近年、仕事のため、学校で学ぶため、多くの外国籍の人が日本で暮らしています。

そして、日本で住民登録をしている20歳以上60歳未満の人は、国民年金の加入義務があります。

日本の年金制度で「老齢年金」を受給するには、保険料納付済み期間と保険料免除期間の合計が10年以上必要です。

日本で2年間だけ働いた人や、大学で4年間学んで帰国した外国籍の人は、保険料を納付しただけで「損」をしてしまうのでしょうか。

年金の加入期間が6か月以上あり、かつ、受給資格期間が10年以上ない(老齢年金を受ける権利がない)場合、「脱退一時金」を請求できます。

これは、外国籍の人のみの特別な制度で、年金の掛け捨て防止の役割を果たします。

その詳細について確認してみましょう。

脱退一時金制度

国民年金保険料の納付済み期間が6か月以上、または、厚生年金の加入期間が6か月以上ある外国籍の人で、年金の受給資格(10年以上の納付済または免除期間)を満たさずに帰国した場合、「脱退一時金」を受給できます。

学生や個人事業主、フリーターなど、厚生年金に加入していない外国籍の人は、国民年金に加入します。

国民年金の脱退一時金の支給額は、国民年金保険料を納付した期間に応じて、図1のようになります。

国民年金の脱退一時金の支給額

≪画像元:日本年金機構 脱退一時金の額の一覧(pdf)≫

支給額は、「最後に保険料を納付した月」によって異なるため注意が必要です。

また、一部免除期間(一部納付済み)がある場合は、免除の種類によって、対象月数にカウントする期間が変わります。

企業で働いたり、自分で会社を経営したりする場合、厚生年金に加入します。

厚生年金の脱退一時金の計算方法は、国民年金に比べると複雑です。厚生年金の加入期間および加入期間中の「平均標準報酬月額」を使い、次の計算式に基づいて計算されます。

支給額=平均標準報酬月額×厚生年金加入期間に応じた支給率(図2)

支給額=平均標準報酬月額×厚生年金加入期間に応じた支給率

≪画像元:日本年金機構 脱退一時金に関するお客様向けQ&A(pdf)≫

この支給率は「厚生年金の資格喪失日が2017年10月以降の場合」のため、それ以前の支給率は異なります

国民年金、厚生年金いずれも「36か月」が支給期間の上限となります。そして、必ずしも納付した保険料が全額戻るわけではありません。

もし、長期間(10年以上)日本にいた場合、日本の年金を受給できる可能性が高いので、一時金でもらうよりも、年金でもらうほうがお得です。

脱退一時金の請求について

脱退一時金の請求をするためには、日本を出国してから2年以内に手続きを行う必要があります。必要書類と添付書類は以下のとおりです。

・ 脱退一時金請求書

・ 年金手帳(または、基礎年金番号を確認できる書類)

・ パスポートの写し(氏名、生年月日、国籍、署名、在留資格の確認ができるページ)

・ パスポートの出国日が確認できるページの写し(住民票の除票でも可)

・ 脱退一時金を振り込む金融機関の確認ができる書類(海外の金融機関でも受給可能)

脱退一時金の受給要件として、「日本国内に住所を有しないこと」があります。

そのため、基本的には、出国後に手続きを行うことになります。

しかし、住所地の市区町村に「転出届」を提出し、そこに記載された転出予定日以降に、前述の必要書類を郵送することで、出国前に手続きを行うことも可能です。

また、元同僚や日本に住む友人を代理人として、脱退一時金の請求を行えます。

その場合、前述の必要書類に「委任状」を追加で添付します。

委任状の様式は自由ですが、日本年金機構のホームページからダウンロードできるので、こちらを使用することをお勧めします。

脱退一時金の注意点

脱退一時金の注意点を知っておこう

脱退一時金は、日本の年金制度に加入していた期間に応じて計算されます。

しかし、「36か月」が上限となります。

脱退一時金を受給すると、それ以前のすべての期間が、年金加入期間ではなくなります

そのため、社会保障協定を締結している国(2020年3月時点で23か国と署名済み、うち20か国が発行済み)の場合、本来ならば、日本での年金加入期間を通算できます(英国、韓国、イタリア、中国を除く)が、脱退一時金を受給することで通算できなくなります。

他にも、詳細確認や注意点があるため、詳しくは、お近くの年金事務所または日本年金機構(本部)へお問合せください。(執筆者:特定社会保険労務士 浦辺 里香)