタマゴは入れるな。

投資をする人なら誰でも一度は必ず聞く格言です。

これを守って分散投資を心がけている人は多いかと思います。

ただ、残念なことに税務的には必ずしもそれがオトクとは言い切れません。

一つのカゴに複数のタマゴは入れるなという格言を守って分散投資

分散投資が一極集中より好まれる理由とは

冒頭の格言は、投資の世界では「分散投資」を意味します。

分散投資とは、

一つの投資先に集中して資金をつぎこむのではなく、複数の投資先を定めて資金を分けて投資すること

をいいます。

確かに市場には成長が期待される株式や通貨、商品、仮想通貨などが存在します。

しかし、「成長し続ける」ということはまずありません

企業の業績悪化や倒産によって損失を被ることもあります。

価格が上昇する時もあれば下落する時もあります。

特に世界的なバブル崩壊や恐慌、テロや災害などが生じた場合、投資先の価格が一気に暴落します。

その場合、損失の度合いが日常生活を脅かすことにもなりかねません。

けれども、種類や性質の異なる投資先にまんべんなく投資をすることで、このようなリスクを回避することができるのです。

分散投資が税務的にはオトクではない理由とは

分散投資が税制的にお得でない理由

ただし、税務面で考えると、

分散投資は必ずしもオトクではありません


なぜかというと、

投資の内容によって所得の種類が異なるから

です。

所得税法上の所得の種類は10種類あり、税金計算上はそれぞれの所得カテゴリーの中で所得を計算します。

その内、投資として選ばれやすいものを所得ごとに分けると次のようになります。

投資として選ばれやすい6種類の所得

1. 配当所得

株式の配当金など。

2. 利子所得

預貯金の利息、公社債の利息、公社債関連の投資信託などによる収益分配金など。

3. 譲渡所得

不動産や金、株式などの売買(営利目的で頻繁に売買するものは「事業所得」あるいは「雑所得」)。

4. 不動産所得

アパートといった不動産賃貸などによる不動産収入。

5. 事業所得

投資のうちでも営利目的で頻繁に売買を繰り返し、かつ事業的規模だと認められるもの。

6. 雑所得

投資のうちでも営利目的で頻繁に売買を繰り返すが、事業所得ほどの事業的規模を持たないもの、FX(外国為替証拠金取引)、仮想通貨の売買・使用益、仮想通貨の採掘(マイニング)による利益など。

ここで問題になるのは

リアルな投資の結果がそのまま税金計算に反映されない

ことです。

つまり、

株式で100万円利益、仮想通貨で500万円損失になった場合
トータルで損失400万

と考えるのが一般的な皮膚感覚です。

しかし、税務上は

株式による所得100万円、仮想通貨の所得0円とみて
所得100万円に課税

されます。


「トータルで損失400万円」と税務上も計算するための機能である「損益通算」は、仮想通貨のカテゴリーである雑所得にはありません

損益通算できる所得は限られている

先述の所得カテゴリーの内、損失が発生した場合に「他の所得と相殺できる」いわゆる損益通算ができるのは原則として

「不動産所得」、「事業所得」

です。

総合課税の譲渡所得も

「一時所得 → 経常所得 → 山林所得 → 退職所得」

の順に損益通算できますが、株式売買による所得など分離課税の譲渡所得となるもので損失が発生した場合は損益通算できません

損益通算できる所得以外のものは、原則として仮に赤字になったとしても、「0円」としてカウントされて終了です。

だからこそ、先述の例である

仮想通貨の雑所得も0円

として扱われて終わってしまうのです。

また、FXにより生じた損失も、仮想通貨で発生した所得と相殺することはできません。

「同じ雑所得なのになぜ?」

と思うかもしれませんね。

FXによる所得は分離課税、仮想通貨による所得は総合課税で、課税の体系が異なるためです。

原則「損益通算OK」の所得でもこういう場合は損益通算NG

また、「不動産所得」、「事業所得」、「総合課税の譲渡所得」であっても、次のようなものは損益通算できません。

生活に通常必要でない資産で、価格が30万円を超えるもの(例:宝石、ヨット、絵画など)
生活用動産を譲渡したことによる損失(生活用の車や家具など)
マイホーム以外の土地建物の譲渡損失
不動産所得のうち借入金利子

そのため、不動産経営がうまくいかなくなった結果、投資用不動産を売却して損失が発生しても給与所得など他の所得と損益通算はできません。

なお、株式売買やFXのように分離課税の対象とされているもので損失が発生した場合、3年間に限り翌年以降に繰り越して、同じカテゴリーの所得と損益通算することは可能です。

このように、所得税法上にはそれぞれの所得計算に細かいルールがあります。

うんざりしますが、見方を変えると

「そのルールをきちんと知って分散投資を行えば、税務面のリスクを回避できる

ということにつながります。


投資を始める前に、投資先だけでなく税金についても調べてみてください。(執筆者:鈴木 まゆ子)

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《鈴木 まゆ子》
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鈴木 まゆ子

鈴木 まゆ子

税理士・税務ライター 中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。朝日新聞『相続会議』、納税通信、KaikeiZineなどメディアで税務・会計・お金に関する記事を多数執筆。著書に『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、共著) 寄稿者にメッセージを送る

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