父親から相続した土地は、兄弟3人で3分の1ずつ共有。

「なんでこんな形で残したの?」

「土地はケーキみたいに、ナイフで切れるわけがないでしょ!」

銀行員として私が実際に対応した相続でのお話しで、このあとかなり紛糾します。

今回は、相続で土地を次世代に残すときに注意したい「共有」について解説します。

「共有」とは、不動産など一つの「モノ」を2人以上が共同で保有することです。

相続した土地が兄弟で共有になると、さまざま問題が発生する可能性があります。

共有で相続した土地を どうするか?

共有の土地を売る方法

今回は、以下のケースをもとに解説していきます。

・ Aさん(40歳・男性)は3人兄弟の長男(自分、妹、弟)

・ 父が死亡し、財産の中に貸駐車場があった

・ 話し合いの結果、駐車場は3分の1ずつ兄弟で共有することになった

・ その後、駐車料金の取り分や、管理の問題など争うことが多くなった

・ Aさんとしては、面倒なので売りたいと考えている

・ 妹も同様に売却を希望している

・ 弟は定期的な収入源として持ちつづけたいと言っている

・ 兄弟間で意見がぶつかり、解決しないまま今も共有のままになっている

Aさんは、兄弟間で争いのタネになっているこの土地を早く手放したいのですが、話し合いが進まない状態でした。

不動産の「共有」とは

「共有」とは不動産など一つの「モノ」を2人以上が共同で保有すること(前出)です。

共有に対し、1人で持つことは「単有(単独所有)」「専有」などと呼ばれます。

また共有に似た言葉で「総有」もあります。

こちらは、たとえば工業団地などで協同組合が土地を所有し、組合員になっている各工場が「全員一致で土地を保有し(総有)、みんなで利用」する形態です。

土地を兄弟が共同して持つと、みんなで持ってみんなで使うのは難しい場合があります。

一つの土地を各自が所有権を保持して共同所有するのが「共有」です。

そして、各自が保持する所有権のことを「持ち分(共有持ち分)」と呼びます。

共有する人(共有者)の人数で3分の1、60分の7など、共有者が増えるほど数は多く、複雑になっていきます。

例)分譲地の中にある道路部分を、各土地の所有者が共有するなど

また分譲マンションの土地も「5万3,251分の26」など大きなものになりますが、マンションの場合は「区分所有」「敷地権」という形態が多く、共有とは異なります。

区分所有は次項で説明します。

またマンションでも土地建物を共有するケースはあります。

共有と区分所有

共有と似た所有の形に「区分所有」があります。

共有は1つの土地を2人以上で共同所有するもので、いっぽうの区分所有はマンションなど建物を複数の人が自分の権利だけ所有する所有形態です。

たとえばタワーマンションなど分譲マンションでは、20階に住んでいれば自分の部屋は土地に接していません。

とはいえ土地の権利はちゃんと所有しており、これが敷地権です。

また部屋は独立した入口、居室など人が住むための設備があり、こうした独立した部分を専有部分といい、共同所有でも、それぞれが自由に不動産を処分できるのが区分所有です。

したがって区分所有なら、自分が売却するときも自分だけで処理が可能です。

共有の不動産を処分する方法

区分所有と共有でもっとも違うのが「共有している不動産は、自分だけでは処分できない」という点です。

たとえば今回のように3人で共有しているなら所有者、つまり持ち主(権利者、当事者)が3人いるわけで、この3人がそろわなければ処分することができないのです。

この点について、ここから「共有する不動産を処分する方法」を紹介する中で、掘り下げていきます。

1. 売却

繰り返しになりますが、共有の場合、売却は全員が合意しないとできません

売ることには全員合意でも、金額で納得しない人が出てきたり、誰かが病気などで行為能力に問題が発生したりと、時がたてばたつほど共有不動産の売却は難しくなっていくものです。

今回のケースでも、今は兄弟全員がそろって元気ですが、万一誰かが死亡した場合、今度は争う相手がその子供にまで広がり、問題は複雑になるばかりだと予想されます。

2. 代償分割

特に不動産の遺産相続でよく用いられる方法です。

紹介したケースでは兄弟が話し合って共有したのですが、駐車場を持ち続けたい弟が、他の兄弟に対し「見返り」を差し出す代わりに自分一人のものにするのが代償分割です。

相続の手続きで、名義を弟ひとりとし、Aさんと妹には共有した場合に相当する現金を渡すのが一般的です。

土地の代わり(代償)に受け取る金額などは、税理士などプロに相談して税金が発生しないように(もらうべき土地の価値より大きなお金を受け取ると課税される可能性があるため)することが重要です。

3. 持分の売却

紹介したケースで「Aさんと妹が自分の持ち分だけ売却する」というものです。

Aさんと妹の持分だけを他人が手に入れるのは、現実的ではないと思われます。

赤の他人と共有になってしまう土地など普通なら欲しくはないはずです。

最近ではこのケースのように、揉めているために処分できない土地の共有持ち分だけ買い取る不動産会社もあるのです。

相続を「争族」にしない方法

不動産を相続で残す場合など、共有は避けたほうがいいと感じたと思います。

こうした遺産にまつわるトラブルを俗に「争族」(アラソウゾクと読みます)と呼びます。

子供時代には仲良く過ごしてきた兄弟でも、それぞれが結婚して家族もできると、事情は変わって来るものです。

そのこと自体はしょうがないと考えています。

家庭を持てば妻も子も意見をもつなど、それぞれの事情やお金に関わる要望も出てきます。

「誰でもお金は欲しい、でも損はしたくない」から揉めます。

相続を「争族」にしない方法を、銀行員としての経験から提案します。

1. 争いの「タネを蒔かない」

今回のケースでも、もしかしたら死亡したお父さんが

「先祖代々の大事な土地だから、兄弟3人たすけあいながら守って欲しい」

と、あえて共有で残したのかも知れません。

しかしながら、結果として父の思いはかえって争いのタネになってしまいました。

2. 話し合うことが必要

相続した土地が共有で揉めた場合には、とにかく話し合うことが必要です。

すべてが話し合いで解決する者ではありませんが、顔を合わせて語り合うことで解決策に近づけるかも知れないからです。
話し合いがなかなかできなくても、「話し合おう」と意思表示することは大事です。

結果として絶縁状態になったとしても、話し合いたいとあなたは意思表示をしたので、あとになって兄弟から「勝手にこんな方法をとりやがって」などと言われることは防げます。

みんながそろうときにイヤな話をする

親が死んだときのことや、財産に関する話など、だれでも喜んで話したい人はいません。

でも、いえだからこそみんなが元気なうちに話し合うべきですし、みんながそろう時がベストタイミングなのです。

なんの脈絡もなく親や兄弟を集めて話そうとするほうが「何の狙いがあるんだ?」と勘繰られてうまく進まないと思います。

「みんながそろうときこそイヤな話もしておきましょう」

これは、相続が心配だと言うお客様に、銀行員として伝えているアドバイスです。執筆者:銀行員一筋30年 加藤 隆二)