平成25年3月26日の朝鮮総連本部の競落(売却金額45億1900万円)や中小企業金融円滑化法(通称モラトリアム法)終了に伴う競売件数の増加予測等で最近注目を浴びている競売不動産。近年の不動産投資ブームもあり、競売不動産の取得を検討される一般消費者の方も多くなってきました。
平成15年の民事執行法の改正による短期賃貸借の廃止により競売不動産も一般消費者にとって取得しやすい環境になってきたものの、まだまだ「競売物件はいわく付では?」「トラブルに巻き込まれるのでは?」「立ち退きは大丈夫なのか?」「ローンは利用できるのか?」「いくら位で落札できるの?」等の不安や疑問を多くの方がもたれていらっしゃることと思います。
不動産投資やマイホーム購入を検討されている方にとって、競売不動産は一般流通物件より安く取得できる市場でもありますので、競売初心者の方を対象に競売不動産取得のポイントを具体的事例を交えてご説明してまいります。
※昨日平成25年4月16日、東京地方裁判所本庁にて今年度最初の競売物件の閲覧が開始となりました。ご興味のある方は、不動産競売情報(http://bit.sikkou.jp/)をご覧ください。
目次
競売不動産取得までの流れ
まずは、大まかな競売不動産取得までの流れを見ていきます。簡単に整理すると下記のような流れになります。
入札物件の選定・・・(1)
資金計画の確認・・・(2)
↓
物件調査・・・(3)
↓
入札価格の検討・・・(4)
↓
入札保証金の振込
↓
入 札
↓
開 札(落札)
↓
売却許可決定
↓
明け渡し交渉・・・(5)
↓
代金納付・・・(6)
所有権移転手続
↓
明け渡し(引渡命令・強制執行)・・・(7)※代金納付期限は特別な理由がない限り、売却許可決定確定日より1ヵ月以内となります。
(1)入札物件の選定
一般に競売物件は通常の不動産取引と違い下記のような特徴があります。
・建物内部を確認するのが難しい(債権者の申し立てによる内覧を除く。)
・スムーズな物件の引渡しが保証されていない。
・鍵の受け渡し等について、裁判所が関与・仲介するわけではない。
・売却代金を早期に納付しなければならない。
・買い受けた物件に何らかの欠陥があっても、売却の取り消しや損害賠償ができないケースが多い。
上記のような特徴のある競売不動産の中でも、入札物件の選定規準は入札者の希望条件によってそれぞれ違ってはきますが、どんな競売不動産も「明け渡し」をスムーズに行うことが出来るのか、またどのよう形で受けられるのかは最大のポイントです。
事件番号を確認しよう
その「明け渡し」に着眼して物件選定する為に、まずは事件番号で物件を選択してみましょう。
※事件番号とは?
競売不動産の情報(3点セット)は不動産競売情報(bit.sikkou.jp/)にて入手できます。この3点セット(物件明細書・現況調査報告書・評価書)に競売不動産の概要が記載されていますが、ページ右上に記載されている「平成○○年(ケ)第○○○号」等が事件番号です。
●担保不動産競売事件
不動産に設定された担保権(主に抵当権)を実行するための手続きで事件番号の符号(ケ)と表示されます。
●強制競売事件
判決や裁判所での和解または調停で決まった内容を実現したり、公証人が作成した公正証書の内容を実現するための手続きで事件番号が(ヌ)と表示されます。
どちらの競売手続きも債務者が債務を返済することができなくなったため、不動産を民事執行法の規定により売却して、それで得た代金を債権者に配当して債務の返済に充てる強制手続であり、不動産の所有者の意思に沿うそのものではない点が通常取引における売買と大きく異なるところです。
競売不動産の多くは担保不動産競売(ケ)の物件です。強制競売(ヌ)の物件は、個々の事情により大きく状況が変わる物件も多い為(事件の内容によっては落札後さらに揉めたり、また落札した不動産を使用できなかったりすること等)、明け渡しに着眼するならば(ヌ)物件は(ケ)物件よりも注意を要するとも言えます。
はじめて入札をご検討される方は、事件番号が(ケ)の物件を選定されるほうがよいでしょう。
また前述の3点セットの現況調査報告書には、物件についての権利関係や占有状況、賃借人や所有者の陳述等が記載されています。明け渡し交渉・手続きを進めていく上での重要な判断資料ですので、内容をよく確認してください。(現況調査報告書から判断できる明け渡しの状況は、事件の状況によって違ってきますので、競売不動産を取り扱っている不動産会社や競売不動産取扱主任者などの専門業者・専門家にお尋ねください。)
注:現況調査報告書に記載されている状況は閲覧開始前の約半年くらいの状況であることが多く、入札時の状況と違うこともしばしばあります。競売不動産は内覧はできませんが、入札前にはできうる限りの現地調査を行い、現在の状況を確認する必要があります。
次回は資金計画からみた入札物件の選定を具体的事例に基づいてお伝えします