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「アパートローン審査」で銀行はここを見る!【第2回】 動機 ~ 「不動産投資」はネガティブ 「相続・土地活用対策」はポジティブに判断する。

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「アパートローン審査」で銀行はここを見る!【第2回】 動機 ~ 「不動産投資」はネガティブ 「相続・土地活用対策」はポジティブに判断する。

アパートローンの2つの目的

アパートローンのふたつの目的

アパートローンの融資審査では動機、

何のためにアパートを建てるのか?

という目的が重要な要素です。

目的は以下の2つ

1. 収益目的→ 不動産投資

2. 相続目的→ 相続対策、不動産の有効活用

動機その1. 収益目的の場合

融資審査において、「アパート経営は儲からない」を前提に融資審査をするのが基本スタンスです。

決してアパート経営自体が儲からないといっているわけではありません。

融資審査は否定から始めます。

融資審査を否定から始める理由

「アパート経営のリスクを考えると儲からない」という結論になる

「銀行基準で収支をシミュレーションすると儲からない」という結論になる

今回は私の勤務する銀行基準で説明します。

融資審査のスタンスは、積極姿勢から保守的なところまで、銀行によって違います。

私の銀行は保守的な傾向が強いので「堅い銀行の場合」とイメージして読み進めてください。

アパート経営のリスクを考えると儲からない?

アパート経営にはいくつものリスクが伴います。

銀行が重視するリスクは、家賃収入のリスクです。

家賃収入で返済するアパートローンで、銀行が最も重視するのが下記リスクです。

1. 空室のリスク:空室になると家賃が途絶える

これは家賃保証、サブリースが無いケースです。

例えば

・ 入退去管理はオーナー自身や不動産屋さんに頼む、といった昔からあるアパートの形態

・ マンション1室だけの不動産投資の場合

などが該当します。

家賃保証がありませんので、空室になれば家賃が減り、何の保障もありません

銀行基準の空室率

融資審査では、この空室リスクを想定して銀行基準のシミュレーションに反映させています。

具体的には家賃収入の計算において、空室率という項目があります。

「アパートが10室あれば〇室は空室になる」これが空室率で、〇%で表記します。

空室率は銀行の極秘基準なので、ここでお伝えできませんが、一般に考えられている水準より低いです。

マンション1室の場合、空室になれば家賃収入は即座にゼロになるので、空室率は100%の想定です。

2. 契約のリスク:家賃保証、サブリース契約の解除、または条件の悪化

これは家賃保証、サブリースがあるケースです。

家賃保証やサブリースは当初何年かの契約期間で、その後契約を更新していくのが一般的です。

しかし、最近悪質な業者も多くなり契約に関してトラブルも発生しています。

不正融資問題で注目されているシェアハウス関連などその典型的な例です。

まっとうな業者でも、契約更改時に必ず更改してくれるとは限りません

サブリース契約では「契約更改時には、更改についてオーナー様、弊社双方で話し合いの決定いたします」といった内容が盛り込まれているのが一般的です。

つまり未来永劫契約してもらえるわけではありません

木に登らせておいて、途中ではしごを外すようだとオーナーは感じると思いますが、残念ながら契約とはそういうものです。

こうした現実を踏まえて、銀行では収支のシミュレーションをする際、

・ 家賃保証、サブリースが当初の契約期間だけはあって、契約更改なし

・ 最初から家賃保証、サブリース契約がないものと仮定

上記2とおりのシミュレーションをして、審査の判断材料にします。

家賃保証がない(途絶えた)期間は上記(1) のように、空室率を加味して計算します。

当然家賃保証がある場合に比べ、収入は減ります。

こうしたリスクを反映させると、銀行でシミュレーションした場合の収支では儲からないという結論になってしまいます

銀行の基準でシミュレーションすると儲からない

銀行の基準でシミュレーションすると儲からない?

アパートローンの審査では、銀行が独自に収支をシミュレーションします。

専用の計算ソフトなどを開発し、必要なデータを入力する形式です。

ハウスメーカーの営業マンがアパートの提案に使うものと原理は同じです。

収入:家賃や駐車場代

支出:修繕費、税金、火災保険料、そしてローン金利

こうした項目を入力して

「建築費用1億2,000万円、借入金額1億円、借入期間30年、ローン金利3%」

などの仮定で計算します。

結果は

・ 1年目~30年までの1年ごと収支のプラスマイナス

・ 30年の平均収支のプラスマイナス

・ 30年の平均利回り

など詳細に計算できます。
   

銀行基準と業者の違い

ハウスメーカー営業マンが見せてくる提案書(=シミュレーション)は「利回り〇〇%」など魅力ある数字が記載されています。

これはその会社の基準で算出したものであり、会社によって基準もそれぞれなので正解はありません

ハウスメーカーのシミュレーション基準が間違っているとか、甘いということではありません。

こうした提案書を見るときには、前提条件はなんなのかを確認することが重要です。

例えば「本シミュレーションは借入金利が1%で最終年度まで金利が変わらないものと仮定しております」などの説明が必ずあるはずです。

業者作成のものと銀行基準のシミュレーションの結果には大きな格差があります

・ 業者は提案する→ 基準数値には魅力的な結果にしたいという意図が作用する

・ 銀行は審査する→ 基準数値は最悪の事態を想定という意図が作用する
    
銀行シミュレーションで用いる数値は、審査の根幹にかかわる極秘事項です。

万一これが公表されれば、すなわちその数値に合わせたシミュレーションを作られることになるからです。

具体的なことは申し上げられませんが、銀行基準は原則、相当にネガティブに数値が設定されています。

金利でも、実際に融資する金利よりも高い金利でシミュレーションします

これは将来の金利上昇というリスクを想定するからです。

銀行でシミュレーションをすると、ほとんど全ての申込みで儲けは出ません

ローン審査は

・ 年齢などの属性
・ 動機
・ 収支
・ 資産背景
・ 担保

といった事項を総合的に判断します。

アパートローンが家賃収入で返済していくという性格であることから、このシミュレーションは審査の重要な部分であり、銀行は重視します。

    

