遺産分割の話で、よくあるケース

遺産分割の前提は「話し合い」です。

難しいのは全員の合意が必要になるからです。

まとまるには、全員の合意が必要です。

事例は、いきなり相続人全員を集めてお話を開始した時のケースです。

【被相続人】 
夫 結婚していますが、子供はいません。夫の両親は先に亡くなっています。

【相続人】  
妻 夫の姉(義姉)

遺産 預金 1,000万円

居住していた土地・建物(土地は、夫の父名義でしたが、相続で夫名義に)

相続人全員

妻の想い

話し合いには、妻と義姉がいらっしゃいましたが、事態は妻の独演会となりました。

「いえね、本当は今日そんなお話しをするつもりはなかったのですが、義姉さんのお顔見ていたら、悔しかった思いがいっぱい出てきてしまいました」と、故人の妻が言います。

「私たち夫婦は、結婚する時に夫の両親から反対されていました。

それでもなんとか、結婚も納得をしてもらい夫の実家で条件であった同居もしました。

夫の実家はそこで商売をしており、その商売も私は協力をしていました。

私が、夫の商売を一生懸命お手伝いしていた時、結婚し外へ出た義姉が、ちょくちょく実家に遊びに来るのだけれど、実家の仕事を手伝うわけでもなく、また、家事を手伝うわけでもなく、正直私は快く思っていませんでした。

決定的な事件は、5年たっても子供ができない私たち夫婦に、夫の母から、「義姉の子が3人もいるから、その内1人を養子にしないか」と言われたことです。

私は、それだけは絶対受け入れられないといいました。

「もし養子をもらうなら全然しらない子にしたい」と思いそれを告げてからは、夫の両親との同居に耐えられず、出て行ったのです。

それ以降、夫の両親、義姉とは絶縁状態です。

そのとき、どれだけ私がつらい思いをしたのか」

と涙を流し、語ります。

「それは大変でしたね。」と筆者も相槌を打ちました。

それでは、「義姉さんのお考えは、いかがですか」とお聞きしましたが、「いえ、何も言うことはありません」ということでその日はお開きになりました。

義姉のおもい

翌日、義姉さんより、電話があり、「昨日の話ですが、あれは、事実でなく直接ご説明したいので、来ていただけませんか」と言われます。

「弟の結婚に、両親が反対していたことは、ありません。親との同居と言っても、弟は離れに住んでいました。

こちらから同居を条件にしたこともありません。

あの方は、会社員の環境で育ち、商売屋さんの感覚にあまり慣れていないようでしたので、実家の商売に慣れてもらおうと、あえて手を出さなかったのは事実です。

私が話しかけても、顔を背けてしまうことがあり、私も実家に行っても、つらい思いでした。

私の子を養子にするとの話は、まったく知りませんでした。

その提案は、両親から出たのかもしれませんが、両親の想いとしては、ごく自然な気持ちだったと思います。

遺産相続の件ですが、預金は主張する気はありません。弟夫婦が築いてきたものと思うからです。

ただ、弟の住んでいる土地は、そもそも実家の土地なのです。

あの方が、生きている間は、住んでいてくださって結構ですが、亡くなれば、私どもに返していただきたいのです

といったお話でした。

土地については、現在は「配偶者の居住権」という制度ができましたので、妻には、「居住権」を与え、義姉は土地を「負担付き所有権」で相続することで、解決できるようになりました

その後、妻が亡くなれば義姉は100%の所有権を得られます

「負担付き所有権」での相続

分割は譲り合い

妻の話と義姉の話のどちらかが事実なのかを判定しては、いけないと思いました。

それは、大変非礼であり、それぞれ相手の立場からみれば、どちらも真実だと思うのです。

もめたら法定割合になる原則を、初めに伝える

お互い、譲り合わなければ、分割はまとまらない。

大切なのは、双方の話を、個別に、じっくりお聞きした上で、落としどころを考える事だと思います。(執筆者:1級FP、相続一筋20年 橋本 玄也)