などと言われてしまう、個人のさまざまな行動を基にした社会信用システム。
すべての人が監視されている、少しでも信用ランクを落とすなら日常生活で制限を受け不便になる、という怖いイメージがあるかもしれません。
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目次
すでに浸透している格付け社会
実は中国では、実際にこの信用システムが浸透しています。
例えば、アリババ系列の芝麻信用はアリペイの利用情報を基に各個人が格付けされるのですが、その信用ポイントをアップさせるためにさまざまな消費行動へと促す仕組みができています。
信用ランクが高い人は新規サービスのデポジットが不要になるなど、メリットがあり、ますます浸透しています。
意外に思うかもしれませんが、個人が普通に生活しているなら、信用ランクは一定基準を保てるので、生活に不便を感じることはほとんどありません。
逆に、この信用システムは国民に安心感を与えるものとなっています。
監視が安心感につながる背景
最近見たドラマの中で、中国の現状を特徴づけるシーンがありました。
信頼し、生まれたばかりの赤ちゃんを預けたところ、兄嫁は赤ちゃんをそっと持ち去ってしまいます。
夫である母親の兄が、慌てて連れ戻しに行くと嫁は「この赤ちゃんを売って大金をもらうんだ」と言い張り、夫婦でもみ合いに。
兄嫁は犯行を見られても開き直る態度で、夫である兄は警察に通報もしません。
それを見た出産したばかりの母親は、危険を感じ、赤ちゃんを奪い返し、故郷を捨て、1人で娘を育てました。
ドラマの設定で身内内で行われる人身売買未遂、警察に通報しない…日本では考えにくいシーンが受け入れられていますが、中国では涙を誘っています。
ドラマの1シーンになるほど、実際にこうしたことが起きている社会背景を思うと、本当に驚かされます。
大家さんが借家の泥棒を手引きする
日常的に起きる置き引き
スリや詐欺
シェアサイクルの鍵を壊して、無断利用
上げればキリがありません。
中国の人々は毎日問題に巻き込まれないよう、気を張って生活しているのです。
信用システムがクリーンな社会を作る
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こうした社会背景のため、信用システムは犯罪者の行動を制限・監視し、善良な市民を保護する役目を果たします。
言い換えると、クリーンな社会を作り上げるという一端を担っています。
例えば、信用システムレベルの低い犯罪者は、長距離高速鉄道の購入ができないので、遠方へ移動できず、行動が制限されます。
不動産の購入ができなければ、自分の住むマンションに犯罪者が生活する可能性は低くなるかもしれません。
このようにして、市民に安心感を与えるのです。
「すべての人が監視される格付け社会」と怖いイメージがありますが、こうした独特の社会背景が、中国の社会信用システムの浸透を後押ししています。
昨今、日本での社会信用システムの導入が話題になっていますが、背景も国民のプライバシーに関する感覚も違う日本で同様のシステムを導入・浸透させるとしたら、別のアプローチが必要になることが容易に想像できます。(執筆者:桜井 まき)