ライフネット生命岩瀬氏の著書を読んで
ライフネット生命の副社長岩瀬大輔氏が、前著「生命保険のカラクリ」に続いて、衝撃的な本を著した、ズバリ「がん保険のカラクリ」。
同業他社(結果的にはそうなる)の問題点を書いたり、批判したりすることは、簡単そうで実はそうではない。ややもすると傲慢、自慢に映るし、我田引水すれば「見え見え」の自社宣伝本になってしまう。
本書は(もちろん前書も)そうはなっていない。
日本の保険制度について、信頼できる機関のデータを引用、問題点を浮き彫りにし、その上で保険会社の問題点、ご自身が考える解決策を提示している。自社の宣伝も、ほとんどないところが、鼻につかず、面白く読める要因だろう。
本書は「がん保険のカラクリ」ではなく、著者が序章で書いているとおり、実は「民間医療保険のカラクリ」である。その証拠にがん保険に関する章は1章しかない。私はむしろ、よい意味で「続・生命保険のカラクリ」だと感じる。ぜひご一読をお薦めします。
老後の生命保険はいらない!?
今回取り上げて深堀りしたいのは、私の専門分野である「シニアライフ」に関連する、第3章「老後の生命保険」。著者のお父上が定年され、銀行から退職金を使った一時払いの終身保険の加入を勧められるところから、章は始まっていく。
結論から書くと、
『筆者(岩瀬氏)は、現役から退いた高齢者には原則として生命保険は必要ない、と考えている。あえて単純化していうならば、長年加入してきた保険がある場合には解約して、その資金を生活費に充当すべきた。』
あ~あ書いちゃった(笑)。保険会社の副社長がそこまで書くと爽快ですらある。もちろん褒め言葉。
定年しても子供が大学生などの事情がない限り、私も大賛成!60歳過ぎて保険に入る(まして生命保険に)ことはない。その分貯蓄に回すことをお薦めする。
また医療保険も、国の高額療養費制度などを活用することも考えてから検討すべき(差額ベッド代などは使えない)あくまで貯蓄の「補完制度」として考えるだろう。
また先進医療(陽子線治療や重粒子線治療)についても、1章で(実は治療できる病院は全国に合わせて10カ所しかない!)具体的な例を挙げて痛快に説明している。定年時は退職金などで、大金が入る。金融機関は手ぐすね引いて、おいでおいでをして待っている(笑)。
人生は長い、その中で退職金は最後に入る大金だ。保険についても金融機関の説明を鵜呑みにせず、「自分にとって必要な保険か否か」を真剣に考えてみる必要があるだろう。
参考文献:がん保険のカラクリ 岩瀬大輔(文春新書)
生命保険のカラクリ 岩瀬大輔(文春新書)