シミュレーションと融資審査~収益目的の場合

業者提案書と銀行資産背景を比べて審査します。

・ 業者シミュレーションは「理想形」

・ 銀行シミュレーションは「最悪のパターン」

上記のように、収益目的の融資審査では収支が最も重要なポイントです。

業者、銀行双方を比較して、将来のリスクまで踏まえ審査します。

銀行基準はネガティブですので、それを補うプラス要因が必要です。

例えば

「サラリーマンでそれなりの収入が安定している」

「他にも不動産などの資産を持っている」

などです。

純粋な不動産投資で、銀行でローンを組もうと考えている若いサラリーマン層が銀行融資を受けることが困難なのはこうした理由からです。

収益目的の審査は否定から始まる、このことをぜひ参考にしてください。

ネガティブを補うプラス要因

動機その2. 相続目的の場合

先祖代々多くの土地を持つ

相続のたびに多額の相続税が必要

相続税をなんとか少なくしたい

アパートを建てる

建設費は銀行のローンを借りる

本人が死ぬとローンは財産から引かれる(債務控除)

アパートの建物は人に貸していることで相続税の評価が下がる(賃貸物件の相続税軽減効果)

従来からある、よくあるアパートローンのパターンです。

農家などの土地持ち資産家が多いので、特に農協系の金融機関が得意としている手法です。

特に地方などで、空き地や田畑を法務局で閲覧して持ち主を探し、ハウスメーカーの営業マンがアパート建築を提案しています。

こうした相続対策のアパートローンは、銀行が理想としているモノです。

相続対策なら儲からなくてもいい?

相続対策のアパートローンは、借金をすることにひとつの意義があります

例えばアパート経営で赤字になっても、本業で事業や農業を営んでいれば本業の黒字をアパートの赤字と相殺できます。

これなどはバブル期によくあった話しで、今の時代「損益通算」を狙ってアパートを建てる人はまずいません。

アパートも経営なので、儲けがなくてはいけません。

ただし相続対策が必要な人は、先祖から賃貸用不動産もそのまま引き継いでいたり、立派な家業を継いでいたりしているので、そもそも収入が安定しています。

収益目的の場合と違い、このアパートでもうけなくては…ということには必ずしもなりません

相続対策のアパートローンは銀行からも提案することがある

相続対策が必要な資産家は、銀行としてはぜひ取引をしたい優良なターゲットです。

預金を多く預けている客、納税額の上位者(いわゆる長者番付)への訪問などで、アパート建築の提案をしたりします。

ハウスメーカーを紹介する場合もありますが、こうした資産家のもとにはすでに複数業者が出入りしているので、そうした業者と連携したりもします。

業者とのパイプを持っている銀行員がローン実績を上げられる仕組みです。

相続対策が必要な資産家ウエルカム

シミュレーションと融資審査~相続対策の場合

融資審査は、収益目的では否定から始まり、相続対策の場合は肯定から始まります。

理由は「相続値策なら儲からなくてもいい」からです。

銀行シミュレーションは、最悪のパターンを想定し儲からないという回答がでる性質になっていますが、相続対策なら儲けは重視しないので問題がありません。
  

相続対策では、審査項目をほとんどクリアーしている

審査項目の、「動機」と「資産背景」についてはすでにクリアーしています。

年齢も、まず問題になることはありません。

仮に担保でマイナス要素があったとしても、資産家ですので、追加の担保があればリカバリーは容易です。

資産家の相続対策といった時点で審査項目はほとんどクリアーしているのです!

で相続対策のアパートローンは銀行が理想としているモノなのです。(執筆者:加藤 隆二)

第1回 年齢:「アパートローン審査」で銀行はここを見る! 【第1回】年齢 ~アパートローンに年齢制限はない?
第2回 動機:「アパートローン審査」で銀行はここを見る!【第2回】 動機 ~ 「不動産投資」はネガティブ 「相続・土地活用対策」はポジティブに判断する。 ← いまここ
第3回 収支:アパートの収支、利回りについて~業者と銀行では考え方が違う!
第4回 資産背景:資産について~銀行が考える資産とは?
第5回 担保、その1:担保評価~アパートと、一般的な担保物件では評価方法が違う
第6回 担保、その2:現地調査~現場では何をどうやって調べるのか?

《加藤 隆二》
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加藤 隆二

執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二 加藤 隆二

バブル期に入社して、以来銀行一筋30年。お金にまつわるさまざまな相談にこたえてきました。時には返せなくなってしまった人からの相談にも、可能な限り親身になって対応してきたつもりです。銀行員として「あなたのために、なにができるか考えます」 最初の挨拶はいつもそう言ってきました。年を重ねた今も、気持ちは変わっていません。銀行員として、読者である「あなたのために」役に立つ文章を書いていきたいと思っています。 寄稿者にメッセージを送る

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