近年、台風による家屋や財産への被害が毎年のように発生しています。

自然災害によって財産に損害を受けた人に対しては、損害による担税力(税金を払う力)の減殺を考慮して「雑損控除」という所得税法の規定が用意されています。

今回は、この「雑損控除」について解説していきます。

【確定申告】災害や盗難で資産に損害を受けたら「雑損控除」でカバー

制度の趣旨

雑損控除の規定は、自然災害や盗難などによって資産に損害を受けた人を救済するためにあります。

たとえば、台風で通勤用の自動車が浸水によって廃車になったという人が新たに通勤用の自動車を購入する場合には、台風という

自らの力では避けられない事象によって生じた追加的な支出による痛みを「税金の一部減額」という形で緩和する

ことが、雑損控除の規定の趣旨です。

雑損控除の効果

給与所得が500万円で雑損控除以外の所得控除額が100万円のA氏が、台風で時価200万円の通勤用自動車を失ったケースを考えてみます。

このケースでは、雑損控除の規定の適用を受けると、受けなかった場合に比べてA氏の所得税額は約60%減る計算です。

なお、損失の額がその年に控除しきれないときには、翌年以降3年間繰り越せます

雑損控除の適用対象となる資産

雑損控除は、次の者の有する資産が適用対象です。

(1) 雑損控除の規定の適用を受ける者本人

(2) 上記の者と生計を一にする親族で、課税所得金額が基礎控除額以下である者

(2) について、1つ目の要件の「生計を一にする親族」の「親族」とは民法上の親族を言い、同居をしていなくても生活費の送金が行われている者は「生活を一にする」の要件を充足します

また、2つ目の要件の「課税所得金額が基礎控除額以下である者」とは、具体的には課税所得金額が48万円以下である者のことを言います。

事例

たとえば、鳥取県に住む父親B氏から生活費の仕送りを受けている子C氏(東京都在住、収入はアルバイトによる給与所得のみ)が

自らの有するカメラを盗まれた場合、C氏の年間の給与収入額が103万円以下であれば、そのカメラの盗難による損失は父親であるB氏の所得税の計算において考慮されます。

雑損控除の適用対象となる資産については、事業用の資産以外の資産であれば一般的に雑損控除の対象ですが、時価が30万円を超える宝石、書画、骨董、美術工芸品は対象とはならないのでご注意ください。

これらの高級品は生活に通常必要な資産とは言えないので、そういったものの損失によってはその者の担税力が減殺されることはない、という趣旨かと思われます。

カメラを盗まれた

雑損控除の適用対象となる損失事由

雑損控除の適用対象は、災害、盗難、横領による損害です。

詐欺による損害は適用対象とはならないのでご注意ください。

詐欺が対象にならないのは、詐欺は「自らの力では避けられない損害」とは言えないためだと思われます。

保険金を受け取った場合

災害等によって受け取る保険金は原則として非課税ですが、その保険金の額は雑損控除における損失の計算において控除する必要があります

たとえば、

倒壊した家屋の時価が1,000万円、家屋が倒壊したことにより受け取った保険金が800万円だった場合、残りの200万円が雑損控除における損失の額

です。

雑損控除を受けるための手続き

雑損控除の規定の適用を受けるためには、確定申告をする必要があります。

損失の額を翌年以降に繰り越す場合も同じく確定申告をする必要がある点にご留意ください。

災害減免法との関係

災害によって受けた住宅や家財の損害金額(保険金などにより補填される金額を除きます)がその時価の1/2以上である場合において、その者の所得金額が1,000万円以下であるときには、

・ 雑損控除の規定

・ 災害減免法による税額控除の規定

いずれかを選択適用できます

所得金額が500万円以下であればその年の所得税額が全額減免されますが、雑損控除のように控除しきれなかった金額を翌年以降に繰り越すことはできないので、災害で住宅や家財が大きな損害を受けた場合には、どちらの規定の適用が有利かを税理士に相談することをおすすめします。

雑損控除で損害を一定程度カバーできる

雑損控除の規定をうまく活用できれば、災害等による財産の損害を一定程度カバーできます。

災害等に遭遇しないに越したことはありませんが、もしも遭遇してしまった場合には雑損控除の適用を検討してみてください。(執筆者:安藤 正三)